第252話 日常①
謔ェ鬲斐→縺ョ螂醍エ譚。鬆隨ャ莠檎卆莠泌香莠梧擅
(悪魔との契約条項 第二百五十二条)
縺縺ョ荳也阜縺ォ縲謔ェ鬲縺ッ蟄伜惠縺励↑縺縲
(この世界に、悪魔は存在しない。)
―――さん。
―――いさん。
―――兄さん。
「兄さん」
妹の「瀬楠由理」に起こされ、瀬楠由仁は目を開けた。
「あ。ああ。由理か。おはよう」
由仁、もといユニは、自室のベットから体を起こしながら言う。
「おはようじゃないけど。このままだと学校に遅刻しちゃうよ?」
淡々と伝える妹に、ユニはごめんと言いながらベッドから降りた。
その時、ユニはある違和感を感じる。
(あれ?おれってこんなに髪短かったか?)
生まれてからずっと、男のはずなのに。
違和感を拭えなかったユニは、改めて自室の鏡に映る自分の母をまじまじと見つめる。
もう飽きる程見た顔だった。
大きく綺麗な赤い目、長いまつ毛。シュッとした線の細い顔に、気持ち長めのクセっ毛でフワフワした明るい茶髪。
頭頂部からは、ひらがなの「つ」と評される大きく太いアホ毛が生えている。
何も変わっていない。
「何ぼーっとしてるの?朝ごはんできてるから、早くリビングに降りて来てよ」
由理に急かされ、ユニは慌てて男子高校生の制服に着替えると、リビングに降りて来た。
ユニと由理、二人に住んでいるにしては広いリビングである。
それもそのはず、元々この家は両親が家族の為に買ったものである。
だが今は、両親は長期外出中でいない。
しかし、それとは関係なく、ユニは広いリビングに物悲しさを感じていた。
「……」
「どうしたの?」
由理が聞く。
幼少期はともかく、成長するにつれて次第に兄とは話さなくなった由理だが、さすがに心配になった様である。
「ああいや別に……」
ユニは朝ごはんのトーストをかじりながら答えた。
「しっかりしてよ?今日から二学期なんだから」
呆れながら由理が言う。
そうである。高校生活最後の夏休みを終え、今日から二学期を迎えるのだ。
先行ってるよと由理は言い残し、登校して行った。
ユニものんびりしている時間はない。ユニは慌ててトーストを頬張り、牛乳で流し込む。
それからしっかりと歯を磨くと、登校用のリュックサックに腕を通して家を出るのであった。
家を出ると、向かいのアパートに住んでいるお姉さんの姿を見た。どうやらゴミ捨てに来たらしい。
たまに道端で会う人である。美人だが、何の仕事をしているのかはわからない。
「えー!?教師の仕事!?アタシそんなのやりたくないっていうか……ほら、免許証もフルビットだしさ」
ゴミを出しながら、電話越しで騒ぐお姉さん。相手は彼氏だろうか。
(彼氏……?)
その言葉の違和感を、ユニは拭いきれなかった。
電話を終え、お姉さんもユニの視線に気づいた様である。
「?何だお前」
「いえ!何でもないです!失礼します!」
ユニは慌ててその場を立ち去った。
そんな事をしているヒマはない。二学期最初から遅刻するわけにはいかないのである。
登校途中に徐氏堂駅前を通る。そこには、もうすでに取り壊された時計台の跡地を表す看板があった。
「この近くで、大昔誰かが死んだのか……」
急いでいるというのに、ユニはやけにそれが気になった。
どうやら100年程前の馬車の事故で、「花鳥風月」という女の子が死んだらしい。
これはその事故と、ちょうど一週間後に起きた関東大震災の慰霊碑だという。
何も知らないはずなのに、なぜかユニはしばらくそこから離れる事ができなかった。
気がついた時には、もうすでに遅刻ギリギリの時間になっていた。
我に帰ったユニは、急いで学校への道を急ぐのであった。
その道中、走るユニの横を高級リムジンが通る。
こんな所に珍しいとユニが思っていると、リムジンの助手席の窓が開いた。
「もしもし?そこの方!」
中から女の子が顔を覗かせた。
「誰だ?」
一旦歩みを止め、ユニが聞く。
そんなユニの反応に、少女は少し残念がりながらも答える。
「わたくしの名前は『火殿どれみ』ですわ。とりあえず乗って下さいませ!急いでいるのでしょう?」
言われるがままに、ユニはリムジンの後部座席に乗る。
リムジンなど乗った事もないはずだが、なぜか初めて乗ったという気がしない。
「『火殿どれみ』っていう名前ならおれでも知ってる」
ユニのその発言に、どれみは少し嬉しそうにする。
「ウチの高校のOBらしいってな。ほらウチの学校有名人多いから」
「そういう認識ですの……」
ユニのどれみに対する認識は、あくまで「母校の有名人」というものに過ぎない。
「いやそれより……わたくしとあなたには、深い深い関係があるのですわ。ほら子供の頃、一回遊んだじゃありませんか」
「昔一回だけ遊んだのを、深い関係とは言わなくないか?」
確かにその通りである。前の座席で、どれみは肩を落とした様であった。
「はい。着きましたわ。『晴夢学園』です」
「やっぱり速いな。どうもありがとうございました!」
ユニは車から降りると、しっかりお辞儀をして学校へと走り去っていった。
「昔一度遊んだ……決してそれだけの関係ではないのですが……」
走り去るユニの背中を見ながら、どれみはそう呟くのであった。
一方、急いで校舎内に入ったユニは、自分の教室を目指す。
しかし途中で、「予算が足りない!」と叫ぶ少女を発見した。
制服の上から科学者が着る様な白衣を身に纏っているので、否応にも目立つ。
「くそォ……一体どうしようかのう……『エリー』」
自分のスマホに話しかけている少女。この少女も学校の有名人である。確か名前は……。
「『忌部紫音』」
学年が違うのでほとんど接点はないはずだが、なぜだか名前がスッと出た。
「?何じゃお前は」
ユニの存在に、紫音も気づいた様である。
「いや何か……初めて会った気がしなくて……」
そうユニが言うと、紫音の方もうーむと唸りながらこう答える。
「奇遇じゃな。わしもお前に対してなぜか初めましてっていう感情が沸かない。不思議じゃ……」
「それはそうと、キミも教室行かなくていいのか?」
ユニが聞くと、紫音もハッとする。
「そうじゃった!行くぞ『エリー』!」
(エリー?)
その名前にも、どこか聞き覚えがある。
「その『エリー』ってさ!一体何なの!?」
ユニは、もうすでに遠くへ行ってしまった紫音に聞く。
「『エリー』ってのは!わしが開発した人工知能じゃ!この前人工知能『APES』の実験が失敗して!新たに作ったんじゃ!」
遠くから、紫音が叫びながら教えてくれた。
(APES……!?)
その名前にも、ユニにはどこか覚えがある。
しかし考えていてもわからなかったので、とりあえずユニは急いで教室へと向かうのであった。
教室へ入ろうとしたその時、ユニを呼び止める声がした。
「ちょっと止まーれ!」
その声は……!
「何だ生徒会長か……」
ユニを呼び止めたのは、この学校の生徒会長である緑山アキだった。
「廊下は走るなと言うだろう。ルールを守らないのは『悪』だぞ」
この様に、美人だが言い方がキツいのでクラスでは敬遠されている存在である。
「そうだな。ごめん」
ユニは謝りつつも、拭いきれない違和感を感じていた。
「この子、こんな子だったっけ?」
何がともあれ、どうにか時間内に登校できたユニ。また再び、いつもと変わらない日常が始まるのだった。
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