契約その260 Supreme deity、降臨す!
その謎の人影……の様な何かは、ユニ達と神の間に立つ様に地に降り立った。
人影といってもかろうじて人影とわかる程度の姿である。
まばゆい光に包まれていて、人相はわからない。
「最高神……!」
神が驚きの表情を見せながら呟くのを聞いて、ユニ達は身構える。
あの神があんな表情を見せる程の相手である。備えておくに越した事はない。
「そこまでです。両者、拳を下ろしなさい」
そんな声の様なものがユニ達の脳内に響き、ユニ達も神も、驚く程素直に従った。
(こいつがさっき神が言っていた「最高神」という奴か……)
ユニは拳は下ろしても警戒は怠らずに、観察を続ける。
しかし容貌に関しては、眩い光に包まれていてよくわからない。
神は、最高神にこう問い詰める。
「一体なぜですか!?契約の代償は必ず払わなければならないもの……!瀬楠由仁の命を以て『代償』とするべきであるのに……!それを止めるとは……」
「それはあくまであなたの都合ですよ」
最高神はピシャリと言い放つ。
格上にそう言われては、神も黙るしかなかった。
「ちょっと待て。そもそもお前は何者だ?『最高神』っていうのは何だ?要するにコイツの上司って事か?」
神の方を指差しながらユニが聞いてきた。
「ええ。その様に思って頂いて構いません」
柔らかな口調で最高神が答えた。
「……具体的には?」
ユニは問い詰める様に聞いた。
なるべく情報を聞き出そうとしているのである。
最高神はそれを理解したのか、なるべく誠実に答えようと考えた。
これからに向けて、彼らの信用を得たいからである。
「わかりました。では人間にもわかる様にかいつまんでお話しをしましょう」
最高神はそう言うと、自分の立ち位置について事細かに解説し始めるのであった。
「まず最初に、この世界にはそれぞれ異なる並行世界が存在します。大まかな歴史の流れは同じですが。あなた達も覚えがありませんか?」
最高神は風月の方を見ながら言う。彼女が元々暮らしていた大正時代は、正確にはこことは違う並行世界という事だろうか。
最高神が言う様に、並行世界で大まかな歴史の流れが違うのなら、各世界に「別世界のユニがやって来た」という歴史が刻まれていても不思議ではない。
そしてそれは、ユニ達が今いる世界も例外ではないのだろう。
「わしらの世界にも、大正時代という『過去』に別世界のユニが来たのなら、わしの家に伝えられてきた手紙の存在にも辻褄が合うな」
納得する様に紫音が呟く。
だがそれは、ある残酷な事実も意味する。
風月に向けて書かれたしおねの手紙は、この世界、つまり風月にとっての別世界の自分にあてられたという事である。
それは果たして自分へ向けられた手紙と言えるのであろうか。
その事を理解した風月は、一瞬クラっと立ちくらみを起こす。
その体を、慌ててユニが抱き支えた。
「大丈夫だ。我慢できないなら聞かなくてもいい。あとはおれ達が聞いておくから」
「いえ。聞きます。あの手紙は、間違いなく私へ向けられたものですから。だから大丈夫です」
非常に強く、そしてハッキリとした口調であった。
それを確認した最高神は話を続ける。
「そしてその並行世界の一つを管理しているのが『神』、つまり彼の様な存在であり、それら全てを支配するのが私、最高神になります」
「つまりお前は、間接的に全ての世界を支配しているっていう事か?」
ユニの質問に、最高神はゆっくりと首を横に振る。
「私の管轄外である世界は存在します。丸ごと歴史の流れが違う世界、あるいは同じ様に見えて実は違う世界……私達最高神も複数いるのです」
とにかく、少なくともユニ達が今いる世界を支配する神と最高神の関係はわかった。
話は終わりですと、最高神は言うのであった。
「それで、その最高神が、何でおれ達を助けた。あいつが言うには、おれ達の存在は神的には許されないらしいじゃないか」
ユニが聞くと、最高神はゆっくりと口を開く。
「最近になって少し……事情が変わったのです」
そう最高神が言う。
「事情……?」
ユニが呟く。
「ええ。我々の要件を受ければ、あなた達は無罪放免とする事もやぶさかではありません」
「無罪放免って……元々おれ達は無実だぞ」
最高神に対して、ルーシーがムッとしながら言った。
「つまり、お前らの言う事を聞けば、もうおれ達に危害は加えないと?」
ユニの質問に、最高神が頷いた様に見えた。
「……わかった。要件を言え」
その内容次第で、それを受けるとユニは言う。もうこれ以上、彼らの干渉を受けない為にも、重要な事だとユニは思ったのである。
「食いつきましたか……」
最高神はそう呟くと、早速ユニ達に肝心の要件を話し始める。
「最近、天使や悪魔を殺す人間の存在が認識されました。すでに多くの被害が出ています」
最高神としては、悪魔に被害が出るのはまだしも、身内である天使に被害が及ぶのは見過ごせないらしい。
「所謂『神殺し』の力を持っているので、神と、それに類する力を持つ天使や悪魔では相手にできないのです」
そこで、色々事情を知っているユニ達の出番という事である。
大半が天使でも悪魔でもない以上、「神殺し」の力は意味をなさない。
「その撃破をおれ達にやって欲しいって事か……」
ユニはそう呟くと、彼女達の方を見る。
「どうする?みんな。断る事だってできるんだ」
しかし、彼女達の心は一つだった。
「やるよ!その依頼!おれにとって悪魔は同胞だからな」
ルーシーが言う。
「同感。堕ちたとはいえおれ様も天使だ。見過ごせない」
「二人が言うんなら、当然私達だって!」
彼女達も口々に言い合う。
すぐにユニ達の意見はまとまったのである。
「……というわけだ。受けるよ。それ」
ユニは改めて最高神の方に振り返りながら言う。
「あなた達の意見を受け取りました。では、この夢から脱出させましょう」
最高神がそう言うと、その体がさらに眩く光る。
その光に包まれ、ユニ達は元の場所へと帰還するのであった。
かくして現実世界へ帰還したユニ達。目覚めた途端にある人物との再会があるのだが、それはまた別の話である。
悪魔との契約条項 第二百六十条
世界は複数に分かれており、それぞれを神が支配している。それを統括するのが最高神である。
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