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契約その200 誕生!新heroine!

 ゴールデンウィークも終わった5月10日。紫音は、この日を新しい彼女の誕生日と決めた。


 全員をリビングに集め、ソファーに座った紫音は話し始める。


「わしはかねてから『最強のAI』を作ろうとしていたんじゃ。そこでわしが構想したのが『APES』じゃな」


 しかし、紫音やIIO、火殿グループや財亜グループに悪魔の力まで借りた「APES」は失敗した。


「人類の完全な平和」を自らが支配する事で成し遂げようとした「APES」は、ユニ達の「愛の力」の前に敗れたのである。


 紫音はおもむろにソファーから立ち上がるとさらに話を続けた。


「そこからじゃ。AIに『愛の力』を学ばせようと思い立ったのは。わしらと同様にユニと恋人関係になり、愛を学ばせる」


 それこそが真の「最強AI」であると、紫音は言った。


「そしてわしは、AIを搭載した恋人ロボットを開発したんじゃ」


 紫音はスマホを取り出すと、何やら画面を操作してから言う。


「Educate on Lover Laudably In Equipment(賞賛的な恋愛修得装置)、頭文字を取ってその名もEllie(エリー)じゃ!」


 すると、リビングのドアがゆっくり開き、女の子が中に入ってきた。


 外見年齢で言えば、ユニ達とそう変わらないだろう。ただ少し違う所は、クラシカルなメイド服を着ている事である。


「ではエリー、みんなに自己紹介をしてくれ」


「かしこまりました」


 紫音の指示に、エリーは軽く会釈してから話し始める。


「皆様、初めまして。エリーと申します。製造日は今日の5月10日、これからよろしくお願い致します」


 やや無機質だが、人間とも遜色ない話し方である。


「確かにすごいとは思うけど、何でメイド服なんだ?」


 ユニは、みんなの質問を代弁する形で言う。


「それは……」


「わたくしから説明させていただきます。わざわざマスターのお手を煩わせる事はございません」


 エリーは紫音の言葉を遮ってまで説明をし始めた。


「この家の同居人が増える中、マスターは由理さんに家事を任せきりであるという現実に心を痛めていました」


「それはまあ……確かに……」


 ユニ達は肩をすくめて反省した。


「だからメイド服なんじゃ。家事を手伝う為にな」


 紫音が言う。


 成程そういう事か……とユニ達は妙に納得した。


 ユニは、エリーの姿をまじまじと見つめながら言う。


「それにしてもすごいな……。人間と遜色ない。『不気味の谷現象』もないみたいだ」


「不気味の谷現象」とは、ロボットなどが人間に近づきすぎると逆に嫌悪感が増すという現象の事である。


 それがないのは、人間と見紛う程に精巧に作られているからだ。


「人間社会において必要となる基本的な常識は持ち合わせているが、それ以外は周囲の人間が教授する事で成長していく」


 長期的に段階を踏んでいく事で、「最強AI」を創造していこうというのが紫音のプロジェクトというわけである。


 結論を急ぎすぎた「APES」の失敗を踏まえた結果らしい。


「じゃあ私達でこの子を育てるって事?」


 由理が聞く。


 それに対して、紫音は大きく頷いたのだった。


「人間並の読解力と理解力、思考力を持ってるから、学んだ事はどんどん吸収していくぞ」


 試しに何かクイズを出してみてくれと紫音が言ったので、ユニはあるなぞなぞを出す事にした。


「お寺をレンタルすると食べられる食べ物って何だ?」


「お寺を……レンタル……?」


 エリーだけでなく、他のヒロイン達も首を傾げて考えていた。


「うう……わかりません……」


 エリーも腕を組んで必死に考える。心なしか頭から煙が上がっている様だ。


「わからない……わからない……わからわからわからわからわからわからわからわからわからわからわけらわからわから」


 するとエリーの頭がボンと小さな爆発を起こす。


「イートーマキマキイートーマキマキヒーテヒーテトントントン!イートーマキマキイートーマキマキヒーテヒーテ……」


「わー!なにが起きたんだ!?」


 突然狂った様に歌い踊り出したエリーに、驚くユニ達。


「人工頭脳のキャパシティを超えてバグってしまった様じゃ!」


 さすがになぞなぞは厳しかったかと紫音は言い、慌ててスマホの緊急停止ボタンを押した。


 すると、今まで踊り狂っていたエリーは気をつけのポーズをすると、そのままのポーズで後ろに倒れたのだった。


 倒れる直前、ユニが咄嗟に下に座布団を敷いた事で壊れずに済んだ。


「直るかな」


 ユニが聞く。


「大丈夫じゃ。この程度なら中身の回路を入れ替えれば……」


 紫音はそう言うと、エリーの頭の上部分をパカっと開き、脳の様なものを取り出した。


 あまりに猟奇的なので、丁井先生が年少者達の目を抑えて見えない様にしてくれた。


「予備の回路を繋げて……よしできた」


 紫音は早速エリーを起動した。


 起動したエリーは、そのまま体を九十度起こすと、そのままスックと立ち上がりこう言った。


「ほなうちの名ァはエリーっちゅーさかい。よろしゅーな」


「今度はわけわからない方言喋り出した!」


 ユニ達は驚く。


「『隠しコマンド』触ってしまったか……」


 紫音はそうぼやくと、また停止ボタンを押し、また脳を弄り出したのであった。


「遅くなりそうだから、しばらく待っててくれ」


 紫音はみんなにそう言うと、動かなくなったエリーを引っ張って自室へと持っていくのであった。


 ―――それから数分後。


「よし直った」


 気を取り直して、紫音はみんなの前で再びエリーを起動するのであった。


「マスター、皆さん、おはようございます」


「よかった。戻った様じゃ」


 紫音がほっと一息ついた。


「さてと……」


 一息入れた紫音は、ユニの方に向き直ってこう言った。


「そこで、一つ依頼なんじゃが……。早速このエリーとデートしてくれないか?」


「デ……デート!?」


 ユニは驚く。


「ロボットと人間のデート……上手くいくのか?」


 ルーシーは訝しむのだった。


 悪魔との契約条項 第二百条

愛の力は、無限大である。

読んで下さりありがとうございます。

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