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契約その285 ユニとヒナ、王道百合date!

 某日早朝。ユニは、徐氏堂駅前で人を待っていた。


 土曜日とはいえ、早朝なのでまだ人通りは少ない。


「おはよう!待った?」


 ユニに話しかけてくる人が一人。このヒナこそがユニを待たせていた人物である。


「いいや、今来た所だよ」


 笑顔で返すユニ。現に待ったとしても5分程であった。


「ごめんね。同居してるのに別々で来て貰って」


 手を合わせて軽く謝るヒナ。だが、その理由をユニは知っていた。


 ヒナはおしゃれしてきたのである。家から直接デートスポットへ行く場合、感動が薄れる。


 だからヒナは、ユニとのデートを駅での集合にしたのである。


「それで……どうかな。今日の私」


 ヒナは、長い黒髪をアップに結い、スニーカーにベージュのロングスカート、薄い黄色のジャケットを羽織っていた。


 肩掛けカバンにはスマホと財布しか入ってない様だ。


 ユニとデートするに当たって、他でもない自分自身でコーディネートしたのである。


「うんすごく……すごくかわいいよ」


 目を背けながらユニは言う。照れているのである。


 そんなユニは、今回ヒナをエスコートするに当たってボーイッシュにまとめた。


 髪はハンチング帽に入れ込み、体型が見えづらいロングコートを羽織っている。


 見ようによっては、ボーイッシュというより男装にも見える。


 そんなユニの予想外の反応を見れてご満悦のヒナは、意気揚々とユニを連れて電車へ乗り込むのであった。


(いやー、みんなに今日一日ユニとデートできる様に頼み込んだ甲斐があった!)


 ユニとデートしたい時は、ユニ側の都合は勿論だがみんなの許可も取らなくてはいけない事になっている。


 何せユニとのデートはみんなやりたいのだ。だが全員が好きに予定を立てていればダブルブッキングが起こる可能性がある。それを防ぐ為の手段なのである。


 今回のデートスポットは王道の動物園と遊園地。「徐氏堂東部動物公園」という場所である。電車で行けばそう長くはない。


 しばらくホームで待ち、二人はやってきた電車に乗り込んだ。


 土曜日と言えど朝早い時間というだけあって車内は比較的空いていた。


 何人か乗ってはいるが、二人が乗って余りあるスペースがある。


 二人は座席の端の方に並んで座る。当然というべきか、手はしっかりと握っていた。


 まもなくドアが閉まり、二人を乗せた電車がゆっくりと動き出す。


 あまり車内でイチャイチャするのもあまり良くない。女子同士の絡みを見たくないという人もいるだろう。


 だから二人は、移動中はそうした絡みはなるべく我慢していた。


 あるタイミングでそれは「解禁」されるわけだが。


 最寄りの駅からバスに乗り換え、二人は「徐氏堂東部動物公園」に着いた。


「徐氏堂東部動物公園」は、その名の通り徐氏堂市の東部にある動物園と遊園地の複合施設である。


 二人は、開園一時間前にここを訪れた。


 今日は土曜日、早く行かないと家族連れなどで混雑すると踏んだのである。


「まだ一時間前なのに、結構人がいるんだな」


 人だかりを見て、ユニが呟く。


 さすがにまだ混んでいるという程ではないが、そこそこの人が入り口前に並んでいた。


 二人はその最後尾に並ぶ。


「一時間前に来れば最前列に並べると思ってたけど、結構並んでるな」


「でもいいじゃん。こうやってさ、並んでる時間も楽しいし」


 ヒナはそう言うと、ユニの手をぎゅっと優しく握った。


「そんな……こんな人がいる前で……」


「いいでしょ。誰も見てないし」


 そんな二人の後ろにも人が続々と並んできて、いよいよ長蛇の列になった。


 確かに、ユニ達の事は誰も気づいていない様である。


「そろそろ開くな」


 スマホの画面を見て時間を確認するユニ。


 そして、列が前から順にゆっくりと動き始める。いよいよ開園の時間になったのである。


 事前にネットで取ったチケットを見せて、二人は園内に入った。


「うわぁ〜!いい感じ!何となく空気も……」


 ヒナはゆっくり大きく深呼吸をする。


 何回か深呼吸をした後、ヒナはユニに聞く。


「ねえどうする?並び始める前に遊園地の方に行くか、それとも動物園か……」


「先に動物園だね。遊園地もお昼の時間は比較的空いてるし。距離で言えば動物園の方が近い」


 ネット用パンフレットを指差しながらユニが言う。画面をタッチすれば遊園地の遊具の待ち時間も示してくれる優れものである。


「そう?じゃあ動物園へレッツゴー!」


 ヒナはそう言うと、ユニの腕を掴み、動物園へと引っ張っていく。


 しかしユニは、そんなヒナの行動に強い疑念を持つのであった。



「見ろよ、あれがハシビロコウだ」


 ユニが指差した先には、変な顔をした鳥がいた。


「へぇアレが……。何か作者みたいな名前してる割には、結構愛嬌あるんじゃない?」


 ずいぶんと間の抜けた声でヒナが言った。


「『動かない鳥』って言われてて、絶滅危惧種に指定されてるみたいだ」


 飼育小屋の前にある看板を見ながらユニが説明した。


 その「動かない鳥」の呼び名の通り、ほとんど動かないハシビロコウに痺れを切らしたのか、ヒナは再びユニを引っ張っていく。


「とにかく、他の所へ行こう!カピバラとか見たいんだ私!」


「ああ、うん」


 ユニは素直にそれに従うが、それでもどこか、今日のヒナに不信感を抱いていた。


悪魔との契約条項 第二百八十五条

ユニとデートをする時には、事前の申請が必要となる。

全ては、ダブルブッキングを起こさない為である。

読んで下さりありがとうございます。

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