契約その182 彼女達のbattle royale!
たまたま「惚れ薬」を飲んでしまった彼女達は、ユニを巡って争う事になってしまった。
すでにルーシーと由理が激突する中、他の彼女達より後に飲んだ紫音がユニに叫ぶ。
「他の者も、わし含めて直にこうなるぞ!早く逃げろ!」
彼女達を争わせたくないユニは、紫音に言われる様に遠くへ逃げ始める。
「逃すか!」
驚異的な脚力とジャンプ力で、七海がユニを捕まえる。
「うわ!」
彼女を攻撃できないユニは、そのまま押し倒されてしまう。
七海は舌なめずりしながら言う。
「フフ……さあ私と一緒に……」
そんな七海の胸を、背後からぐわしと揉みしだく影。
モミである。
「きゃあ!?何を!?」
七海は赤面しながら体をのけぞらせる。
「ユニさんのおっぱいは誰にも譲りませんよ……。ですが先にあなたを腰砕けにしましょうか!」
七海とモミが激突する。
その隙に、ユニはどうにか逃げ出すのだった。
が、その刹那、ユニは何者かにロープでぐるぐる巻きにされる。
メイだった。
「サバゲーでロープの結び方もわかってんだよ……。さあ、ぼくと……。フフ……」
しかし、そのロープを風月が切り裂いて救出した。
「邪魔するな!」
「こっちのセリフです!」
そのまま激突する二人だった。
「ユニさんは渡しませんわ!」
「こっちもだよ!」
どれみとアゲハも激突する。
とはいえ戦えない二人なので、他と比べて子供のケンカレベルの小競り合いである。
お互いに、今までケンカした事がないのである。
「私の方がユニさんを愛してます!」
「いーや!僕の方だ!」
こっちは口ゲンカらしい。藤香とみすかが言い争っている。
「そっちの方が新参だろ!?」
「そっちは漫画の方にかまけて一緒にいれないじゃないですか!」
「何をォォ!?」
「そっちこそ!」
二人はいがみ合っているが、手は出てないらしい。
そして一方、アキとルアが激しい戦闘を繰り広げていた。
「いいか!?ユニはな、私の妻になってくれるかも知れない人なんだ!」
「それはお互い様でしょ!」
二人のキックとキックがぶつかり合う。
他方では、萌絵とヒナが言い争いをし始める。
「邪魔ですよ!」
「そっちこそ!」
むむ〜!と顔を近づけ合う二人であった。
そんな中、一人抜け駆けしようとする者がいた。
ミズキである。
「結局、運は私の方に向いていく……」
ミズキはそう呟きながら、ばっと大ジャンプをしてユニに襲いかかるのであった。
「ユニ〜♡」
それを見た彼女達は、全速力でそれを阻止しようと襲いかかるのだった。
「抜け駆けするな!」
各々争っていた彼女達だったが、そこからは大乱闘になってしまったのだった。
誰もケガをしていないのが不幸中の幸いである。
「マズイなこれは……。なあ紫音……」
そのあまりの光景に戦慄し、紫音に同意を求めるユニ。
しかし、紫音の様子もおかしかった。
体をガクガク振るわせながらうずくまっている。
「あれ?紫音?」
ユニには、すぐにその理由がわかった。
「言ったじゃろうが……。わしもいずれこうなると……」
顔を赤らめながら、ジリジリとユニに近づく紫音。
それを何とか丁井先生が止めた。
「丁井先生!?無事なんですか!?」
驚愕したユニが聞く。
「ハアハア……いくら変なもの飲まされたとはいえ……教師が生徒を襲うなんてあり得ないだろう……」
どうやら理性で抑えている様だ。
周りがおかしくなった時、丁井先生は途端にまともになる。
自分がしっかりしないといけないという気持ちに駆られるのである。
「早く逃げろ!効果が消えるまで!」
叫ぶ丁井先生。
しかしユニは、歩みを止めて暴走する彼女達の方へ向き直る。
「な!?どうしたんだ!?早く……」
「おれは……逃げません」
毅然と言い放つユニ。
「何を言ってる!?ハアハア……早く逃げないと……」
想像以上のパワーを出す紫音に、丁井先生も限界を迎えつつあった。
そんな中でユニが逃げないと言い出したので、丁井先生は驚いたのである。
「やっぱり、逃げるのは違うと思います。どんな形でも、おれは彼女達の愛を受け止めたい!」
真剣な表情でユニは叫ぶ。そうだった。自分はこんな瀬楠由仁に惚れたんだった。
丁井先生はそう思い直す。
「瀬楠……。わかった」
丁井先生は、ユニの意思を汲み、紫音から手を離した。
丁井先生の手を離れて、ユニに抱きつく紫音。
「紫音だけじゃない……みんなそうさ!」
紫音に押し倒されながらも、ユニは彼女達に言い放つ。
「みんな!おれはもう、逃げも隠れもしない!だから……もう争うのはやめにしてくれ!」
次の瞬間、理性を失った彼女達がユニに向かってくる。
ユニは、その全てを受け止める決意をするのだった。
「ユニ〜♡」
身体能力の都合で、真っ先にユニの元に辿り着くのはルーシーである。
ユニを押し倒して頬擦りする。
それに他の彼女達も続く。
そしてその愛を、ユニは全てを受け入れるのだった。
―――それから約二時間後。
「あれ?おれ達一体何してたんだ?」
彼女達は首を傾げる。どうやら記憶が飛んだらしい。
「ハアハア……ようやく元に戻ったか……」
たくさんの愛を二時間程浴び続けたので、さすがのユニも息絶え絶えになっていた。
記憶が曖昧になっているのならちょうどいい、この事は言わないでおこうとユニは決意した。
「これは当然破棄じゃな」
"愛お茶"が入ったペットボトルを回収しつつ、紫音が言う。
他の彼女達より遅いタイミングで飲んだ紫音は、時間切れに少しラグがあった様だが、治ったらしい。
そして紫音はみんなに謝罪する。
「みんなすまない!またみんなに迷惑をかけた!科学とは本来みなを幸せにするもの……科学者として恥ずかしく思う……」
記憶が曖昧になっている彼女達はきょとんとしていたが、ユニは紫音の謝罪を優しく受け止めた。
「紫音、ありがとう。キミのお陰で、おれは彼女達の愛を再確認する事ができた」
優しく声をかけるユニ。
「そんな……今のわしには勿体ない言葉じゃ……」
紫音が言うが、何でかわからないけど優しさは受け取っておいた方がいいというルーシーの言葉に突き動かされる。
「こんな、こんなに迷惑な彼女だけど、今後も愛してくれるか?」
紫音は問う。
ユニは笑顔で言う。
「みんな、生きてる限り人に迷惑をかけ続ける。おれだってそうさ。おれは、そんなキミが好きだ」
そしてユニは、紫音を優しく抱きしめるのだった。
悪魔との契約条項 第百八十二条
生きている限り、人は他人に迷惑をかけ続ける。
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