契約その201 Robot girlとの初デート!
エリーが誕生した5月10日は金曜日である。なので初デートは明日にしようとユニは提案するのだった。
その提案を紫音も賛成したので、その翌日に初デートが行われる事になったのである。
「それじゃあ行ってくるよ」
二人はアゲハが選んでくれたデート服を着て、デートへ出かけようとする。
「ちょっと待ってよ!」
二人を引き留めるルーシー。
何で止めるんだと言うユニに、ルーシーが言う。
「昨日のなぞなぞの答え!お前まだ言ってないだろ!あれが気になって、おれ夜も眠れなかったんだから」
「そうだな。答えは『カステラ』だ。『寺』を『貸す』から」
ユニはそう言い残すと、デートへ出かけるのであった。
「えっ……くだらな……」と言うルーシーの言葉を背に受けながら。
「しかし、ユニがいるとはいえ心配じゃな」
出かけていく二人の背を見送りながら紫音が呟く。
「じゃあどうするんだ」
ルーシーが聞くと、紫音は自分のパソコン(自作)を取り出す。
「エリーの目はカメラ、耳はスピーカーになっていてな、その情報をこのパソコンで得る事ができるんじゃ」
「それってつまり姉さん達を監視するって事じゃ……」
由理は訝しむが、紫音曰くユニにも事前にその事は伝えているのだという。
早速紫音達は、二人のデートの様子を観察し始めるのだった。
隣を歩きながら、ユニはエリーに聞く。
「ねェエリー。今回のデートはあえてノープランで来たんだけどさ、キミにはどこ行きたいとかないのかな」
「ございません」
即答するエリー。
「ですがおすすめのデートスポットなら1076通りあります。どこに致しますか?」
無機質に聞くエリー。
「えっとそれじゃあ……カフェにでも行こうか」
「カフェですね。最寄りにするか、あるいは高評価がつけられた店か、その他様々な絞り込み検索ができます」
「じゃ……じゃあ最寄りで……」
「かしこまりました。では行きましょう」
そのままきれいな姿勢でカフェへと向かうエリーを、ユニは慌てて追いかけるのであった。
「本当に大丈夫なんですかこれ。ユニさんすら圧倒されている感じがしますけれど」
これまでの様子を見ていたみすかが呆れながら言う。
「まだわからん。あくまで『実験』じゃからな。失敗する事もある」
紫音はそう言いながらパソコンの画面を注視するのであった。
最寄りである駅前のカフェに入った二人は、店員に案内されて奥のテーブル席に座った。
座ったユニは、エリーにどれみからの伝言を伝える。
「今回のデート予算は紫音……いやスポンサーの火殿グループから出てるから、遠慮せずに使っていいってさ」
「はい。ありがとうございます」
やはり無機質にお礼を言うエリーであった。
「これで本当に大丈夫なの?」
様子を見ていたヒナが言う。
そんなヒナに、紫音は大きく頷きながらこう言う。
「実験的に大丈夫じゃ。『シンギュラリティ』の実験も兼ねておるからな」
「真珠リアリティ?」
アゲハがトンチンカンな言葉を聞き返す。
「違う違う。シンギュラリティというのは、技術的特異点の事じゃ」
「……?……??」
「技術的特異点」という今までの人生で聞いた事ない言葉が出てきたので、みんなの脳裏にクエスチョンマークが飛び交い、それで部屋が埋め尽くされそうになる。
理解されてないとわかった紫音は、一から解説する事にした。
「まず第一に、人工知能とは様々な情報を手に入れ、どんどん成長していくものなんじゃ」
紫音は、そこで例を挙げる。
「例えば、スマホに搭載されているAIなんかは、使用者の検索履歴を学習して予測変換を出したりするじゃろう」
ルーシー達にとって、わかる様なわからない様な話である。
「うん、それで?」
本当にわかっているのかと紫音は思ったが、構わず続けた。
「そして『シンギュラリティ』というのは、その学びが蓄積されていった結果我々の知能を超える事を意味する」
「要するに、人工知能が勉強してめちゃくちゃ頭がよくなるって事か?」
ルーシーの知性のない質問に、紫音は微妙そうな顔をしながらもそうじゃと頷く。
「つまり愛や感情を学べば、人工知能が感情を表現できる様になるかも知れないというのが今回の仮説じゃ」
紫音は腕組みしながら呟く。
「AIが感情を持つ事が、一体人類に何をもたらすのか……。このデートの目的の一つはそれじゃ。だからこれでいいのじゃ」
やはりルーシー達にはよくわからなかったが、とにかくすごい事をしている事はわかった。
みんなは、改めてユニ達の動向を注視するのであった。
ユニは、エリーに今まで気になっていた事を聞く。
「そういえば、食べ物とか食べて大丈夫なの?機械的には」
「大丈夫です。わたくしは食物からエネルギーを取り出す機能がついております。なので食事は可能です」
やはり無機質に答えるエリー。
「そうか。それはよかったよ。食事取った事でキミの身に大変な事が起きたらと考えたらさ、おれ悲しいから」
ニコッと笑いかけながらユニは言う。
「……?」
それをキョトンとしながら聞いていたエリー。彼女の中で何かが揺れ動いていた。
紫音の言う「シンギュラリティ」は、もうすぐそこまで迫っているのかも知れない。
悪魔との契約条項 第二百一条
愛を学ぶ事で、人工知能も感情を得る事ができるかも知れない。
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