契約その280 元日のwhite out!?
―――新年 一月一日 元日―――
「姉さーん!早く起きてー!」
ユニの耳元で、由理が叫ぶ。
どうやらいつの間にか寝てしまっていたらしいユニは、由理に叩き起こされた。
「ど……どうしたの?」
寝ぼけながらも、ユニは由理のただならぬ雰囲気を感じ取った。
「外が大変なの!」
「外……?」
由理に言われるがまま、ユニは部屋の窓から外を確認する。
「な……何だこれ……!」
外の光景を見たユニは、思わず絶句してしまった。
外は、辺り一面が真っ白な雪景色だったのである。
いや、雪景色などという生易しいものではなかった。
「家の一階部分が埋まってる……!」
何と瀬楠家の一階部分が丸ごと埋まっていたのである。
ざっと考えて、2.5メートル程積もった事になる。
「雪国でもないのにこんな?」
「うん。だから異常気象なの。太平洋側の地域でこれだけ降るのは考えられないって」
由理が頷きながら言う。
確かに、ネットニュースでもその様な旨の話が出ている様だ。
「高台にあるウチでこれだと、低地にある地域とかはもっと危ないだろ」
由理曰く、そうした地域の住人は、昨日の内に避難したらしい。
とりあえずリビングへ行こうという話になり、二人は一階にあるリビングへと降りていった。
一階部分は確かに雪に囲まれていて、周りの様子は掴めない。
「これ大丈夫?一階が雪で潰れたりしない?」
心配になったヒナが、以前工事を担当したどれみに聞く。
「それについては心配いりませんわ!だって水爆の直撃を受けてもびくともしないぐらいには頑丈ですもの」
一住宅にしてはいささか過剰な堅牢さかも知れないが、とにかく頼もしい事には変わりはない。
情報収集も兼ねて、ユニ達は試しにリビングのテレビをつけてみた。
普通はお正月特番をやっている時だが、この未曾有の大雪にどのチャンネルもそれについての報道をやっている様だ。
それによれば、大雪はここの地域周辺に集中しており、何かしらの作為を感じるレベルだという。
だが、それが何なのかまではわからない様だ。
「さて、これからどうする?」
テレビから目を離し、ユニはみんなに尋ねる。
「学校に救援物資が届いているっぽいよ。貰えるみたい」
スマホを見ながら由理が言う。
だがそれでも根本的な問題がある。
「でも、この雪じゃあ外に出るのもままならないだろう」
「それについては心配いらん!」
紫音が自信満々に言う。
「まだ試作品の段階なんじゃが、雪の上を滑れる『ホバースノーモービル』を発明した。移動手段については問題ない」
曰く四人が乗れる大型なものらしい。
「理論的にはホバーボードとそう変わらん。まあでも大型な分運転に慣れてる人でないと動かせないが……」
「ならアタシだな。乗った事がある」
名乗りを上げたのは丁井先生だった。
学校へ向かうのは丁井先生を含めたユニ、ルーシー、アザエルに決まった。
やがて雪原の上に例のスノーモービルが出される。
それにまたがってみる丁井先生だが、気になる事を紫音に聞いた。
「スノーモービルは本来、公道を走れないのだが、その点は大丈夫か?」
「ホバースノーモービルだから問題ありません」
屁理屈だが、どの道緊急避難が認められる可能性が高いと考えた丁井先生は、後ろに三人を乗せてスノーモービルを走らせるのであった。
高速で走ってみるとわかるが、辺り一面真っ白で、自分達がどこにいるのかすらわからなくなってくる。
スノーモービルに搭載されてあるナビがなければ、その場から動く事もままならないだろう。
こんな雪なので雪かきすらできない。住人は避難しているのかあるいは自宅に引きこもっているのか、外には誰もいなかった。
「まるで地球上に自分達しかいなくなったみたいだ……」
ユニは静かにぼやいた。
しばらく行くと、少し吹雪いてきたのでスノーモービルを止めて吹雪をやり過ごす事にした。
しかし、吹雪はだんだんと強くなっている様だ。すぐに周りが見えなくなった。
そんな吹雪の様子を見て、ユニはふと呟く。
「妙だな……」
「妙って何が?」
ルーシーが聞く。
「その、何ていうか、おれ達を吹雪の中に閉じ込めようとしている様な……そんな感じがする」
「そんな、一体誰がそんな事を……」
アザエルが言いかけたその時、「伏せろ!」とユニが叫ぶ。
謎の物体が、まるで隕石の様にユニ達の方へ突っ込んで来た。
その物体は、盛大に雪を撒き散らしながら地面に衝突する。
もうもうと上がる雪煙。それが晴れた時、その物体もとい人物が姿を見せた。
その姿を見て、驚愕すると同時に納得もするユニ達。
「道理でおかしいと思ったんだ。雪国というわけでもないのにこの異常な局地的すぎる積雪……おれ達を閉じ込めようとする吹雪……やっぱり全部お前か!」
「『悪魔殺し』!」
落下……というより降りて来たのは「悪魔殺し」だった。
「ずいぶんと回りくどい事をするな……」
わざわざ元旦に大雪まで降らせた「悪魔殺し」に、ユニは構えながら呟く。
それを聞いた「悪魔殺し」は、ゆっくりと口を開いてこう言った。
「この能力はまだ手に入れたばかりだから、特訓も兼ねたんだ」
能力を手に入れた、つまりまたどこかの悪魔を手にかけたという事である。
「特訓も兼ねて、キミ達を始末できれば御の字って事だ!」
そう言いながら向かって来た「悪魔殺し」が最初に狙ったのはアザエルだった。
不意をつかれたアザエルの首根っこを掴み、「悪魔殺し」は嗜虐的な笑みを浮かべながらこう言う。
「キミを殺せば、キミの力も手に入るな!」
「愚かだな……。少なくとも、それを絶対に許さない奴がこの場にいるぞ」
首根っこを掴まれながらも、アザエルはそう言い放つ。
「じゃあ、その前に殺すか」
冷酷に言い放つ「悪魔殺し」。
だが、確かにアザエルの言う通りだった。
「悪魔殺し」がアザエルに手を下すより遥かに速く、何者かの回し蹴りが「悪魔殺し」の顔面を的確に捉えたのである。
「!?」
「悪魔殺し」は反応すらできないまま吹き飛ばされ、先程よりも大きな雪煙を上げて地面に叩きつけられた。
回し蹴りの主は、やはりユニだった。
「人の命を奪う事が何を意味するか……自分の命を以て学べよ」
そう言い放つユニに対して、「悪魔殺し」はこう返す。
「生憎だな……。彼はそんな事教えてくれなかった……。だが彼の事は攻撃できないんじゃないのかな?」
「彼?」
仲間がいるのかと、ユニ達は強く警戒する。
「キミ達もよく知ってる男さ。出てこい。僕のしもべ」
「悪魔殺し」は、掌から紫のもやの様なものを出す。そのもやは、次第に人の形を取っていき、最後には人の形を取ったのであった。
「な……何であんたが……?」
その姿を見たユニ達は驚愕するのであった。
悪魔との契約条項 第二百八十条
人が悪魔の力を使いこなすには、適切な鍛錬が必要である。
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