契約その216 ユニ達のevacuation life!
峠は越したとはいえ、雨はまだ降り続いていた。
ユニ達はボランティアとして、救援物資の搬入や子供の世話などを担当していたのだった。
「あらよっと!このダンボールを全部持っていけばいいんですか?」
「まあ確かにそうだけど……持てるんですか!?」
ボランティアの青年が、ルーシーの怪力に驚愕する。
「当然!悪魔にとっちゃこれぐらいは余裕ですよ!」
ルーシーはそう言うと、一気に十個ものダンボールを片手で持ち上げ、運んだ。
雨の勢いが一旦落ち着いた事で、市内の被害状況がだんだんと明らかになってきた。
死者は徐氏堂市の中だけで二十五人、そして行方不明者は六人、浸水家屋はは百棟にも達していた。
「今からでも復旧作業を始めないといけませんわ!」
どれみはそう言って、火殿グループ幹部に混じって復興計画会議に参加している様である。
復興会議は学校の教室を間借りして行われていた。
「まずは被害の大きかった地域から……予算は……」
火殿グループの中でもとりわけ優秀な人材が揃っている為か、ほぼ滞りなく決まっていった。
復興については彼らに任せておけばいいだろう。
ユニもまた、救援物資の搬入に駆り出される。
「えっと、これが食料、これが衣類、そしてこれが生理用品で……」
濡れない様にきちんとラップを巻かれた救援物資を前に、ユニは救援物資の数を数えていく。
「これだけあるのか。感謝だな」
そんなユニに、アゲハが話しかけてきた。
「あ!ユニち!いたいた!これからタキダシするらしいからさ、手伝って欲しいって由理ちゃんが!」
「わかった。今行くよ」
校庭には、すでに長蛇の列ができていた。
雨も小雨になり、外に出る分には問題ないと言える。
炊き出しのメニューは豚汁である。
テントの下に、学校の給食で使う様な鍋が何個か並べられていた。
傍には、お椀と箸が並べられている。
そこに、ユニはアゲハに連れられてやって来た。
「あ!姉さん。よかった。こっちのお鍋を担当してくれる?お椀に注ぐぐらいできるでしょ」
由理は、自分の左隣の鍋を指差しながら言った。
準備ができたので、ようやく炊き出しが始まる。
「傘を差すか、屋内に入ってから食べてください!」
由理の呼びかけに従い、豚汁を受け取った避難民達は、続々と校舎の中に入っていった。
「それにしても多いな。誰が作ったの?」
ユニは豚汁をお椀に注ぎながら、由理に聞いた。
「私と……それと近所のおばさん達と……」
指折り数えながら教えてくれた。
「それで短時間でこんな量をか。さすがだな」
ユニが褒めると、えへへ……と由理は照れるのだった。
一方で、現地視察を始めたどれみ達火殿グループ。
その被害は想像以上のものだった。
まず目に……もとい鼻につくのは辺りからする悪臭である。下水道が逆流した事で、そうした生活排水が溢れ出たのである。
マスク越しにもする悪臭に、どれみは思わず自分の鼻を塞いだ。
「まず重要なのは疫病の防止、市内全域の消毒を重点的にやりましょう」
ある火殿グループ幹部が言った。
「では紫音さんに開発を頼みましょう。短期間で市内を消毒できる装置というものを」
そのどれみの提案は、どれみがまだ若いのもあってか採用されなかった。
だがとりあえず、今後の課題が見つかったので、どれみ達は学校へと戻っていくのだった。
一方学校では、ようやく豚汁の炊き出しが終わったアゲハに、メイが何かを頼んでいた。
「頼むよ。キミの力が必要なんだ。この状況、『幻夢めいと』として役に立ちたいんだ」
そんなメイの申し出を、アゲハは快くOKした。
「すでに事務所の方に話はつけてるから……あとは……」
その会話を聞いていたユニは、全てを察するのであった。
曇天の中、「幻夢めいと」の実写実況がスタートした。
「みんなー!元気にしてますかー!チャリティー実況を始めるよー!」
めいとは、あえていつもと変わらないテンションで実況を始めた。
実況と言っても、今回はゲームではない。避難者達のリアルな声を実況していくのである。
なお、当然だが顔出しや声出しをOKしてくれる人に限られている。
「あと!この動画の収益とスパチャは全て!ここの自治体に寄付されます!どしどし送れよー!」
こうして、「幻夢めいと」によるチャリティー実況が幕を開けたのだった。
一方、ルアもまた「J'S」のメンバーを集めたチャリティーライブを開催した。
アイドルとVライバー、二人のスターの行動は、疲れた人々の心を癒し、学校には和やかな雰囲気が流れていた。
実況とライブが終わろうとしていた時、今まで降っていた雨がだんだんと止み始めた。
そして分厚い雲に覆われていた空から、パーっと光が差してきた。
もうしばらく拝めていなかった、自然光だった。
それを見逃さず、ルアが言う。
「ほら!よく言うでしょ!」
それを受けて、「幻夢めいと」も言う。
「『やまない雨はない』ってさ!」
それは即興のコラボレーションだった。
今まで散々牙を剥いてきた天候を味方につけた二人のスター達。
その姿に人々は大いに熱狂したのだった。
久しぶりの陽の光が、これから復興していく人々を、明るく照らしていた。
悪魔との契約条項 第二百十六条
本当のスターには、全てが味方する。
読んで下さりありがとうございます。
いいね、感想などをよろしくお願い致します。




