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契約その269 登場!devil killer!

 サイン会での銃撃事件の一報は、瞬く間に世間に広がった。


 SNSのトレンドはそれ一色に染まり、テレビのワイドショーも有識者を集めた討論に終始しているのであった。


「それで!ユニの容体はどうなってるの!?」


 慌てたルアがメイに尋ねる。


 仕事を終え、事件を知ったルアはすぐさま病院へ向かおうとした。


 しかし病院にはマスコミが詰めかけており、ルア自身の知名度もあってお見舞いができなかったのである。


 それは他の彼女達も同様だった。


「わかった。最初から話をしよう」


 メイはそう言うと、事件発生直後の状況から順番に話し始めるのだった。


 事件発生直後、由理とメイは交代しながら心配蘇生法を繰り返していたが、程なくして救急車が来たので犯人を撃破して戻ってきたルーシー、放心状態の藤香も加えて一緒に救急車に乗り込んだ。


 向かう病院は最寄りの「徐氏堂医科大学病院」である。


 そこに緊急入院したユニは、処置の速さに加えて本人の生命力の高さもあってどうにか一命は取り留めたのだった。


「それで、犯人の動機は?」


「ネットニュースだと、藤香ちゃん……黄桃ハルに連載を取られた事についての腹いせだって」


 ルアの疑問に、アゲハがスマホを見ながら答える。


「つまり漫画家志望って事か。そんな奴が何で、ライフル銃なんて物騒なもの手に入れられたんだ?」


 アキの疑問はもっともだが、目下警察が捜査中らしい。


「それについてはルーシーとアザエルも独自に調べてるみたいだ」


 そうメイがつけ加える。


 そんな中、丁井先生がようやく帰ってきた。


「あ!お帰りなさい。どうですか学校は」


 アキが聞く。


 所属生徒の銃撃による負傷、そしてその事件性の高さから、学校はしばらくの間休校という事になっているのである。


「いやァ……マスコミだの保護者だの、色んな対応で大変だ。だがまあ、当事者に比べりゃ、大した事ないだろうが……」


 丁井先生は上の階にある藤香の部屋の方を見ながら呟いた。


 この事態を受け、出版社は「初恋エターナル」を一時的に休載するという措置を取った。


 作者の精神状態が不安定だからという理由である。


 現に藤香は事件以降、自分の部屋から出てきていない。


「ユニちのケガで藤香ちゃんが傷ついたのは確かかも知れないけど……」


 アゲハはそう言いながら、自分のスマホをみんなに見せる。


「ウチが怒ってるのは、()()だよ!」


 アゲハが見せたのは、今回の事件に対するSNSの反応だった。


 ―――これが黄桃ハルの素顔だ!


 ―――地味だけどかわいくね?


 ―――これは男いるな


 ―――ていうかこういう場で泣きじゃくるって何考えてんの?


 ―――きっと苦労とかしてなかったんだろ。いい薬だな


「何だこれ……」


 あまりの民度の低さに、みんな一様に絶句する。


 ここでは書けないが、中には藤香の体型について良くない目で見ているものもあった。


「ウチはSNSで色々議論したりするのはやめてるけど、これはさすがに反論したくなっちゃったよ」


 憤りながらアゲハが言う。


「SNSの匿名性の問題だろうな。普段面と向かっては言えない事も、SNSでは言えてしまう。だから良くも悪くも議論が白熱してしまう」


 丁井先生がため息混じりに言った。


「……」


 それを聞いたみんなは黙ってしまった。SNSのそういった問題は、とても一朝一夕に解決できるものではないからである。


 解決方法がわからないのだ。


 だが、そんな沈黙を破ったのはメイだった。


「そうだ。配信しないと。藤香に衣装差分を作って貰おう」


 突然思い立った様に言うメイ。


「そんな……藤香さんはまだ引きこもってるんですよ!?今はなるべくそっとしておいた方が……」


 慌てて止めようとするみすか。


「いや、今だからこそだ。今の藤香は自信を無くしてる。自分は必要とされてる人間なんだって、ちゃんと改めて理解させないと」


 メイはそう言うと、藤香の部屋へ向かうのであった。




 一方の徐氏堂医科大学病院。個室となっているある病室にて、ユニは未だに意識を取り戻さずにいた。


 面会は止められていて、医者や看護師といった病院関係者以外、誰が来る事もない。


 そんな誰も来るはずのない病室に、ある男がやって来た。


 見た目は全身黒ずくめの服を着ていて、病院関係者でない事は明らかである。


 その男は、今もなお眠っているユニに対してポツリとこう呟く。


「お前はいいよな……。自分を必要としてくれる人……好きな人に囲まれてて……おれなんか……」


 そして男は、謎の黒いオーラの様なものを腕から出す。


「お前が死ねば、きっと悲しむ奴もいるんだろうな……」


 男がそう言って、ユニに拳を振り下ろした、次の瞬間である。


「うわっ!危ねェ!」


 この土壇場で目を覚ましたユニが、慌てて飛び起き、その攻撃を何とかかわした。


「うぐっ!痛っ!」


 しかしやはり、撃たれた箇所がまだ痛むらしく、ユニは胸を抑えながら膝をつく。


「そうだろう。ライフルで撃たれたのだから……むしろよく生きていたものだ……。それも悪魔の力か……」


「それも確かにあるけど……一番は『愛』だ」


 ユニの返答に、男は一瞬癪に触ったのか顔をしかめると、再び拳を振り上げる。


(コイツ、おそらく……!)


 男の正体にある程度の目星がついていたユニは、よけられない事を瞬時に悟り、防御の姿勢を取る。


「受けられねェよ。今のお前にはな」


 男がそう言いつつ、ユニにトドメを刺そうとした、まさにその時だった。


「うらァァァ!」


 男の拳の一撃を、どうにかして受け止めた人物が一人。


 ユニを守ったその人は、やはりあの人物だった。


「ルーシー!」


「よかった間に合った!コイツはおれに任せて!頼むから寝ててくれ!」


 ルーシーはそう言い残すと、病室の窓を突き破って男と一緒に病院の中庭へと転がり落ちた。悪魔にとっては大したダメージではない。


(寝てるヒマなんてないよ……!)


 ユニは体を引きずりながらも、何とか窓際まで行き、ルーシーに向かって力の限り叫ぶ。


「ルーシー!気をつけろ!そいつがたぶん件の『悪魔殺し』だ!おそらくそいつも悪魔の力を使うぞ!」


「成程そういう事か……」


 ユニの発言に、ルーシーは合点がいった様である。


「どうやらお前は、契約者と良くやっている様だな……」


 男はそう呟くと、拳を構えて臨戦体制を取る。


 だが見た目から格闘技系の素人である事を、ルーシーは一瞬で見抜いた。


「でもまあ、お前が悪魔殺しだっていうなら……、ここで倒せれば万事解決って事だよな!」


 ルーシーはそう言いながら、「悪魔殺し」に向かっていくのであった。


「頼むルーシー……無茶だけはするな……!もう二度と、キミを失いたくないんだ……!」


 ついに始まる戦いを、ユニは祈りながら見届けるのであった。


 悪魔との契約条項 第二百六十九条

悪魔の体と契約者の体は頑丈である。滅多な事では傷つかない。

読んで下さりありがとうございます。

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