契約その257 最強悪魔と始める百合harem!
謎の本に書かれた一節を読んだユニの前に、謎の美少女が現れた。
その美少女は、ユニのベッドの上でただ泣きじゃくっている。
状況が飲み込めないユニだったが、とにかく目の前の少女を落ち着かせるのが先決だと考えて、その少女に話しかける。
「何で泣いてるのかわからないけどさ、何か悲しい事があったんなら聞くよ。ほら、他人に話せば楽になる事もあるしさ」
それを聞いた少女は、肩を震わせながらこう言う。
「本当にお前は……どこまでも優しいな……。でもな、悲しいわけじゃないんだよ……」
「悲しいわけじゃない?じゃあなんなんだ?」
心なしか少女の声が明るくなった事が、ユニにもわかった。
「バカ野郎……そりゃお前……!嬉しいんだよ……!またこうやってお前と話せる事が……!」
「また?つまりおれとキミは今まで会った事があるって事か?それも泣く程嬉しいって事は、おれがキミにとってそれ程大切な存在って事……」
少女は、ユニの肩を掴んでこう言う。
「そんなの……当たり前だろ!お前がいなけりゃおれは……」
不意に少女は、いや……と思い直して言う。
「そういえば、自己紹介が遅れたな。おれの名前は……いや、『ルーシー』と呼んでくれ。みんなそう呼ぶ」
「『ルーシー』……」
口に出して読んでみると、妙に耳触りがいい。
まるで呼び慣れている様な……。
その少女、ルーシーは話を続ける。
「それと、事態は急を要しているんだ。神を倒して、お前を元の世界に戻さなくちゃいけない」
「神?」
ユニにはわけがわからなかった。神というのも、そして「元の世界」というのも……。
混乱しているユニに、ルーシーは今度は真剣なトーンで言う。
「いいか?落ち着いて聞いてくれ。結論から言うと、おれ達が今いるこの世界は、お前の夢の中の世界なんだ」
「夢……?」
いきなりそんな事言われても、ユニには理解できなかった。
「お前ならすでに、所々の違和感に気づいているはずだ。これまであっただろう」
―――違和感!
ルーシーにそう言われ、ユニの脳裏には今朝からの違和感が浮かぶ。
朝起きた時、なぜ自分の髪が長いと感じた?
なぜ彼氏という言葉に反応した?
直接関係ないはずの百年前の石碑の前でなぜ足を止めた?
見ず知らずの女の子の名前をなぜ言える?
知らないはずの人工知能の名前がどうして引っかかる?
誰も知らないはずの芸術作品名や部活動をなぜ知ってる?
なぜただのクラスメイトを助けた?
―――仮に女の子だったら―――
「!」
七海に言われた言葉が脳裏に響く。
「おれが……女の子?」
その事が脳裏に浮かんだ時、ユニは頭を抱えて苦しみ出す。
「ぐっ……うっ……ぐっ……ああああああァァァ!」
そんなユニを呼ぶ声が、ユニの耳に入る。
そんなユニを、ルーシーは涙声になりながらも力強く抱きしめながらこう言う。
「そうだユニ!しっかり耳をすませるんだ!お前にはみんながいる!」
「ユニ!」
「お姉ちゃん!」
「ユニ!」
「ユニ!」
「ユニち!」
「ユニ!」
「ユニ!」
「ユニ!」
「ユニさん!」
「ユニ!」
「ユニさん!」
「ユニさん!」
「ユニさん!」
「瀬楠!」
「ユニ!」
「由仁さん!」
「マスター!」
「ユニ!」
ユニに、彼女達全員の声がついに届いた。
「ハアハア……聞こえる……!みんなの……みんなの声が……!」
「そうだ……そうだよユニ!みんないる!みんないるんだ!」
ルーシーの抱きしめる強さがさらに強くなる。
「お前にはみんながついてる!もう一度おれと……いやおれ達と一緒に始めよう……!お前とおれ達……!全員が幸せになれる、百合ハーレムを!」
「うおああああ!」
それを聞いたユニの苦しむ声が、魂の叫びになる。
髪は伸び、体型も女性のものへと変わる。
「ああああああっ!……ハアっ……ハアっ……」
その叫び声が途切れた時、ついにユニは完全に記憶を取り戻したのであった。
「ユニ……?」
涙声のルーシーが聞くと、ユニはルーシーを強く抱きしめ返す。
「ああ……!ああ……!」
頷きながら応えるユニ。
そうして二人は、気の向くままにお互い抱き合うのであった。
ひとしきり抱き合った所で、ユニは改めてルーシーに現状を確認する。
「じゃあつまり、宇宙から帰って来た後、おれは突然眠くなってからずっと寝ているって事か?」
ユニの質問に、ルーシーは強く頷いてこう言う。
「そういう事。だからおれ達は、おれの悪魔の力を使って一時的にこの夢の世界に入ってお前に接触していた。ここから出るには、まずお前自身がここを夢の世界だと認識しないといけないから」
だがそれにはリスクがあるという。体質上の問題で、夢の中にやって来た一部の人物は、自分をその夢の中の人間だと認識してしまう事があるらしい。
夢の世界を認識していない言動を取る彼女達がいたのはその為である。
「そうか、あれ以降寝ていたって事は、つまりあれも……」
ユニの脳裏に浮かぶのは忌々しい記憶。
ユニが思い出したのは、何も彼女達との楽しい記憶だけではない。
夢の中で、かつ相手が神だったとはいえ、ユニはルーシーを守りきれずに死なせてしまった。
それ以降、ユニは「悪魔がいない世界」の夢を見ていたのだ。
「成程……。じゃあつまりキミは本当は死んでないって事か……」
それを確信したユニの目から、また涙が溢れて来た。
「本当に……本当によがっだ……」
そんなユニを、ルーシーは慌てて介抱しながら言う。
「おいおい、ちょっと待ってよ。お前が記憶を取り戻して終わりってわけじゃないんだ。この世界から脱出しないと、お前はずっと眠ったまま……。そんなの死んでるのと同じだ」
「そうか……!そうだよな」
ユニは気を取り直し、自分の目の涙を拭う。だがそれはそれとして、自分の顔面を思い切り殴りつけた。
「えェ!?ちょっと待ってよ!何してんの!?そんな事してもこの夢からは覚めないぞ!?」
ユニの奇行を、ルーシーは慌てて止める。
「違う。これはおれ自身への罰だ。どんな状況だったとしても、おれは彼女を守れなかった。だからそれに対する罰だ」
赤く腫れた顔をしながらそう答えるユニに、ルーシーは「やっぱりストイックだな……」とぼやくのであった。
「それで、この夢から覚めるにらどうしたらいい」
「そうだな……。この夢の支配者、つまり『神』を倒すか夢を破壊する様に強要させればいいんだ」
ルーシーがアイデアを捻り出す様に答える。
「成程……確かに言うのは簡単だけど、『神』が直接コンタクトを取らないと難しいな」
「その心配は及ばないよ」
突然外から声がした。
二人が部屋の窓から見てみると、そこには何と巨大化した神の姿があった。
「まさか記憶を取り戻すとは……!そんな人間他にはいない。どうやらお前達を見くびっていた様だ……」
「認識を改めるのが遅すぎるんだよ」
ユニはそう吐き捨てる。
その後で、ユニはルーシーの方を振り返って聞く。
「つまりだ。あいつを倒せば全て解決するって事だろ?」
その質問に、ルーシーは強く頷いた。
そのルーシーの反応を見たユニは、渾身の笑みを浮かべてこう言う。
「……よしやろう!必ず……!元の世界に戻るんだ!」
こうしちゃいられないと、自室を飛び出して階段を駆け降りるユニ。そしてそれについて行くルーシー。
ユニは目指すのは勿論、神がいる家の前だった。
「神」との最終決戦が、いよいよ始まろうとしていた。
悪魔との契約条項 第二百五十七条
これは、元男である瀬楠由仁と、その彼女達全員が幸せになる物語である!
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