契約その287 Shrine maidenの未来!
買い物帰りに、ユニは把羅神社を訪れた。
「お正月以来久しぶりに来たけど、やっぱりあまり人はいないよな……」
そもそも神社が繁盛するのは、だいたい年末年始であるという事はある。
そのシーズンを終えて人が来なくなるのはある意味必然であった。
ユニは賽銭箱に小銭を投げ入れ、ちゃんと正式な手順に沿った参拝をする。
「二礼、二拍手、そして一礼……っと」
参拝が済み、ユニは帰ろうとする。しかしそこに、ミズキが箒を持って現れたのを見つけた。
「ミズキ!ここにいたのか」
声をかけるユニに、ミズキは小さく手を上げて答えた。
少し話をしようと、二人は境内の階段に隣同士で座った。
「へえ『かみやま書店』に」
「うん。参考書を買いにね」
「かみやま書店」とは、全国に展開する本屋のチェーン店である。瀬楠家の最寄りには駅前にある。
「そっか勉強か……」
どこか遠い目をするミズキ。それを見て、ユニはある事を思い出していた。
「もしかして、進学の話?」
ユニが聞くと、ミズキは小さく頷いた。
高校卒業後、ミズキは神仏系の大学へと進学する。基本的に受験は必要ないものの、みんなと一緒にいられる時間は少なくなるという事である。
その大学へ進学する事は、日神協のトップを目指す上で必要不可欠なものだった。
「その事、自分で決めたのか。紛れもない自分の意志で」
ユニは、改めてミズキに問う。
「うん!」
強く頷くミズキ。以前の様に、母親や日神協の言われるままではない、自分の強い意志だった。
「そうか。それならよかった」
「というか、そもそもそれで完全にお別れってわけでもないしね」
ミズキはそう、笑いながら言う。
「さてと、神社の掃き掃除は始まったばかり!頑張らないと!」
ミズキは、そう言いながら勢いよく立ち上がった。
「じゃあおれも手伝うよ」
参考書を境内に置きながらユニが名乗り出る。
二人は、そのまま社内を清掃するのであった。
とはいえ真冬のこの時期、すでに木の葉も散っている。掃除はすぐに終わった。
「掃除終わったら帰るの?」
掃除道具を片づけながらミズキが尋ねる。
「うん。そのつもり。みんなを待たせると悪いし」
ユニは頷きながら答える。ミズキの自宅は敷地内にあるので、ユニとはここでお別れになる。
「そっか……」
少し残念そうに呟くミズキ。それに気づかないユニではなかった。
ユニはさりげなく携帯を取り出すと、由理に電話をかけた。
「うん。ミズキと会ったから一緒に夕食食べてから帰るよ。ごめんね」
きちんと許可を取り、改めてミズキの方に向き直る。
「夕食はみんなはみんなで済ませるって。どっかに食べに行こう」
こうしてミズキを説得したユニは、ミズキと一緒に近所のファミレスへ入店した。
店員の案内に従い、二人は奥の席に座った。
「ハンバーグステーキ、ピザ、カレー、色々あるよ。何にする?」
メニューを広げながらユニはミズキに聞いた。
「うーん……カレーかな」
どことなくそわそわしながらミズキは答えた。
そのミズキの様子に、ユニはある結論に至っていたのであった。
ユニはハンバーグを頼み、やがて届けられた料理に、二人は舌鼓を打つ。
料理を食べ終わり、お会計を済ませて二人はファミレスを出た。
ミズキの「ユニと一緒にいたい」という気持ちを理解していたユニは、腹ごなしに散歩しようと誘う。
それをミズキは了承し、二人は夜の街を並んで歩き出した。
冬の夜風が心地いい。ミズキは、ユニの手を強く握りしめた。
「ねえユニ、私は……」
何かを言おうとしたミズキだったが、ある事に気づく。
「あれって、迷子かな」
男の子の迷子を見つけたのである。なぜこのタイミングで……と思いつつも、放っとけなかったミズキはその迷子の元へ駆け寄った。
「その子の親を探すの?警察に届けた方がいいと思うけど」
そうユニは言うが、ミズキの決意は固かった。
ユニはその意志を尊重する事にした。
ユニは、しゃがみ込みながら親の場所か家の場所をその男の子に尋ねた。
しかし男の子は何も答えない。きっと警戒しているのだろう。
それを見たミズキは、不意に男の子の手を持って歩き出す。
「それってまさか……」
ミズキがやろうとしている事を理解したユニに、ミズキは笑顔で頷きながらこう答えた。
「うん。とりあえず自分の運に任せて歩いてみる!」
一見ヤケクソに見える方法だが、それも有効な手段になるのがミズキである。
(大丈夫。私の行く道が、正しい道なんだ!)
ミズキはそう自分に言い聞かせる。
幸運とは、言わば自分の心の持ち様である。かつてミズキは、ユニにそう言われた。
(自信持っていけば、必ず目的は果たせる!)
ミズキは、男の子の手を引きながら意気揚々と歩いていくのであった。
すぐに迷子の捜索は終わった。どうやら男の子の母親も男の子を探していたらしい。
ユニとミズキにお礼を言いつつ、二人は去っていった。
「何というか、よかったね」
ふとユニが呟く。
「そりゃあ勿論、母親と一緒にいれる事は子供にとって大事だろうし……」
そう言いつつ、ミズキはかつての自分の母親との確執を思い出していた。
その時は、生まれて初めて母親に反逆したのだ。巫女をやめる事も考えた。
だが今は、巫女の勉強をする為の大学に、わざわざユニとの時間を減らしてまで行こうとしている。
その判断が正しいかどうかはまだわからない。
しかし今だけは……。
「私、わかったんだ」
「……?わかったって何が?」
ミズキの発言に、ユニの頭にははてなマークが浮かぶ。
「一緒にいれる時間が減るなら、少ない一緒にいれる時間を大切にすればいいんだって」
成程そういう事かとユニは納得した。
「だから今日は、もう少しだけでも一緒にいたいな」
自信を持っていけば、結果は後から着いてくる。
それがミズキの学んだ事である。
ミズキは、自分の顔をユニにゆっくりと近づけると、そのまましっかりと、キスをするのであった。
悪魔との契約条項 第二百八十七条
自信を持って行動すれば、結果は後から着いてくる。
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