契約その179 必殺のstrike!
「ハーレムフォーム?」
「ラファエル」は、姿が変わったユニを見て呟く。
「大方悪魔の力を用いてのパワーアップでしょうが……その悪魔が私に負けたのをお忘れですか?」
「ラファエル」が言う。
ユニは後ろにいるルアに言う。
「笑ってられんのも今の内だ!ルア!力を貸してくれ!」
「え?私?」
いきなり話を振られたルアは困惑する。
「おれとの思い出を思い出して欲しい」
ユニの言う通り、ルアはユニとの思い出を思い出す。
すると、ルアの体が白く発光した。
「わー!何か光った!」
ルアが驚きの声を上げる。
ユニは後方にガッツポーズした。
「よし!これで……。『ルアの力』!『チャイナ娘の演技』!ホアチャァ!」
ユニは、カンフーで「ラファエル」を攻撃する。川の流れる様な連撃で、「ラファエル」を追い詰めていくのだった。
「ぐっ……」
「ラファエル」は押されつつも何とか受け止める。
―――悪魔共より強い?一体なぜ?なぜ人間にここまでの力が?
「ラファエル」には、考えてもわからなかった。
「今度は紫音!頼む!」
「何でか知らんがわかった!」
紫音はユニとの思い出を思い出す。
ユニの手元に"スタンガン"と"電化の宝刀"が出現する。
「そしてメイ!よろしく!」
「わかった!」
メイも二人と同じ様にすると、ユニは優れたエイム力で"スタンガン"を放ち、「ラファエル」にダメージを与えた。
ユニは「ラファエル」にこう叫ぶ。
「ゲーマーナメんなよ!」
どうやら口調も彼女達と同じものになる様だ。
「次に風月!頼んだ!」
「わ……わかりました!」
風月との思い出が、ユニの力になる。
ユニは風月と同様の剣の構えで、「ラファエル」を二度三度程斬りつけてダメージを与えた。
「次は……アキ!」
「よし!呼ばれて私参上!」
アキの思いもまた、ユニの力になるのだった。
ユニはゆっくりと腰を下ろし、両腕を広げる。
そして「ラファエル」に向かって走り出してジャンプ、蹴る一瞬の衝撃を高めるべく空中で前転し、キックを叩き込んだ。
「うおりゃぁぁ!」
ついに一撃が入り、「ラファエル」は吹っ飛ばされた。
―――そうかわかった!
ようやく「ラファエル」はこの強さを理解する。
―――悪魔との「二重契約」に加え、女達の思いを力に変える事で、強さを引き上げているんだ!
だが、「ラファエル」は立ち上がる。
「何をしたってムダ……!私は天使……!下等が何をしようと……」
―――私には勝てない!
「ラファエル」は、地面に手を置く。
すると、地面から何本もの光の触手が生えてきて、ユニに襲いかかる。
しかしユニは動じない。
「今度は由理!」
「任せて!」
由理の思いを受け取ったユニは、どこからか包丁を二本取り出す。
「料理してやる!」
普段のユニからは考えられない華麗な包丁さばきで、触手を切り捌いていく。
「そしてさらにアゲハ!」
「りょ!」
アゲハの力を使い、ユニは捌いた触手を丁寧に整える。
「戦う以外もできるのか……」
「ラファエル」が呟く。
ユニは続いて七海を指名、七海の脚力で「ラファエル」に接近すると、丁井先生の力でバックドロップを極める。
「ぐっ……」
さらにダメージを負う「ラファエル」。
「どうだ!」
叫ぶユニ。
「ハアハア……私が傷を負わされる?あり得ない!あり得ない!あり得ないあり得ないあり得ない!」
「おい『ラファエル』!」
ヨロヨロと立ち上がる「ラファエル」に、ルーシーが言う。
「おれとお母さんは確かにお前に負けはしたが、おれ達は負けない!」
「人の思いを理解しようとしないお前に!勝ちはない!」
ルーシーの言葉を引き継ぐ形で、ユニが言う。
その言葉にブチギレた「ラファエル」は怒鳴り散らす。
「小癪な……羽虫が飛び回った所で……勝てると思ってんのか!?」
「勝てるさ!こっちは彼女達全員の命支えてんだ!勝てもしない戦いになんて巻き込めるか!」
ユニはそう啖呵を切り、みんなに言う。
「みんな!おれに力を貸してくれ!」
彼女達がユニに思いを寄せると、より強い力がユニの体に流れ込む。
「『ラファエル』!確かにお前の言う通りおれ達はお前にとっちゃ『羽虫』なのかも知れない!だけどな……」
ユニはみんなと口を揃えて言う。
「人間の思いは!その差をも変えていくんだ!」
球状になったみんなの思いのエネルギーを、「ラファエル」に向けて照射する。
「食らえ!"ハーレム・ボンバー"!」
繰り出された虹色の激しいエネルギーの渦に、「ラファエル」は断末魔の声を上げながら巻き込まれた。
仰向けに倒れた「ラファエル」。
「勝ったのか……?」
ユニもまた限界だった。
一度に彼女達の力を使いすぎてしまった。だがまだ立ってくるならここで倒れるわけにはいかない。
しばらくして意識を取り戻した「ラファエル」。
ユニ達は身構える。
「負けない……!負けるわけない……!こんな奴らに……!」
その時である。
空がピカッと強く光った。
それにも気づかず、なおも喚き散らかす「ラファエル」。
「こうなったら……もう一度戦……」
突如、「ラファエル」の体をその光が貫く。
何が起こったのかもわからないまま、彼女は消えてしまった。
「いや、消されたのか!?」
ユニは推測する。
「おそらく……その推測は正しいと思う」
「セラフィム」は言う。
その口調は穏やかだが、明らかに動揺している様だ。
「まさか……介入してきたって言うの……!?『神』が!」
「『神』ィ!?」
ユニ達は驚く。いや天使や悪魔がいるのだから、神がいてもおかしくはないが、彼らとはスケールが違う。
何せ、ここまでユニ達を苦戦させた「ラファエル」があっさりと骨も残らず消滅させられたのである。
ユニ達は、神の強さに戦慄した。
「何だ?また戦うのか?」
そう言いつつユニは構えて戦闘体制を整える。
が、限界だった。
ユニの「ハーレムフォーム」の変身が解け、ユニはその場に倒れ伏した。
「ユニ!」
慌ててみんなはユニの元へ走る。
「いや……大丈夫。心配しないで。何より……」
すると突然虚空が光ったかと思うと、中から少女の姿をした「誰か」が現れた。
「そんな……」
「ウソだろ……」
その姿を見て、ユニ達はまた驚愕するのだった。
悪魔との契約条項 第百七十九条
「悪魔との二重契約」と、人間の思いが合わさった時、さらに大きな力を発揮する。
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