契約その215 Evacueesを救え!
非情にも、雨足はどんどん強くなっていった。
(大丈夫かな、みんな……)
避難してきた子供の世話をしながら、ユニは思う。
いざという時には避難所をこっちへ移動する可能性もあるだろう。
結局の所、学校が避難先として一番有力だからである。
そして、その「いざという時」は、すぐにやって来るのだった。
学校の体育館に来ていた自衛隊員の男が、その場にいる避難民に呼びかける。
「えー皆さん、これから我々は孤立している地域の救出へ向かうので、スペースがせまくなる可能性がありますがご了承下さい」
急に騒がしくなる屋内。
「孤立している地域ってどこなんだ?」
ユニは自分のスマホでその地域を確認する。
その瞬間、ユニは青ざめた。
「ウチがその地域に含まれてるな……神社もだ」
火殿グループ開発のハザードマップで、孤立地域はすぐにわかる。
地図では、瀬楠家や把羅神社の場所が赤く表示されていた。そこが孤立地域という事である。
高台にあるので震災被害はないが、その分道路が冠水して動けなくなっているのである。
「……」
ユニは突然レインコートを着出した。
「何をする気!?まさかあなた……」
ルアが呼び止める。
「紫音!ホバーボードは使えるか!?」
レインコートを着ながらユニは聞く。
「使えはするがこの雨じゃ、安全は保証できないぞ!それに燃料の水だって……」
「水ならその辺に、イヤという程あるだろ!」
確かに以前はコーラでも動かせた。雨水でも動かす事は可能である。
だがそれでも紫音、いやみんなにはユニに行かせてはならない理由があったのである。
「行けるかどうかの問題じゃない!わし達は……行って欲しくないんじゃ!」
「!!」
紫音の叫びに、ユニは動揺する。
「紫音さん、ユニさんはそれで止まる人間でない事はもうわかっているでしょう」
どれみが紫音の肩を叩きながら言う。
「ですが、それはそれです。やはりわたくしもユニさんには行って欲しくありません」
どれみはそう言った上で、自分の胸を叩きながら言う。
「だからせめて、火殿グループのヘリコプターを使いましょう。その方が、ユニさんも、避難民の方々も、全員が安全ですから」
「どれみ……」
ユニは頭を下げてこう言う。
「……っすまない」
「そうとわかればヘリコプターの準備です。自衛隊の皆さんとも協力し、避難民の方々を救い出しましょう」
そう言うと、どれみは早速ヘリコプターの準備をする為に電話をかけだしたのだった。
一方、瀬楠家にミズキが戻ってきて言う。
「どうやらここの地域が孤立しているらしいよ。自衛隊が救助しにくるみたい」
「本当?」
由理が聞き返す。
「うん。それと火殿グループもね。神社組もそれに備えて荷物の準備をやってるから、そっちも準備しておいた方がいいよ」
と言っても、瀬楠家に残っているのは由理と風月だけである。
準備するものはあまりなかった。
「じゃあ私達も神社の方に移動してもいい?」
由理の申し出を、ミズキは一つの場所にいた方がいいだろうからと快諾するのだった。
一方の学校側も、いよいよヘリコプターの準備ができた。
「お嬢様、こんな女の子を連れていくのですか?」
火殿グループの救助部隊のうちの一人が、ユニを連れて行く事に難色を示した。
「強さは百人力ですから。特に今の状況だと尚更」
ユニは、彼女達の危険を知っていても立ってもいられなくなっていた。
そろそろ限界なのである。
「さあさ、行きましょう」
救助部隊を急かす様にして、どれみ達はヘリコプターへと乗り込む。
「絶対に帰ってきて!」
学校に残るみんなの声を背に受け、ユニはグッとサムズアップして見せるのであった。
避難民を助けるべく、ヘリコプターは曇天の空へと飛び去っていった。
「境内ならそこそこの広さがあります。着陸するならそこだと思います」
ユニの提案により、ヘリコプターはそこを目指していく。
程なくして、下に把羅神社が見えてきた。
不幸中の幸いというべきか、境内は高台という立地によって冠水には至っていない。
その境内に、けたたましい音を出しながらヘリコプターが着陸した。
ヘリコプターの扉が開いた瞬間、ユニはすごいスピードで外へと飛び出した。
「みんなーっ!無事かーっ!」
叫ぶユニ。
その声を聞いたからか、神社の離れのドアが開き、中からミズキが出てきた。
「ミズキ!」
その姿を見たユニは思わず駆け寄った。
「無事だったんだな。よかった。みんなも無事?」
そんなユニに対し、ミズキは大きく頷きながら言う。
「うん。お陰様でね。家に残ってた二人もこっちに来たんだ」
「そうか、それはよかった。学校でみんな待ってるから……」
ユニは離れの中に入ってみんなの無事を確認する。
その後、どれみがその場にいる全員に呼びかける。
「今から晴夢学園に行きます!まずは子供と高齢者の方から!何回か往復して全員を送り届けますわ!」
それを聞いた避難者の中で、安堵した空気が流れるのだった。
せまい境内では、ヘリコプター一台が着陸するのがやっとである。
火殿グループは、消防や自衛隊とも協力して何とか全員を学校へ送り届ける事に成功した。
そして最後がユニ達である。
ユニ達を乗せたヘリコプターは把羅神社を離陸、どうにか学校へ辿り着くのだった。
学校では、残っていた彼女達が待っていた。
「よかった!無事だった!」
合流したユニ達は、お互いに抱擁を交わし合う。
離れていたのは数時間程だったのだが、もう何日も会ってない様な気がしていた。
そんなユニ達に、丁井先生が言う。
「みんな、再会を喜ぶ気持ちはわかるけど、キミ達はボランティアだ。手伝って欲しい事が山程あるからな」
それを聞いたユニ達は、慌てて校内に入るのだった。
ようやく全員揃ったユニ達。本格的な避難生活が幕を開ける。
だが雨足は、ピークを超えてやや落ち着いた様だった。
悪魔との契約条項 第二百十五条
人を助け出せるのは、人である。
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