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契約その198 Golden weekは何をする?(前編)

 四月も終わりを迎えて時期は五月、ゴールデンウィークの時期になった。


「行楽シーズンになって、遊園地とかのチラシが多くなってきたな。今年はどこか行かないのかな」


 ユニは、郵便ポストに入れられていたチラシを見ながら呟いた。


 家の中に戻ると、ルーシーがすでに朝食のパンを食べていた。


 ユニはそんなルーシーに、ゴールデンウィーク中の予定について聞いてみた。


「えーおれかー……特にないな……たまに買い物に出かけるぐらいだと思う」


 ルーシーはそう言い残すとそそくさと自室へと戻っていき、ユニはその姿を見送ったのだった。


 そんな中、ルアが階段を降りてくる。


「あ、おはよう」


「うん。おはよう」


 ルアはそう返すと、朝食の食パンにチーズを乗せてトースターで焼いた。


「仕事?」


 ユニが聞いた。


「うん。ゴールデンウィーク中はね。修学旅行出れる代わりに今頑張らないと」


 パンをテーブルに持ってきたルアは、自分の手帳をユニに見せる。


 午前十時からグラビア撮影、その後で歌番組の収録、さらにバラエティ番組への出演。その合間に新曲のレッスンを行う。


 殺人的なスケジュールである。


「いざという時は『アル』を呼び寄せるからいいよ」


 パンを食べながらルアが言う。


 別人格である『アル』とは記憶や経験を共有できる。


『アル』が出ている時に仮眠を取れば、精神は休ませる事はできるとの事である。


「でもどの道肉体は絶えず動いてるんでしょ?おれは心配だ」


 自分を気遣ってくれるユニに、ルアは顔を近づけて言う。鼻と鼻がくっつく程の近距離である。


「ふふっ。気遣ってくれてどうもありがとう。でも大丈夫。体は強い方だから。そこは親に感謝かな」


「親か……」


 ユニは意味ありげに呟いた。


 ルアは遅れるといけないと、残りのパンを口に放り込むと手早く歯を磨くと外へと飛び出して行くのだった。


 それをユニは玄関まで見送った。



 その頃、メイは配信の準備をしていた。


 今日からゴールデンウィーク配信、名作ゲームの十時間耐久配信をやるつもりである。


 チャンネル登録者数もうなぎ上りで、いよいよ50万の大台に乗る所まで来ていた。


 今回の配信はその50万の大台に乗せるチャンスである。


「よし……!」


 午前七時五十分。メイはヘッドフォンをつけてパソコンを起動する。そしてアバターの確認。妙なカクつきもなし。


 さすがは黄桃ハル先生だと、メイは思うのであった。


 そして午前八時ちょうど、事前にSNSで告知していた通りに十時間の耐久配信は始まるのだった。


「みんなー!めいとちゃんねるに来てくれてありがとー!これから十時間!楽しんでいってくれたまえ!」


 普段の奥手な彼女からは考えられない、ハキハキとした口調だった。


 彼女はその後、十時間部屋から出てこなかった。


 その「幻夢めいと」の「ママ」たる黄桃ハル先生こと足塚藤香は、今後の展開について頭を悩ませていた。


 物語は佳境の、いよいよ主人公の出生の秘密がわかる場面である。


 実は主人公「福井竜一」は人間ではなかった。それに果たしてヒロイン「亜樹本奈留美」はどんな反応を返すのか。


 そこで先週号は終わった。


 その衝撃的な内容はSNS上で波紋を呼び、「実はこの時の描写がこうなっていた」と考察勢も湧き立っていたのである。


 こういった反応は、概ね藤香の予想通りである。では今週はどうするのか。


 藤香は自分に置き換えて考えてみる。


 もしもユニが普通の人間じゃなかったら?それこそ化け物から生まれた子供だったり、あるいは化け物そのものだったら?


 あり得ない事だが、もしそうだとしたら……。


 藤香は、自分の素直な心を原稿に込めたのであった。


 その展開は、後に連載終了した後に「伝説」として語られる事となる。



 一方。アゲハと紫音の意外なコンビは、朝早くからショッピングに出かけた。


 発明を手伝う代わりにショッピングに付き合わされているのである。


「いいよー!出てきてー!」


 アゲハが言うと、ショッピングモールの服屋の試着室から紫音が渋々出てきた。


「かわいい!意外とゴスロリも似合うね!」


 アゲハは両手を叩きながら言った。


 そんな紫音は、黒いゴシック系のワンピースに身を包み、ツインテールの毛先を少し巻いていた。


 しかし、それでも白衣は脱がない様である。


「わしあまりこんな機能性を度外視したのは着ないんじゃが……」


 紫音はだいたい白衣の下はTシャツにミニスカートかショートパンツとラフな格好である事が多い。動きやすさ重視である。


 なのでこんなぞろっとした服を着たのは、冗談抜きで七五三以来と言えるかも知れない。


「えー。かわいいのに勿体ない!」


 アゲハはぶーと頬を膨らませた。


 しかし、服に無頓着な紫音には響いていない様である。


 アゲハは、服や小物を何点か買ってから店を出るのであった。


「じゃあわしのお願いじゃな……」


 前述の通り、紫音はアゲハに発明を手伝って貰う事を交換条件に付き合った。


 助手が欲しい場合はモミに頼んでいたが、今日はいないのでアゲハに手伝って貰う事にしたのである。


「損得なしで手伝ってくれる助手が欲しいのう……」


 紫音はそう言うが、今回の発明はまさにその事が重要になってくるものである。


 早速発明を再開しようと、紫音はアゲハを引き連れて家路を急ぐのであった。


 悪魔との契約条項 第百九十八条

休みの日の過ごし方は、人によって違う。

読んで下さりありがとうございます。

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