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契約その195 たった一人のmy sister!

「もう……我慢できないの……」


 カラオケ店「ビートブースト」のある一室。ユニは由理に押し倒されていた。


()()()()()が悪いんだからね?」


 そう言いながらも、由理は恍惚とした顔をユニに見せる。


「いやそんなバカな……」


 青ざめるユニ。


 一体なぜこうなったのか。


 話は、数時間前に遡る。




 ―――数時間前―――


「姉さん、こういうのとかいいんじゃない?」


 下校中。ユニと由理は兄妹(姉妹)水入らずで、服屋でショッピングをしていた。


 アゲハみたいなプロ並みのファッションセンスを持つ女の子と買い物するのもいいが、由理とするのもまたいい。


 ユニは、ワクワクしながら由理と一緒に服選びに勤しんだのであった。


「姉さんありがとうね。わざわざついてきて貰った上に色々服のショッピングの手助けもして貰っちゃって」


 両手に紙袋を下げながら、由理はお礼を言った。


「それでどうする?このまま帰っちゃうか?」


 スマホの時計を確認しながらユニが聞いた。時計は六時を示している。


 最近はみんなも手伝ってくれるが、夕飯などのいつもの準備をするなら早くに帰らなくてはいけない。


 当然ユニもそれはわかっていた。にも関わらず、ユニは由理に帰るかどうか聞いてきたのである。


「……」


 ユニの意図を察した由理はしばらく考えると、ユニの手をギュッと握りながら言った。


「まだもう少しだけ、二人きりでいたいな……」



 ―――カラオケチェーン店「ビートブースト」。


 店名を彩るネオンが輝き眩しいこの店は、関東地方を中心に展開する大手カラオケ店であり、徐氏堂駅前にも存在している。




 ユニと由理は、この店の個室を予約した。


 二人用なので、個室はややせまい。


「うん。そういう事だから。みんなには悪いけど……」


 由理は家に電話して、今日はユニと一緒に外食する旨を伝えた。


「どうだった?」


 電話を終え、個室に入ってきた由理にユニが聞いた。


「たまにはいいだろうって言ってくれた」


 由理は笑顔で答えた。


「じゃあ何を歌おうか」


 ユニが聞く。


 すると由理は、マイクを一つ差し出して言った。


「デュエット……しよ?」


 それを聞いたユニは一瞬驚いた様な表情をしたが、すぐにマイクを受け取って快諾した。


 由理が曲の予約をする。流れてきたのはアイドルのデュエットソングである。


 由理のかわいらしい歌声が響いた後、それに呼応する形でユニも歌う。


 由理とは違い下手だったが、由理は喜んでくれた様だ。


 歌い終わった後、まるで見越したかの様に注文していた料理が届いた。


「全部食べてからまた歌おうか」


 由理が言ったので、ユニもそれに従う事にした。


 頼んだのはパスタ、カレー、フライドポテト、そしてデザートのケーキの四種類であり、全て10分程で平らげた。


「ふう……食べたな」


 ユニはそう呟くと、ふと隣の由理を見る。


 由理はすでに食べ終わっており、カラオケマイクを手にしていた。


 そしてリモコンで機械を操作すると、画面がカラオケのイメージビデオに変わった。


 彼女が予約したのは甘く切ないラブソングである。


 さっきのかわいらしい歌声とは異なり、非常に情熱的に歌い上げた。


「ブラボー!」


 曲が終わり、パチパチと拍手するユニ。


 由理はそんなユニの方を見ると……、ガバッとそのまま押し倒した。


「え?何を……」


 不意を突かれたユニは、成す術なく押し倒される。


「もう……我慢できないの……」


 そう言いながら惚恍とした表情をする由理。


()()()()()が、悪いんだからね?」


 いつもは「姉さん」呼びの由理が、「お姉ちゃん」呼びになる時。それはユニに甘えたい時である。


「いや……そんなバカな……」


 しかし、ユニは()()()()()()由理の変貌に驚いた。


(手伝って貰っているとはいえ、)普段家事に追われている由理は、自分でも知らず知らずのうちにストレスが溜まっていた。


 その心の隙間を、()()()()狙われたのである。


「私に……まったく構ってくれないから……」


 由理はユニの顔を両手で固定すると、その唇に思い切り口づけをした。


「……!?……!」


 言葉にならないユニの驚き。それはただのキスではなかった。


 舌と舌がにゅるにゅると絡み合うベロチューである。


 さっき食べていたケーキの味が、口の中に広がった。


 今まで何回も彼女達とキスをしていたユニだったが、こんな情熱的なものは初めてだった。


「ちゅ……じゅるじゅる……」


 その情熱的なキスに、ユニは理性を飛ばされそうになる。


「さあこのまま……()()()()作っちゃおうか……」


 さらに激しくなる由理のキス。


「いや!ダメだ!こんなんじゃ!」


 ユニはそう言うと、由理の体を力尽くでも引き剥がした。


「な……何で……」


 呆然とする由理。


「こんな一時の激情で……()()んじゃダメなんだ……」


 ユニの言葉に、由理は涙ながらにこう訴えた。


「何でよ!お姉ちゃんは私の事が嫌いなの!?」


「大好き()()()()()()!義理とはいえおれ達は姉妹……。未来を失って欲しくない」


 姉妹同士で()()()()()()やったという事が周囲にバレれば、由理はまともな就職も進学もできなくなるだろう。


 ユニはそれを心配していたのである。


「キミが……世界でたった一人の大切な妹だから……だから心配なんだ。いや、これだけは言っておかなくちゃいけないな」


 ユニはそう言うと、由理を力強く抱きしめる。


「ごめん。構ってあげられなくて。おれ、心の奥底では姉という立場に甘えてたかも知れないな。恥ずべき事だと思う」


「……っ!」


 ユニの謝罪に、由理はコクンコクンと頷くのであった。



 やがて利用時間が終わり、外へ出てみると、すでに外は暗くなっていた。


「帰ろうか」


 ユニがそう言うと、由理は強く頷く。


 そして二人は、手を繋ぎながら家路につくのだった。


 その二人を、「ビートブースト」が入ったビルの頂上に座り、見下ろしていた者がいた。


「神」である。


「彼の彼女に取り入ろうとしたけど……思ったより強敵みたいだ」


 そして「神」はスックと立ち上がる。


「さて、次はどういう風に遊ぼうか……」


「神」がパチンと指を鳴らすと、その体は光に包まれて、消えた。


 悪魔との契約条項 第百九十五条

欲求を全て叶える事だけが、愛というわけではない。

読んで下さりありがとうございます。

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