表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
181/299

契約その181 大乱戦!heroin vs heroin!

「うん。体温的には問題ないみたい」


 由理が体温計を見ながら太鼓判を押した。


「迷惑かけたね」


 ユニが謝罪する。


「いいよ、気にしないで。でもまさか姉さんだけがインフルエンザ拗らせるなんてね……」


「ラファエル」との決戦から四日後。


 他の彼女達は三日も経てば完治したが、ユニだけは完治に四日かかってしまった。


「でもお医者さんの話だと、みんな一週間は休んでおかないといけないらしいし、そうなると三学期の開始には間に合わないか……」


 由理がため息をつく。


 そんな由理にユニが言う。


「たぶんおれのクラスは学級閉鎖だろうな。十人以上休んでるから」


「それもそうか……そっちも大変ねえ」


 由理が心から同情する様に言う。


 とにかく治った事は治ったので、ユニは久しぶりにリビングに降りる事にした。


「みんな、治ったよ」


 ユニはそう言いながらリビングに降りる。


「あ、治ったんだユニ。おはよう」


 アゲハが言う。


 ユニは、みんなが何か飲み物を飲んでいるのを見つけた。


「何飲んでるの?」


 ユニが聞く。


「ああ。紫音がな、『わ〜いお茶』買ってきてくれたんだ。雪かきを労う為に」


 アキが言う。


 そういえば、みんな雪かきをしていた所をユニは自室から見ていた。


「飲むか?」とアキが渡してきたそれを、ユニは快く受け取った。


「じゃあ早速……」


 ユニが渡されたそれを飲もうとしたその時である。


「ちょっと待てェ!」


 紫音が慌てた様子でやってきた。


「どうしたの?」


 アゲハが聞く。


「まさかとは思うが、冷蔵庫にあるお茶を飲んだりしてないか?」


「お茶ってこれの事か?」


 藤香が示してきた。


「飲んだのか!」


 紫音が焦燥しながら聞く。


「うん。ユニとあなた以外はみんなね。500mlぐらい」


 ルアが言う。


 それを聞いた紫音はあわわわと言いながら頭を抱えた。


「ユニ!今すぐじゃ!今すぐこの場を離れるんじゃ!」


 紫音が叫ぶ。


「そんな……何で……?」


「今みんなが飲んだのは要するに『惚れ薬』!"(あ〜い)お茶"じゃ!本家とラベルも似ておるから間違えたんじゃろ」


 それを聞いたみんなは一斉に吐き出そうとする。


「何でまたそんなのを放っておいたの!?」


 みんなは怒った。


「だいたい"契約その27"辺りの時に開発してたものじゃが、もはや必要ないと思って破棄しようとしてたんじゃ」


 "契約その27"は、紫音が彼女入りした時のエピソードである。


 その時はまだユニの愛を信じ切れていなかった紫音が、秘密裏に開発していた代物らしい。


 だが、次第にユニの愛が本物である事を理解し、もはや必要ないと思った紫音は、それを今になって破棄しようとした。


 台所に置いておいたそれを、彼女達が「わ〜いお茶」だと勘違いして飲んでしまったというわけである。


「まさか当時遊び心で似せたのが裏目に出るとは……」


 ガクッと肩を落とし、紫音は後悔した。


「確かに冷蔵庫にはあったな。本物が」


 ユニは冷蔵庫に入っていた何本かを取り出して言う。


「ほら、細部が違うじゃろ。ラベルの色味とか微妙に。何でこれを……。いや、こんなものを適当に置いておいたわしが悪いのじゃが……」


 紫音はそう悔やみながら、本物の方を飲む。


「紫音!それは!」


「え?」


 紫音が本物だと思って飲んだのは、「惚れ薬」の方だったのである。


「しまった!わしまで間違えた!」


 先程の様に頭を抱える紫音。


「どうにかして、治す方法はないんですか?」


 萌絵が頭を抱える紫音に聞く。


「ないな。飲んだら最後、しばらく効きっぱなしじゃ」


 頭を抱えながら紫音が断言する。


「どれくらい効くの?」


 ヒナが聞く。


「個人差はあるが、だいたい二時間程……」


 紫音が答える。


 その上で、紫音はこう付け加えた。


「『惚れ薬』とは言うが、これは元々ある好意を数百倍にするものなんじゃ」


 そしてそれはより好意を惹きつける人物、つまりユニに向けられると紫音は言う。


「だいたい飲んでから十五分程ラグがある。だからその前になるべくユニを遠くへ逃がそうと……いやもう手遅れか……」


 紫音が言う。


 真っ先に症状が出たのは由理である。


「ハアハア……()()()()()……」


 顔を赤らめ、息も絶え絶えな由理。


「だ……」


「だ?」


「だ〜い好き♡」


 由理はそう言いながら、ユニへ思い切りダイブした。


「うわ!」


 その勢いで、後ろへ倒れるユニ。


「お姉ちゃ〜ん♡」


 猫撫で声で、由理はユニの体の至る所にキスをしまくる。


「ちょっ……やめっ……くすぐったいよ!アハハハ!」


 思わず笑ってしまうユニ。


 だが、それと同時に疑問に思う。


 これぐらいなら、大して問題はないのではないだろうか。


 いや、十数人分の愛を受け取るのは確かに大変だが、ユニなら二時間は耐えられるハズである。


 ユニはその事について紫音に聞いてみた。


「確かにただ愛を振り撒くなら大した事はないじゃろうが、この薬の恐るべき所は、愛の為なら自分の障害をも排除する所じゃ」


「つまりそれって……」


 ユニが危惧した事を察したのか、紫音は大きく頷いて言う。


「ああ。これから二時間、ユニを巡るわし達の『バトルロワイヤル』が始まるというわけじゃ!」


「そんな……」


 ユニは絶句した。


「ただでさえわしらは高い戦闘力を持つ集団……。何が起こるかわからん……。だからなるべく遠くへ逃げる様に言ったんじゃ」


 ―――争いが、起こる前に!


 ユニを独り占めしていた由理に近づく黒い影。


 ルーシーだった。


「悪いけどユニは渡さない……」


「こっちこそ……お姉ちゃんとは私が一番長い付き合いなんだから……」


 売り言葉に買い言葉だった。


 ルーシーと由理、拳と拳、意地と意地がぶつかり合う。


「こういう時、おれは何て言うべきなんだっけ……」


 そんな熾烈な争いを見て、ユニはこう叫ぶのであった。


「やめてくれ!おれの為に争わないでくれェ!」


 彼女達による、ユニを巡ったバトルロワイヤルが始まるのだった。


 悪魔との契約条項 第百八十一条

愛にも、限度がある。

読んで下さりありがとうございます。

いいね、感想などをよろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ