契約その193 大開催!game fes!
「あれが『未来ゲームフェス』の会場か。中々大きいな」
多くの入場者の人波に押されながら、ユニはかろうじて見えた会場を見て言う。
二月某日。ユニ、メイ、萌絵の三人は、東京のとあるイベント会場で開かれる「未来ゲームフェス」を訪れた。
「次世代のゲーム機を体験できる展示会の様なもので、動画のネタに行ってみたいと思ってたんだ」
昨日メイがユニに言っていた事である。
さらにメイは続けてこう言う。
「三人以上で行くとチケットが半額になるんだ。みんなに聞いてみたら萌絵は行きたいって言うから、あと一人、一緒に来てくれないかな」
メイは、ユニにお願いしますと頭を下げてお願いする。
当然ユニはOKを出したのだった。
そして今日。ユニ達はどうにか人波から脱出し、それぞれのチケットを受付に見せる事で入場するのであった。
会場の中は、入り口の混雑ぶりがウソの様に空いていた。
「どうやら近くの会場でロックバンドがライブを開いてるらしいですね」
萌絵がスマホ内の情報を確認しながら言う。
つまり、外の混雑は主にそれが原因だという事なのだろう。
ともあれ空いているのはいい事である。
ユニ達は、早速ブースを訪れるのであった。
ユニ達の目についたのは、VRゲームコーナーである。
「VRか。聞いた事はあるな」
そうユニが言うと、早速やってみようという話になった。
それぞれ一人用のソファーに座らされた三人は、頭を丸々スッポリと覆うヘルメットを被らされ、車のハンドルを持たされる。
ヘルメットを被ると、ユニ達の眼前にはリアルなレース会場が広がっていた。
このレースゲーム、プレイヤーのハンドルの動きをリアルタイムで反映する事で本当にレースをしている様な気分になるという。
「アクセルがこのボタンで、ブレーキがその隣、ドリフトをする時はこのボタンです」
係員の説明を受ける三人。スリーカウントダウンの後、ようやくレースがスタートした。
「うおーすごい!本当に運転してるみたいだ!」
そのリアルさに驚くユニ。昔遊園地で乗ったゴーカートを思い出していた。
しかしユニは、運転が壊滅的に下手くそだった。
前述のゴーカートに乗った時は、コース外の土手に乗り上げた程である。
ゲーム内で壁にぶつかる度に、リアルな衝撃がコントローラーに伝わってきた。
結局、トップはメイ、二位は萌絵でユニはビリだった。
「うう……リアルすぎて少し酔った……」
青い顔でフラフラとするユニ。
「VRやると、たまにそういう事起こるんだよな」
メイが呟く。
休憩室で少し休んで体力を回復したユニ達は、今度はダンスゲームをする事にした。
AIが作曲した曲で踊るゲームらしい。
「AIか……あまりいい思い出がないな……」
AIと聞き、ユニはかつての「APES」との激闘を思い出していた。あれよりはさすがに劣るだろう。
「PLAY START!」という文字が、画面に大きく表示されている。
ユニが適当にパネルを踏むと画面が変わる。デモプレイが始まり、ゆっくりと丸い光が画面上で上から下へと流れて行く。
この光が一番下に来た所で足元の所定のパネルを踏んでいくというルールらしい。
「ユニ、一緒にやろうか」
メイはそう言いつつもすでに準備をしていた。
ユニは快く引き受け、二人のダンス対決となった。
「負けたー!」
ユニは軽く地団駄を踏んだ。
「リズム感がないからな……ユニは」
メイがぼやいた。
「でも、AIってすごいですね。こんな複雑な作曲もできるなんて」
二人の対決を見ていた萌絵が言う。
「そうだな。一昔前まではAIに芸術的な事はできないって言われてたけど、最近はそうでもなくなってきてる」
メイがやや興奮気味に語る。
「最近はAIで小説が書ける時代になって来てるからね。もしかしたらこの小説もAIが書いているかも知れない」
「そんな……怖い事言わないでくださいよ。何かイヤですよ。自分のセリフがAIに書かれてるなんて」
ユニの発言に、萌絵が少しビビりながら言った。
「安心しろ。書いてるのはちゃんとした人間だから」
ユニがフォローした。
「それもそれで不安要素ではあるけどな……」
メイはこそっと言うのだった。
その後も次世代のゲームで楽しんだ三人は、ファミレスで晩ごはんを取る事にした。
「そうなんだ。おれ達は食べて帰るから……」
ユニは由理に電話で断りを入れ、二人の待つ席へと戻ってきた。
ユニはハンバーグ、メイはパスタ、萌絵はドリアをそれぞれ注文する。
「すごかったですね。色々と」
萌絵は興奮気味に語った。
「今日のゲームはだいたい五年以内の発売を目標にしてるらしい」
メイがパンフレットを見ながら言った。
「五年後か……その時にはおれ達大学生だな。その時も、こうやってみんなと遊びに行ったりしてるのかな……」
ユニがしみじみと語った。
「絶対そうですよ!きっと五年後も、ユニさんはユニさんのままです!」
萌絵が言う。
「そうだな。ぼくも断言する」
メイもそう言ってくれた。
「そうか……だといいけどなあ……」
果たして自分は、五年後何をしているのだろうか。
ユニは、五年後の自分に思いを馳せた。
それは、注文したハンバーグが届くまで、ずっと続いたのであった。
悪魔との契約条項 第百九十三条
未来の事は、誰にもわからない。
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