契約その49 財亜グループのsecret!
財亜グループの屋敷から帰ってきたユニとどれみは、みんなが集まれる夕食時に事の次第を話した。
「そんな言い分が通るのか?」
アキが言った。
「そんなわけないだろ。『自分は父親の言う事を聞いただけだから悪くない』なんてフザけた言い分が通るわけあるか。ムチャクチャだ」
おかずのコロッケを頬張りながらユニが言う。その手つきはやはり苛立っている様だった。
「メイはどうしてるの?」
由理が聞いた。
「ずっと自分の部屋に篭ってる。でも配信自体はやっているらしい」
いくら今の自分が辛くても、今いるファンを大事にする。それがメイの答えである。
しかしそれは、配信活動を通して自分の鬱憤を晴らしている様な雰囲気を持っていた。
「一体何をどうするのが正解なんだろうね?」
七海が言った。かつて自分も似た様な目に遭った七海は、今のメイの状況を心配している様だ。
「……直接本人に聞いてみるしかないな」
ユニが立ち上がる。
「じゃあ、夕飯を持って行ってあげて」
由理はきちんとラップをした夕飯をお盆に乗せ、ユニに託した。
「わかった」
ユニはそのお盆を抱えると、メイの部屋へと向かうのだった。
メイの部屋には防音機能がついている。騒音被害を防ぐ為に、紫音が事前につけてくれたものである。
しかし、中からの音が聞こえないという事は、当然外からの声も聞こえないという事だ。
なので紫音はメイの部屋に専用のインターホンを部屋に取りつけたのである。
用がある時はそれを押して用件を伝える事になっている。
そういうわけで、ユニはメイの部屋のインターホンを押す。
ピンポーン♪という音が鳴った。音自体は普通のインターホンと変わらない。
しばらく待っていると、メイが応答に出た。
「……何か用?」
「今日の夕飯を持ってきた。できればドアを開けて欲しい」
ユニが答える。
「ありがとう。……後で食べるから、そこに置いておいて」
メイが言った。
「わかった」
ユニは夕飯を床に置くと、再びメイに話しかけた。
「……確証はないけど、財亜グループには賄賂、暗殺、麻薬売買、大小様々な黒い噂があるという話を聞いた事がある。巨大企業だからな。一枚岩ではいかない。それを聞いた上でキミはどうしたい?」
「キミの『仕返し』はまだ終わってはいない」ユニは言外にそう匂わせた。
夕飯を届け終わったユニは、リビングへと戻っていった。
「ぼくは……」
一人になったメイは、何かを決意した様であった。
メイに夕飯を届け、ユニはリビングに帰ってきた。
「お帰り。どうだった?」
七海が聞く。
「夕飯を届けに行っただけだよ。部屋には入れてくれなかった」
「そう……」
七海は少しシュンとした様子だった。
「……財亜グループについてはもっと色々調べてみる必要がありそうだな。さすが大企業、おれでも噂程度しか掴めなかった」
ユニは、机に置いてあるデザート代わりのスイカを食べながら言った。
「調べてどうする気?」
由理の疑問に、ユニはこう答える。
「財亜グループに『仕返し』をする」
「!!?」
ユニの発言に、彼女達は大いにざわついた。
「もっとも、彼女の選択次第にはなるけど」
そんな中、メイがリビングにやって来た。食べ終えた食器が乗ったお盆を待っている。
「ユニ、そしてみんな。ごめん、ぼく決めたよ。あいつが『父親が悪い』って言うのなら、その父親に責任を問いたい。あいつに……仕返しがしたいんだ!」
メイの答えに、ユニ達は笑顔を見せる。
そんな中、どれみは反論する。
「でも!財亜グループは火殿グループと双璧をなす大企業!あなたの『仕返し』がどの程度のものになるかはわかりませんが、最悪の場合……」
後の言葉は飲み込んだ。
「……関係ありませんね。後の事は、この火殿どれみにお任せ下さいませ!」
どれみがそう言ってくれると、どこまでも頼もしかった。
「よし、じゃあまずは具体的な『ゴール』を決めよう。メイはどうしたい?」
ユニが聞く。
「……心からの、ちゃんとした謝罪が聞きたい」
メイはしっかりとした言葉遣いで言った。
「じゃあ財亜グループの崩壊までは望んでいないのか」
ユニが聞く。
「うん。だって財亜グループで働いている人にもそれぞれの生活があるわけでしょ?それを奪う事なんてできない」
メイの言葉に、ユニは大きく頷きながらこう言う。
「わかった。それで決まりだな。おれ達の目的は、財亜グループからの『心からの謝罪』!その為には色々情報を集めなくちゃならない」
その時、紫音が手を挙げた。
「ではわしが担当しよう。IIOのジジイ共が協力してくれる。みんなわしの事を実の孫みたいに思っとるからな。頼めば色々調べてくれるじゃろう」
「よし」
色々決まってきて、ユニも会心の笑みを浮かべた。
「そういえばさ、ルーシーどこに行ったの?」
「ルーシー?」
ルアが聞いた。そういえばさっきから姿が見えていない。
「確かに妙だな……」
ユニはそう呟いた。
そんな瀬楠家に、ある集団が近づいているのだった。
一方ルーシーは、瀬楠家の近くにある河川敷である人、いや悪魔と会っていた。
「こんな所に呼び出して、一体何の用?『ルシファー』」
「久しぶりだな。『アモン』」
「アモン」と呼ばれた悪魔は、スーツ姿に黒髪のロングヘアを後ろで結び、メガネをかけた美女だった。
「財亜グループの社長夫人に収まって、一体何を企んでいるんだ?」
その質問に、「アモン」は笑いながら言った。
「愚問ね。理由なんてある?楽しみだからよ。あの人が破滅する姿が」
「そんな事の為に現在の社長を担ぎ上げたのか」
ルーシーはにこりともしないで言った。
「それは世界を丸ごと変えたあなたにも言える事じゃなくて?」
「今は違う!」
「アモン」の言い分に、ルーシーは毅然と言い返した。
「おれは、大切な人を傷つける者を許さない!」
「それでも過去は変えられないわよ。あなたも多くの人間の人生を狂わせている」
ルーシーは、「アモン」から顔を背けつつこう言う。
「……確かにそうだ。だから今は人間の為に生きている。大切な人が悲しむから」
ルーシーの意外な言葉に、「アモン」は少し目を丸くして驚いた様だった。
「あらそう?あなたが何しようと勝手だけど、私の邪魔したら、ただじゃおかないわよ?」
ルーシーは、そんな「アモン」に背を向けてこう言い放った。
「ああ、望む所だ……」
財亜グループの秘密。
それは、当代の社長が悪魔と契約し、その悪魔を社長夫人としている事であった。
悪魔との契約条項 第四十九条
どんな悪魔も、大小問わず多くの人間の人生を狂わせている。
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