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契約その297 AIは止められない!

 ユニ達は、ついに姿を現した財亜百と相対していた。


 両サイド共に動こうとはせず、間には緊張感が漂っていた。


(ネオハーレムフォームさえ使えれば……)


 ユニは、ベンチに横たわるエリーを横目で見ながら内心焦っていた。


 速い話が財亜百の作戦勝ちだった。


 確かにネオハーレムフォームさえ使えれば勝てるかも知れない。


 だが使用にはユニ達()()の心を合わせなければならないのである。エリーが動けず、意思疎通も取れない今では不可能だった。


「紫音!エリー復活までどれぐらいかかる!?」


 ユニは、視線だけは敵を見据えながら紫音に確認を取る。


「さっきはこの状態にするのに5分かかったが……いや、3分で終わらせる!」


 紫音はそう言うと、再びパソコンへ向かった。


「わかった。3分時間を稼ごう。ルーシー、アザエル」


 ユニは、3人と心を合わせて「オーベルフォーム」へと変身を果たした。


「これなら行ける!」


()()()、こっちが黙って見ているだけだとでも?」


 それが心底癪に触ったのか、イライラしながら財亜百は、黒いモザイクの様な物体を丸く固めた弾丸の様にして撃ち出す。


 狙いはユニ達()()の様だ。


「させるかよ!"聖なる(セント)防御壁(バリリエラ)"!」


 アザエルの力による光のバリアで、それをどうにか防ぐ。


 それならばと、財亜百は連続で弾丸を撃ち出した。


「何度やったって同じだ!」


 アザエルは、それらをとびきり大きなバリアで防いだ。


「今度はこっちだ!攻撃は最大の防御って言うからな!」


 ルーシーが体を操り、超高速の低空飛行で財亜百にタックルをかます。


 音速を超えている為、発生したソニックブームの影響で周囲のガラスは音を立てて次々と割れた。


「このまま3分じゃ届かない場所まで送ってやる!」


 しかし突然、財亜百の姿が音もせずに消える。


「何だ突然!どこに消えた!」


「きっと電脳世界だ。今ここは現実世界と電脳世界がごっちゃになってるから、自在に消えたり現れたりできるんだ!だからつまり、みんなの身が危ない!」


 ユニ達は、慌ててみんなの元へとんぼ返りするのだった。


「うわー!来ましたよー!」


 ちょうどその時、みすかの驚きの声が響き渡る。


「2、3人殺したら、彼らはどんな反応をするのかしら?」


「おいお前!」


 みすかを手にかけようとした財亜百に対して、声をかけたのはメイだった。


 メイは、財亜百に強く訴えかける。


「そんな事したら、また()()()()逆戻りだぞ……!」


「!」


 それを聞いた財亜百は、一瞬力が鈍った。


 そんな彼女を羽交締めにする存在が一つ。戻ってきたユニ達だった。


「やっぱり常識じゃ測れないな、悪魔の力っていうのは……!何度振り切ったって、何度でもこうやって追いついてやる!」


 そんな中、パソコンのエンターキーの音が高らかに響く。


「よし!元の様に再起動じゃ!」


 エリーは、目をゆっくり開けると、勢いよくガバッと上体を起こす。


「皆さん!」


 辺りを見渡し、エリーは状況を瞬時に理解する。


「よし、エリー復活だ!早速行くぞ、ネオハーレムフォームだ!」


 ユニの号令に合わせ、ユニ達は全員の心を一つに合わせる。ネオハーレムフォームの復活である。


 変身を果たしたユニが、地面に降り立った。


「まずは攻撃で弱らすんだ!悪魔の力を剥がせる!」


 ユニの体の中でルーシーが叫ぶ。


「残ったAPESはわたくしが吸収します」


 エリーがそれに続く。やる事は明確だった。


「それならまずは……アゲハ!」


「おしゃれなベルトをたくさん出すよ!」


 ユニが床に手をかざすと、巨大なベルトが何本も床から伸びてくる。まるで地面から這い出る蛇の様だ。


 ベルトが財亜百の両手足に巻きつき拘束する。


 財亜百は、それを先程の瞬間移動で脱出する。


「まあそう来るよな……だから、七海!」


「わかった!そっちが瞬間移動なら、こっちは高速移動だ!」


 七海のスプリンターの力で、財亜百の死角に高速移動する。


「今度は……紫音!アキ!」


「わしらに任せろ!」


「財亜百……!お前は私達の……獲物だ!」


 紫音の力で発明品「電化の宝刀」を召喚し、アキの力で斬りかかる。


「"私達の超必殺技……ネオハーレムバージョン!"」


 アキの力で、袈裟斬りからのすれ違いざまの横切りを食らい、財亜百は吹っ飛ばされる。


「やはり聞いていた通り……その力は未知数……」


 大ダメージを受け、ついに膝をつく財亜百。


 そんな彼女の言葉を、ユニ達はこう否定する。


「未知数じゃない……『無限』だ!」


 そしてユニは、自分の体の中の二人に声をかける。


「エリー、メイ、君達がケリをつけるんだ!」


 ユニは手をかざし、二人を召喚する。


 メイの右腕には、強力な電撃を放つ電撃銃「スタンガン」が握られていた。


 その銃をメイは財亜百に向け、語りかける。


「概ね『悪魔殺し』、あいつに唆されたんだろう。お前はまだやり直せる。平和っていうのは、誰か一人の力で成し遂げられる程簡単じゃないんだ!だからぼくは……力尽くでもお前を救う!」


 決意したメイの電撃銃から発射された電撃は、財亜百の胴体のど真ん中を貫いた。


「ああっ……!」


 遂に膝をつき、その場にうつ伏せに倒れる財亜百。


 その体から、黒いモザイクの様な、あるいはもやの様な何かがまるで魂の様に抜け出した。


 その姿は、まるで人魂の様だった。


「あれが『APES』の力の残滓じゃ!」


 ユニの体の中で紫音が叫ぶ。


「APES」は、再び電脳世界に戻ろうとして辺りを彷徨う。


 現実世界と電脳世界のカオス状態になっているこの状況なら、電脳世界へ戻っていってしまうだろう。


「させません……」


 エリーがそれを一目散に追いかけ、「APES」を両手で捕らえる。


「もっと早く、こうするべきだった……」


 エリーはそう呟くと、捕らえた「APES」をそのまま自分の口へ持っていく。


「え?いやまさか……」


 動揺するユニ達だったが、次の瞬間には、エリーは似合わない大口を開けて「APES」を丸ごと口に詰め込み、飲み込んだ。


 こっくん……と喉が動くと同時に、エリーはふらっとその場にしゃがみ込む。


「エリー……」


 心配するユニ達をよそに、エリーの体内ではデータ追加によるアップデートが行われていた。


 エリーが突然目の前を向いたかと思うと、体内からシステムアナウンスが聞こえてくる。


「―――『APES』データを確認」


「これまで得た『愛』を参考に、『APES』データの書き換えを実行」


「『APES』モード 稼働開始を確認 システムに異常なし OSアップデート 問題なし 本体を再起動します」


 しばらくその体勢のまま止まっていたが、数分で復帰した。


「……ふう。ようやく終わりました。これで『APES』はわたくしのシステムの一部になりました」


 そしてエリーは、みんなの方へ向き直ってこう言うのだった。


「これがわたくし達の目的です。皆さん」


悪魔との契約条項 第二百九十七条

愛こそが、平和を成し遂げられる。

読んで下さりありがとうございます。

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