契約その214 戦慄のcatastrophe!
まもなくヘリコプターは、晴夢学園上空に着いた。
しかしずっとホバリングをしていて、中々着陸しない。
「はい、携帯食料が100食程、飲料水も同様で、あと……」
学校へ向かうヘリコプターの中で、丁井先生は学校と連絡を取っていた。
クラス全員の安否がわかった事、そしてその過程で火殿グループの協力を得られた事を伝えているのである。
その一方、どれみも先程からスマホでどこかと連絡を取っていた。
内容は救援物資の手配についてらしく、さっきからどれみの謝る声が聞こえてくる。
電話が終わったらしく、丁井先生がみんなの方を振り向いて言う。
「みんな、校庭に着陸するぞ。地上で準備してくれるみたいだ」
ようやく着陸の目処が立った。どうやらホバリングしていたのは、どこに着陸すればいいのか決めかねていたかららしい。
着陸に備え、ユニ達はレインコートをしっかり着る。
ヘリコプターは轟音を立てながらゆっくりと校庭に降り立つのだった。
「な……何とか着いた……」
「いや、ここからだぞ。気合い入れ直せ!」
疲れが出たヒナに、アキが言う。
「そ、そうか!疲れてるヒマなんてないもんね!」
アキに言われた通り、ヒナは気合を入れ直すのだった。
ヘリコプターから降り、ユニ達はようやく地面に降り立った。
場所が全体が土になっている校庭という事もあり、地面はぬかるんでドロドロになってしまっているが。
雨は一向に止む気配がない。昼間なのに数メートル先が見えない程だ。
そんな中、慌てて走ってくる男がいた。
「いやーすみません」
晴夢学園の校長である。
彼もまたレインコートを着ているが、雨のせいで顔がびしょ濡れになっていた。
「救援物資の提供、ありがとうございます」
校長は一応顔を拭ってどれみにお礼を言う。しかし、拭った直後からまた雨が打ちつけるのであまり意味がない。
「まだ第二陣、第三陣とヘリコプターが来ます。校庭をヘリポート代わりに使ってもよろしいでしょうか?」
どれみの提案に、校長は非常事態という事で快くOKを出した。
その後、ヘリに詰め込んだ救援物資が続々と校舎内に運び入れられていった。
それに伴い、ユニ達が乗ってきたヘリが簡易的な医療施設として開放されるのだった。
「じゃあおれ達は各自分かれて各教室に救援物資を届けに行くか」
ユニが言う。
これからどんどん救援物資が入ってくるのである。
どんどん入れてしまわないと校庭が埋まってしまう。
そして救援物資には上に濡れ防止のラップが巻かれているとはいえ、染み出して濡れてしまう可能性もある。
早めに屋内に搬入するに越した事はないだろう。
ユニ達は手分けして救援物資を運んでいくのだった。
雨足はどんどんと強くなっていく。
政府は数時間前から関東地方全域に大雨洪水警報を発令、さらに緊急対策本部を設置し、災害に備えていた。
そしてその猛威を肌で体験する事になるのは、やはり現地住民であった。
把羅神社も、その猛威をダイレクトに体験した場所の一つである。
「これで大丈夫かな」
ミズキがリュックサックを下ろしながら言った。
「いや、これじゃまだ足りないと思う」
藤香が言う。
確かに数人分のリュックサックいっぱいに詰め込んだ所で、その量はたかが知れている。
「じゃあ一旦家に戻って補給するしかないって事か……」
「それでも、家にないものだってあるでしょ?ほら、オムツとか」
アゲハが言う。
「この前私達が子供になった時(契約その116参照)に買ってたオムツはあるけど……それだけじゃ絶対足りないもんねえ……」
七海がうーんと唸りながら言う。
あの時は念の為に買っておいたが、結局誰も使わなかったのでそのままになっていたのである。
しかしその程度では明らかに足りない。
「どれみちゃんに連絡してどうにかして貰おうよ。ほら、ニュースでも火殿グループが災害救援に入ったって言ってるし」
アゲハが見せたネットニュースには、確かにその旨が書いてあった。
「じゃあ足りない分はそれでどうにかしようか」
ミズキが言った。
その後、ミズキ達は交互に物資の搬入を行い、火殿グループの協力も得る形で、どうにか乗り切る目処が着く様になった。
ボランティアとしてミズキ達があくせく働く中、つけていたテレビが土砂災害を報道していた。
「ど……土砂災害か……」
「これ本当に大丈夫なの?」
避難民の恐怖も、また募っていく。
それは瀬楠家に残った者達も同様であった。
「どう?落ち着いた?」
由理が、ガタガタ震えていた風月に聞く。
「な……何とか……でも、まだ足がすくみますね……」
無理もない。彼女にとって、関東大震災からまだ1年も経ってないのだ。
その状況でまた大きな災害に出くわしたとなれば、確かに足もすくむというものである。
「私は……皆さんに迷惑をかけてしまってます。何か手伝わなければ……」
風月はよろりと立ち上がると、外に出ようとする。
「ダメ!今外に出ちゃ!ここは高台で、近くに崖もない!ここが一番安全なの!」
由理が制止する。
「だから、私達はここでみんなを待つ。それでいいの」
由理はそう言うと、風月をしっかりと抱きしめるのだった。
その言葉に、風月は落ち着きを取り戻したのか、そのまま眠ってしまった。
「お願い……姉さん……みんな……無事に帰って来て……」
その由理の思いも裏腹に、さらに雨足が強くなっていく。
後の世に「徐氏堂市最大の災害」と言われるこの大雨だが、それはまだ、始まったばかりである。
悪魔との契約条項 第二百十四条
「助け合い」は、何より大事である。
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