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契約その271 Manga artistの再生!

「悪魔殺し」の一撃によって、病院の中庭は濃い粉塵に包まれた。


「みんな!」


 見ているヒマはないと、ユニは病室から這い出るとどうにか車イスを用意し、中庭へ急行するのだった。


 そんな中、攻撃に巻き込まれた彼女達がどうなったかというと、無事だった。


 ある人物が守ってくれたからである。


「お……お母さん……」


 守ってくれた人物に、ルーシーはそう呟く。


 すんでの所でルーシー達を自分のバリアで守ったのは、ルーシーの母「セラフィム」だったのである。


「人の娘に、ずいぶんな事してくれたわね……!」


 バリアを解除しながら憤る「セラフィム」。「悪魔殺し」をキッと睨みつけるのであった。


「頼もしいが……一体なぜここに?」


 その光景を見ながら、紫音が呟く。


「それについてはおれ様が答えよう」


「アザエル!」


 そう言ってきたのは、「セラフィム」と一緒に姿を現したアザエルだった。


「ユニに頼まれたんだ。ルーシーが今『悪魔殺し』と戦っている、自分は動けないから『セラフィム』と一緒に守ってくれって」


 先程ユニが電話をしたのは、まさにこの為だったのである。


「でも、あいつはルーシーも倒してた。どうやったかはわからないが。あいつの『悪魔殺し』の力なら、いくら『セラフィム』でも危ないんじゃないのか?」


 アキが指摘する。


「確かにそう。彼が『悪魔殺し』の力を使っていたら、私も危なかった。しかし彼は使()()()()()()()()。おそらく彼ももう、限界なんだと思う」


「セラフィム」の言う通り、「悪魔殺し」の息は上がっている様だ。


「そりゃそうだ。ルーシーと戦って消耗しないわけがない」


 アザエルも言う。


「さてと……」


「セラフィム」は「悪魔殺し」に改めて問う。


「どうする?このまま戦っても、お互い消耗するだけ。しかもさっきの音で、直にマスコミもここに来ると思うけど……」


 つまり「セラフィム」は、「見逃してやるからとっとと失せろ」と言っているのである。


 それを察した「悪魔殺し」は歯ぎしりしながらこう言い残す。


「……わかった。だが今生き残っても意味がない。どの道全員死ぬんだからな」


 そう言い残し、「悪魔殺し」は黒いオーラを体から放出して去っていった。


 初めの頃、ルーシーがユニの前に現れた時にやった技術の応用である。


「悪魔殺し」が去った後、緊張の糸が切れたアキ達はその場にへたり込んだ。


「はあ〜……心臓が止まるかと思った……。ていうか何回殺されかけてるんだ私達……」


 ぼやくルア。


「でもあの人がその、『悪魔殺し』っていう人なんですよね!?じゃああの人捕まえれば万事解決だったんじゃ……」


「そう!そうなんだよ。あいつ逃がしてよかったのかな……」


 指摘する風月に、アキがビシッと指差しながらそう言った。


「いや、みんな無事でよかった……」


 そう言いながらやって来たのは、車イス姿のユニだった。ようやく中庭まで来れたのである。


「ありがとう『セラフィム』。お陰で助かりました」


 お礼を言うユニに、「セラフィム」は娘のピンチだからと返すのだった。


「いや、せっかく来て貰って悪いけど、今はまだ寝てなくちゃダメだって!ホラ車イス押していくから」


 アキが慌てて駆け寄って言った。


「そうです。先程のゴタゴタで傷口が開いた可能性が2.5%……。あなたの命の重みを考えれば高すぎる確率です」


 エリーもまた言う。


(命……)


 その言葉に感化されたのか、ユニはこう言う。


「みんな、ありがとう……。みんなが来なくちゃ、おれは()()、ルーシーを失う所だった……」


 それを聞いた彼女達は、ユニに口々にいつものお礼を言うのであった。


「お母さんおれも……。うぐっ!」


 ルーシーもユニ達の元へ行こうとしたが、先程「悪魔殺し」に攻撃された傷が傷んだ。


「一旦魔界へ帰って、治療するわよ。でも大丈夫。なるべく早く彼女達の元へ帰れる様にするから」


「セラフィム」の言葉に、ルーシーの顔は明るくなったのであった。


(さてと、後は……)


 彼女達に連れられて病室へ戻る最中、ユニは最後に残った問題について思案していた。





 ―――少々時を戻して数十分前、瀬楠家―――


 未だに自室に引きこもっている藤香に、メイはドア越しに話しかけていた。


「ほらぼくもさ、前に『北上かしす』の一件で傷ついて引きこもった事があっただろ?その時はキミも協力してくれた」


 確かにあの時、藤香はコラボ配信の衣装を手かげてくれた。


「そのなんというか、また衣装のデザインしてくれないかな。あの時みたいにさ。ほらリハビリもかねて……。ここしばらくペンも持ってないだろ?」


「……別に既存のデザイン使ってもいいと思う」


 ドア越しに藤香が言う。


「いいやダメだ!」


 だがそれを、メイは拒否する。


「もう包み隠さずに言うけど、みんなキミの事を心配してるんだ!せめて『活動してます』っていうアクションを起こさないと!ここで立ち止まってたら、その『ハル』っていう悪魔との約束も果たせないだろ……」


「!」


「ハル」。元々名もなき下級悪魔で、その名前は藤香がつけたものである。「初恋エターナル」の()()()作者だった。


「ぼくはその時彼女じゃなかったから詳しい事はわからないけど、漫画を描くのはそいつとの約束で、キミはもうすでに漫画家なんだろう!?その約束ほっぽり出して、ここで終わる気か!?」


「……!」


 しばらくしてドアが開き、中から藤香が現れた。思ったよりもやつれていない様だ。


「メイ。キミは僕がペンも握ってないと言ったが、それは間違いだ」


 藤香はメイに衣装デザインを渡しながらこう続ける。


「必要になると思って色々描いてた。キミのいう通り、僕はもう漫画家だ。ペンを手放す事はできないよ」


 藤香はニコッと笑いながら答えた。


「確かにこの件、僕は傷ついた。一度だけ筆を折ろうとも考えた。でも気づいたらペンを走らせてたんだ」


 そして藤香は、こう言い放つ。


「どんな事があろうと、僕は漫画家『黄桃ハル』だ!」


 藤香の決意を知ったメイは、嬉々として配信の準備をするのであった。


 今日は雑談配信である。当然「黄桃ハル」について色々聞かれた。


「幻夢めいと」は、それに対してなるべく真摯に答えたのだった。


 数日後。出版社が声明を発表した。内容は「初恋エターナル」の連載を再開する事、そして今回「黄桃ハル」を誹謗中傷した者に対しては法的措置を行う事である。


「SNSは匿名性で守られているという人間がいるが、あれはウソだ。今の時代、調べりゃすぐに特定できる。そういうのに対する法整備も進んでるしな」


 病室でニュースを見ながらユニは言った。


 そのユニもすぐに退院できた。全治数ヶ月の重傷だったが、悪魔の回復力で約一週間で、完治したのである。


 ルーシーもまたケガを治して復帰し、学校も再開、また日常が戻ってきた。


(この問題に終わりはない。ふとした時に蒸し返されて、また傷つくかも知れない。前が見えずに立ち止まるかも知れない。でも僕はペンを走らせるよ。あの子との約束があるから)


 藤香はそう心の中で呟くと、再びペンを走らせるのであった。


悪魔との契約条項 第二百七十一条

人を誹謗中傷する者は、いずれ地獄に堕ちる。

逃げ場はどこにもない。

読んで下さりありがとうございます。

いいね、感想などをよろしくお願い致します。


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