契約その296 探知合戦!protectを突破せよ!
ユニ、エリー、どれみ、メイの4人は、パニック状態に陥った喫茶店から、ちゃんと代金を支払った上で出た。
「これは……あの時と同じ現象ですわね……」
周囲の状況を見渡しながら、どれみが呟く。
どれみの脳裏に蘇るのは、「APES」との戦いの記憶だった。
あの時は、電脳世界に存在する「APES」を、ユニが直接破壊する事で事態を解決したが、今回はそうはいかない。
「そもそも『APES』はすでに破壊されてる。仮に力の残滓が残っていたとして、ここまでの状況を起こす程の力はないはずだ」
少なくとも、パニックはショッピングモール全域に及んでいた。あの時すら超える規模である。
「携帯も使えない……メッセージ機能もダメだ」
自分のスマホを見ながら、メイはため息をつく。スマホは砂嵐状態になっており、そもそも画面が映らない様だ。
どれみももはや数少ない公衆電話を確認するが、こちらは多くの人でごった返していて使えなかった。
ユニ達は、完全に連絡手段を失ってしまった。
そんな危機的な状況下において、エリーは直立状態で目をつぶっていた。
その様子が気になったメイが、エリーに聞く。
「ん?エリー何をしてるんだ?」
「電脳世界を介して、この現象の『発生源』を探り、あわよくばそれの破壊を目指しています。わたくしと『APES』は兄妹の様なものですから」
エリーは抑揚のない話し方で答える。探知に自身の大半のスペックを割いている様だ。
「じゃあそれが終わったら、みんなのスマホの『探知』もできる?全員の居場所がわかるかも」
ユニの提言に、エリーはやってみますと答えるのであった。
ベンチに座っていた財亜百もまた、自分の居場所を探ってくる存在に気づいていた。
(この対応の早さ……少なくともこのモール内にいる事は確実ですわね……ならばプロテクトを何重にもして……)
財亜百の妨害工作に、エリーもまた苦戦を強いられていた。
「う……ぐう……特に警備が厳重な所がありますね……今のわたくしのスペックでは、とても突破する事は……」
大量のデータがエリーの脳内に流れ込んだ為か、エリーは立ちくらみの様な現象を起こす。
「おっとっと危ない……」
ユニ達は、慌ててエリーを近くのベンチに座らせる。奇しくも財亜百と同じ体勢になった。
「並行して皆さんのスマホの『探知』も行いました。ユニさんのスマホは映る様にできたので、画面のマップのアイコンの場所に行って下さい。皆さんがいらっしゃると思います」
終わってからでよかったのに……とユニは思ったが、エリーの頑張りを無駄にする事はできない。
「わかった。紫音を呼んでくるから、エリーはここで待っていてくれ。あとこれを……」
ユニは、自分のショルダーバッグからペットボトルを取り出してエリーに手渡す。キャップとストローが一体化しているものだ。
「いざって時に紫音に持たされてた特製の冷却水だ。これも飲んで、体を休ませてね」
ユニはそう言い残すと、どれみとメイと一緒にみんなを探しに走って行った。
それを見送ったエリーは、服のポケットからヘアゴムを取り出して高い位置でポニーテールにした。
少しでも体を冷やす為の工夫である。
そして冷却水を一気飲みする。エリーは呼吸はしていないので、比較的簡単に一気飲みが可能なのだ。
冷却水を全て飲んだ上で、エリーはベンチに横になる。冷却水を体全体に行き渡らせる為である。
横になったエリーは、なぜ自分がみんなの為にここまでやるのかを考えていた。
(わたくしの存在理由は、世界を平和にする事……でも今は、紛れもなく自分の意思でユニさん達の役に立ちたいと思っている……それは果たして本当に……」
程なくして、ユニ達が紫音とルーシーを連れて戻ってきた。
「とりあえず今は、言語能力を含めたシステムを一旦止めて、『APES』の探知能力にスペックを割こう」
紫音は自身のパソコンを取り出し、エリーの操作を始める。
「よし、おれ達は残りのみんなを探しに行こう。何が起こるかわからないから」
ユニ達が全員を呼びに行っている間、紫音は作業を続けながら、うわ言の様にこう呟く。
「元々最強AIを創る事はわしの夢じゃった……だがそれで多くの人を巻き込んでしまって……わしらは早すぎたのかも知れんなァ……」
そんな紫音の腕を、エリーは優しく、ゆっくりと握る。まるで慰める様だった。
(すでに探知能力以外のシステムは止めてるはずじゃが……。いや……つまりそういう事か……)
エリーがすでに自分で考え動く「シンギュラリティ」に達している事を思い出した紫音は、最終調整に本腰を入れるのであった。
ユニ達が全員を連れてきた時には、すでにその最終調整も終わっていた。
「完璧じゃ!5分で終わる簡単なものじゃったな」
紫音は戻ってきたユニ達にサムズアップで応えた。
「じゃあ早速……」
紫音がパソコンのエンターキーを勢いよく押す。この騒動の大元の探知が開始された。
「さっきはプロテクトっていうやつに邪魔されたらしい」
「成程、そこが一際厳重になっているという事じゃな」
ユニの発言を聞き、紫音は大元はそこにあるという確信を持つ。競馬を厳重にしておくという事は、触れられたくない何かがあるはずという考えである。
エリーは再びプロテクトにアタックをかける。
先程とは違い全体のスペックを注力しているだけあって、次々とプロテクトを突破していく。
1分程で全てのプロテクトを突破した。
「よし、これで丸裸じゃ!えっと場所は……」
「その必要はないですわ」
「!?」
突然ユニ達の背後に少女が現れる。
「お前は……財亜百!まさかお前が……!」
「何重にも施したプロテクトはあくまでフェイク……。探知するという事は、すなわちこちらからも探知されるという事です」
臨戦体勢を取るユニ達に、財亜百は静かに言い放つ。
「あなた達はこの場で始末します。もう何度も邪魔されてますので……!」
(マズい!来るぞ!)
ショッピングモールの一角で、ユニ達と「APES」との最後の戦いが始まるのであった。
悪魔との契約条項 第二百九十六条
悪魔の力を得たものは、人間の常識では測れない強大な力を得られる。
読んで下さりありがとうございます。
いいね、感想などをよろしくお願い致します。




