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契約その278 悪魔殺しのsecret!

 静かに降る雪は、クリスマスの町を真っ白に彩っていた。


 今日の勤務を終え、勤務先である「タイム弁当」を出た財亜百は、従業員専用の裏口から出て家路を行く。


 百が全てを失った財亜グループの事件からすでに2年以上が経過し、初めは不慣れだった仕事も今ではもう慣れたものになっていた。


「そういえば、今日はクリスマスか……」


 大通りのイルミネーションを横目に見つつ、百はふと思う。


 お嬢様だった頃は豪華なケーキやプレゼントに囲まれたパーティをやっていたが、今はそんな金銭的余裕はない。


 だがせめて、一人で静かにクリスマスを祝おうと、百はコンビニで小さめのケーキを買うのであった。


「あっ……寒っ……」


 コンビニから出ると雪が降っていて、その寒さに百は思わず身震いをした。


 雪は降らない予報だったが、どうやら天気予報が外れたらしい。


 早く帰ろうと考え、百は小走りで家路を急ぐのであった。




 ―――あなた、財亜百さんですね?


 通りがかった路地から突然何者かの声が聞こえた。


(何なの?怖っ……)


 その声を無視して通り過ぎようとする百。


 が、まるで金縛りにでもあったかの様に、百の体は動けなくなった。


「こっちですよ」


 そしてそのまま、百は声がする路地の方へ吸い込まれていく。


 気がついた時には、謎の男が百の目の前にいた。


「男」というのも声の感じからの百自身の推測であり、暗がりでその姿はよく見えなかった。


「ひっ……な、何ですかあなたは!」


 百に問われた男は、暗がりの中でこう答える。


「私ですか?私は、『悪魔』ですよ」


「!?あ……『悪魔』!?」


 どこか聞き覚えのある言葉である。いや「悪魔」という単語自体はおそらく誰でも聞いた事自体はあるだろうが、そういう話ではない。


「悪魔」は、百におそらく顔をぐっと近づけると、こう言う。


「あなた、私と『契約』しなさい」


「け……『契約』?」


 聞き返す百に、「悪魔」は頷きながら続ける。


「ええ。()()()と因縁のあるあなたには適任だ」


「何の話……?」


 財亜グループ時代では、百はむしろ色々な人から恨みを買って来た。「因縁」とはそういう事だろうか。


「まあ、あなたに拒否権はありませんが……」


「悪魔」はそう言うと、百の髪を一本むしり取り、口に含む。


「え?」


「これで、契約完了です。楽しみですね。()()()来るのが」


 困惑する百をよそに、「悪魔」は去っていくのであった。


 我に帰り、その「悪魔」の奇行を痴漢行為だと思った百は、慌てて警察へ連絡。警察による捜査があったが、何の手がかりもなかった。




「いやー食った食った!」


 シャケを含めた豪華な料理と、デザートのクリスマスケーキを平らげたユニ達は腹鼓を打つ。


「ふぅ……みんな、少し落ち着いたか?」


 食後のココアを飲みながら、ルーシーはみんなに声をかける。


「どうしたの?そんなに改まって。何か話でもあるの?」


 ユニが聞くと、ルーシーはその通りだと言い、話を始めた。


「ここしばらく、おれとアザエルは『悪魔殺し』について色々調べてたんだ」


 ここ最近、二人が姿を見せなかったのはその為である。それはユニ達も理解していた。


「……何かわかった事があるのか?」


 紫音が聞くと、二人はゆっくりと頷く。


「ただの人間が、病院で見せた様な大きな力を持つとは信じられない。そう考えて、『魔界』で資料を調べてみたら、奴の正体についての情報を手に入れたんだ」


「じ……情報!?」


 アザエルの言葉に、ユニ達は身を乗り出す形で近づく。


「ああ。まだユニがルーシーと契約する前の話だ。あるただの人間と契約した悪魔が死んだ。その人間に殺されたんだ」


「殺されたって事は、おれみたいに悪魔の力を受け取ったって事?」


 ユニの質問に二人は頷き、ルーシーが話を続ける。


「ああ。そしてその人間が願ったのは、『天使や悪魔を殺せる力』と『殺した天使や悪魔の力を奪取できる力』。もっとも、その代償で大幅に自らの寿命を削る事になったらしいが」


「成程、つまりその契約した人間が現在の『悪魔殺し』になるんだな?」


「ちょっと待ってよ!」


 ユニの質問に待ったをかけたのはヒナである。


「確か、契約した悪魔が死んだら契約はなかった事になるんでしょ?その悪魔が死んでも力を持ってるのはおかしくない?」


(成程確かに……)


 ヒナの指摘に納得するユニ達。


「いや確かに、()()()()そういう認識で十分なんだ。悪魔を殺せる人間なんか普通はいないんだから。でも厳密的に言えば重要なのは悪魔自身ではなくその力、つまり悪魔が死んでもその悪魔の力が残っていれば契約は消えない。おれ達も経験してるはずだ」


(経験……?)


 身に覚えのないユニ達は互いに顔を見合わせる。


「『ネオハーレムフォーム』だよ。あれは一時的にユニの体にルーシーが取り込まれてるけど、契約は存続してるだろ?アレもユニが引き継ぐ形でルーシーの悪魔の力が残っているって扱いなんだ」


 つまり何者かが悪魔の力を引き継げば、契約は継続されるという事である。


「成程、つまりその仕様を利用して、『悪魔殺し』は天使や悪魔を殺してその力を奪い、自分の力を蓄えているって事か……」


「悪魔殺し」が天使や悪魔を殺す理由はわかった。


「でもさ、そんな事をする理由は何なの?単に力が欲しいから?」


 七海が聞くが、二人はゆっくりと首を横に振った。そこまではまだわからないという事である。


「ただわかる事は、天使や悪魔の力を蓄えて何かよからぬ事を企んでるって事だ。警戒するに越した事はないな……」


 ユニの発言に、みんなは一様に頷くのであった。


「まーでも、わからない事を考えていても仕方ないですよ。それより今を楽しみましょう!」


 モミの言葉に、ユニ達はそれもそうだと納得するのだった。


 その時はそれで終わったが、「悪魔殺し」の恐るべき計画はユニ達の知らない所ですでに始まっていたのだった。


悪魔との契約条項 第二百七十八条

悪魔の力さえ残っていれば、交わされた契約は継続する。

読んで下さりありがとうございます。

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