契約その270 Devil killerの力!
ユニが、今自分達に襲いかかってきた男が「悪魔殺し」であると推測したのには理由がある。
今こうしている間にも、マスコミや野次馬は病院を取り囲んでおり人一人入る事はできないし、入れたとしても誰かに止められるはずである。
その上で今、現時点でユニを殺しに行く動機のある存在……。
(確証はないが……。おれ達が敵に回った事は相手も把握してたって事か……)
ユニはどうにか窓枠に手をかけ、中庭で繰り広げられているルーシーと「悪魔殺し」の戦いをしばらく見守っていた。
(いや!ぼーっと見守ってる時間はない!)
ユニはそう思い直し、ベッドの枕元に置いてある自分の携帯をどうにか取ると、グループ通話で彼女達全員に今の状況を伝える。
「えーっ!ユニ!?目を覚ましたの!?」
まずは驚く七海。
「そんな……!今すぐお見舞いに行きたいのに.面会禁止になってるから……」
風月が肩を落とす。
「いやまあそうなんだけど、それよりこっちはかなり大変な事になってて……だから……」
全員に状況を伝え終わり、やってほしい事も頼んだユニは、改めて窓の外に目をやり、ルーシーを見守る。
戦いは、ルーシーの圧勝と言ってよかった。
いくら「悪魔殺し」と言われる存在とはいえ、両者は身体能力と戦闘技術に大きな差があったのである。
ルーシーの戦闘力の前に、「悪魔殺し」はなす術もなく何度も何度も叩きのめされる。
だがその状況の異常さに、ユニはすでに気づいていた。
そしてその事は、当のルーシーもまたそうだった。
(何でだ?何でダメージが通らない?)
並の人間が悪魔の攻撃を一撃でも喰らおうものなら、それだけで少なくとも立ち上がれなくなる程のダメージを負う。
それだけ、人間と悪魔には隔絶した力の差があるのである。
だが「悪魔殺し」は、ルーシーからどんなに攻撃を貰おうが微動だにしなかった。
「くそォ……。当たってるのに効いてねェ……!生まれて初めてだこんな事」
悪魔の体力も無限ではない。長期戦になれば必ず消耗する。
人間界に長期滞在する為に受肉しているルーシーなら尚更である。
「どうだ?今までお前らが人間に課してきた理不尽を自分らが味わう気はよォ!」
(曲がりなりにも殴られまくってるのに喋る余裕があるのかよ……クソッタレ!)
ルーシーは心の中で毒づく。
そんな中、悪魔殺しがふとこんな事を言う。
「そろそろマスコミがここに来るぞ」
「え?」
ルーシーが、一瞬その言葉に気を取られたその時である。
「隙ありだ……」
「悪魔殺し」が自分の右腕を獣の様な異形に変化させ、鉤爪でルーシーの右腕を攻撃する。
「!」
鋭い鉤爪の一撃は、ルーシーの右手首に大きな引っ掻き傷を刻んだ。
しかし、その傷から吹き出たのは血ではなく謎の黒いオーラの様なものである。
(これはおれの悪魔の力!?)
慌てて傷を左手で抑えるルーシー。しかし、力の放出は止まる事はなかった。
(マズい!これ以上力を失うのは……!)
悪魔の力は、悪魔の存在に関わるエネルギーである。仮に一気に消耗する事があるのなら、その悪魔は死ぬ事になる。
(成程……!こうやって天使や悪魔を殺してたって事かよ……!)
いよいよルーシーは膝をつく。そこに容赦のない「悪魔殺し」の攻撃が襲う。
まさにその時だった。
「うおりゃあー!」
雄叫びと共に、何者かの飛び蹴りが悪魔の腕を弾く。
「アキ!」
駆けつけたのはアキだけではない。ルア、紫音、風月、エリーの、戦闘力を持つ彼女達だった。
「よかった……間に合ったか……」
病室でユニは安堵の表情を見せる。
敵が「悪魔殺し」と言われるからには、おそらく悪魔に対する何かしらの特効の様なものがあるはず。
そう考えたユニは、動ける者だけでもこっちに来る様に頼んだのである。
ユニの頼み事はそれだけではないのだが、とりあえずユニの最初の根回しが功を奏した形になった。
「生憎じゃが、わしらはただの人間とロボットじゃ。その力は意味を為さぬぞ」
紫音が「悪魔殺し」に言い放つ。さりげなく自分を入れてくれた事に、エリーは紫音に感謝の言葉を伝えるのであった。
「五対一か……」
「ああ、卑怯とか言うなよ?自分の手を汚さずにユニと藤香を傷つけたお前に言われる筋合いはないからな」
アキが牽制する様に言う。
「さて……"電化の宝刀マークII"!」
「こっちは"電化の宝刀"です!」
「"百戦錬磨の格闘家の演技"……!」
「"キタセンジュアームズ"!」
「掃討モードに移行します」
臨戦体制を取る彼女達。
「これで決まりだ……!」
五人が一斉に飛びかかろうとしたその時、不利を悟った「悪魔殺し」はその力で宙に浮かび、攻撃を避ける。
「飛んだ……?」
逃がすかと、「キタセンジュアームズ」を操作して捕えようとする紫音。
それを「悪魔殺し」はやすやすと避けていく。
「厄介じゃな……。一体どうやって揚力を得てるんじゃ……」
軽く地団駄を踏む紫音。
そんな中、「悪魔殺し」がおもむろに両腕を頭上に伸ばす。まるで「元気玉」の様なポーズである。
そのポーズから、禍々しいエネルギーが「悪魔殺し」の頭上に集まっていく。
「そんな……ウソだろ……!?」
その光景を見て、青ざめるユニ。
「『悪魔殺し』の力が人間に通用しないとして、なぜおれがお前達を殺せないと言い切れる?普通の人間だって人間を殺すだろう。ましてやおれが『悪魔の力』を持っているのなら……!」
そのエネルギーは、やがて一つの大きな玉の様な形になる。
「マズイな……かなりのエネルギーの塊じゃ……!あんなのがもしわしらに落ちてきたら……!」
「ええ。チリ一つ残らないでしょう。わたくしの『防御特化モード』でも受け切るのは不可能です」
紫音とエリーが言う。しかし、その目はまだ諦めていない様であった。
「仮に直撃しない位置まで逃げたとして、おそらくその余波でもお陀仏だろうな」
アキも言うが、すでに逃げる準備をしている様だった。
「くそォ!動け体!このままじゃみんな殺される!それにまだか!?アザエル!」
重傷の身に鞭打って立ちあがろうとするユニだが、体は動かなかった。
「あの攻撃を防げる発明品……!『バリアンブレラ』でも使うか?いやさすがにアレには無力か……いや防ぐよりあのエネルギーを吸収した方が得策か……?」
「やるだけやります。『防御特化モード』起動」
「私達は逃げれるだけ逃げるぞ!」
みんなはそれぞれ生き延びる為の準備を始める。
「終わりだ」
集まったエネルギーの塊を、「悪魔殺し」はそのまま地上へ叩き落とす。
病院の中庭全体を巻き込む程の大爆発が、みんなを襲うのであった。
「みんなー!」
ユニの叫び声が辺りに響いた。
悪魔との契約条項 第二百七十条
「悪魔殺し」の力は、魔力を持つ者にのみ有効である。人間には意味がない。
読んで下さりありがとうございます。
いいね、感想などをよろしくお願い致します。




