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契約その232 答えよ正解!quiz大会!

 休憩が終わり、現場は撮影へと戻っていった。一回戦はクイズ大会である。


「ただのクイズ大会じゃありませんよ!」


 司会の高橋が威勢よく言う。


 彼の説明を要約すると、出された問題に早押しで答えるのは普通のクイズ番組と同じである。


 しかし、普通と違うのは、ボタンを押す者と回答者が異なる所である。


 つまり、ボタンを押す者には、メンバーがどのクイズに答えられるかをよく吟味する必要があるわけである。


「不正解だと−1ポイントですからね!気をつけてくださいよ!」


 高橋が念を押した。


 チーム内で誰がボタンを押すのかについての話し合いが始まる。


 ユニ達のチームからはルアが選ばれた。


「さて、出揃いましたかね!では初めていきましょう!第一問!」


 最初の第一問を、ユニ達は固唾を飲んで待つ。


「小倉百人一首からの出題です。『かささぎの 渡せる橋に置く霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける』誰の歌でしょうか!」


 ピンポン!


 押したのはルアである。


「J'Sチーム!早かった!誰を回答者にしますか!?」


「ユニでお願いします」


 高橋の質問に、ルアはそう答えた。妥当な判断である。


「ではユニ!答えをどうぞ!」


 当然ユニには答えはわかっていた。


「大伴家持。万葉集の撰者です」


「正解!」


 J'Sチームに1点が入った。


「いやー瞬殺でしたね」


 ユニに話を振る高橋。


「そうですね。百人一首には興味があったので!」


 スラスラと答えるユニ。「目指せトップアイドル!必勝マニュアル(作 ルア)」が役に立った。


 その後もクイズの調子は快調だった。


「夏目漱石の遺作は!?」


「『明暗』!」


「本能寺の変が起こった日は!?」


「西暦1582年6月21日!」


「天動説を最初に提唱したのは!?」


「プトレマイオス!」


「いやーユニ!強いですねー!」


 高橋が本当に感心した様に言うのであった。


 ユニは、模試で全国一位を取る天才である。アイドルに負ける道理はない。


 普通にやればユニ擁する「J'S」のぶっちぎりの優勝なのは間違いないが、解答権を操っているのはルアである。


 時にアゲハやモミ、ミズキにも答えさせて見せ場を使った上で、適度に他のチームにも答えさせる事で接戦を演じた。


 なので実際にこの場を支配していたのはルアだった。


「あまりあなたに暴れさせても番組的につまらないでしょ?だから適度に答えさせる事にするよ」


 本番前、ルアが語った事である。


 ルアが厳しい芸能界で生きていけるのは、ビジュアルに歌にダンスの才能もあるが、何より「周りを見る力」にあると、ユニは確信したのであった。


 しかし、面白くないのは他のチームである。答えさせて()()()()()()()状況は、彼女達にとって耐えがたい事だった。


 無論、チームバロネスのリーダー、「KURUMI(くるみ)もそうである。


「絶対に許さない……」


 ユニは、そんな彼女達の殺気に気づき、警戒を強めるのであった。


 クイズ大会の結果は、「J'S」がかろうじて首位を走る形になった。


 次の競技はかなり大掛かりらしく、故に準備が必要との事だった。


 ユニ達は、一度用意された楽屋へ行き、そこで休憩を取る事になった。


 部屋には「J'Sの皆さん」と書かれており、すぐにわかった。


 部屋はパイプイスと長机、ウォーターサーバーや観葉植物が置いてある簡素なものだった。


 水着から着替えたユニ達は、その楽屋に意気揚々と入る。


「ん?何これ」


 部屋に入ったルアが真っ先に気づいたのは、一本のペットボトルだった。


 何の変哲もない、普通の市販のペットボトルである。


 ただ、そばには「ルア様へ スタッフより」と書かれたメッセージカードが添えられていた。


「つまり、差し入れって事?」


 そう思ったルアは、ペットボトルを開けて中の水を飲もうとする。


 その時だった。



「ダメだ!やめろルア!」


 何かを察知したユニは、ルアの手からそのペットボトルを弾く。


 ペットボトルは、そのまま落ちて、床を濡らした。


「ど……どうしたの一体!?」


 ユニの行動に驚くルア。


「そのペットボトル、臭いが変だった」


 水害の一件以降、自分が悪魔との契約で生み出された存在である事を認識したユニは、人智を超えた感覚を手に入れていた。


 常人が認知できないニオイをも、ユニは知覚する事ができるのである。


「一度エリーに頼んで調べて貰おう」


 ユニはそう言うと、自分のスマホでエリーを呼ぶのであった。


 しばらくして、エリーがやってきた。


 部外者であるはずのエリーが来れた理由は、スタッフの服を写しとって自分にある種の「迷彩』として施したのである。


 そんなエリーは、何と直接そのペットボトルの水を飲み、成分を解析する。


 ちなみに今回紫音がいないのは、ハワイへ向けての発明品作りで忙しいからだ。


「解析が終わりました。毒ですね。死ぬわけではありませんが、摂取すると発熱と頭痛と腹痛と下痢を同時に引き起こします」


「えー!何かヤバそうな感じ……!」


 アゲハがうげーっという様な顔をしながら言う。


「はい。ヤバいのは確かですが、もっとヤバいのは、この毒は知識と材料があれば素人にも製造可能という点です。その材料も100円ショップで売っている程度のもので揃えられます」


「じゃあ誰が作ったのかわからないって事?」


 ミズキが聞く。


「はい。残念ながら……」


 エリーは首をすくめながら言う。


 それに対して、ユニがこう指摘する。


「その毒の作り方を教えている動画みたいなのはネット上にないか?あればそれを最近試聴したアカウントがわかるはずだ」


 そのアカウントの持ち主が、今回の犯人である可能性が高いというのが、ユニの持論である。


「はい。検索します」


 エリーは、自分の電子頭脳を常にネット上にアクセスしている。


 なので、その場にいながらにしてネット上で検索をかけられるのである。


 その検索はすぐに終わった。


「検索の結果、三つの動画がヒットしました。そのうちの一つに最近試聴した履歴が残っています」


「そのアカウントは何だ!?」


 ユニは詰め寄る。


「それは……」


 それを聞いたユニ達は、驚く事になる。


「『くるみ』というアカウントです」


「『くるみ』……」


 確か「チームバロネス」のリーダーのアイドルである。


「そうかそいつが……」


 こうしちゃいられないと走り出そうとするユニを、ルアが必死に止めた。


「何で止めんだ!」


「落ち着いて!私は大丈夫だから……!」


 当人が落ち着いているのを見て、ユニもようやく落ち着いた。


「この業界はね、闇が深いんだ。表では笑顔で接していても、見えない所では足を蹴り合ってる。そんな業界なの」


 ルアはゆっくりと顔を上げて言う。


「私は、この『アイドル甲子園』を成功させたい。だからその為に、力を貸してくれないかな……?」


「……」


 そう言われては、ユニは協力せざるを得なかった。


「わかった。協力する。キミの身は必ずおれが絶対守るから……」


 そして熱い抱擁を交わす二人だった。


 芸能界の、そして女の嫉妬が渦巻く「アイドル甲子園」は、まだ始まったばかりだった。


 悪魔との契約条項 第二百三十二条

悪魔との契約の元に生まれた子供には、悪魔の感覚が備わっている。

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