契約その177 Motherの愛、子の愛……!
契約その177 Motherの愛、子の愛……!
「……逃げられましたか……。面倒ですね」
ユニ達を包んだ光が消えた後で、「ラファエル」は呟いた。
「ですが、今すぐにでも追い、始末しましょう。それが秩序を正す道ですから」
「それを私が許すとでも?」
「セラフィム」が「ラファエル」に向かって言う。
すでに体はボロボロの状態だったが、闘志はまだ消えていない。
「どうしてそこまでするのですか?勝てるわけないのに」
「ラファエル」は心底不思議そうな顔をしながら聞いた。
「……何回でも言うわ……。親っていうのはね……子供の為なら何でもできんのよ!」
「セラフィム」は真っ向から啖呵を切った。
「結局、あなたが死んでも結果は同じだけど……」
冷静に言い放つ「ラファエル」。
人間界で、天使と悪魔は再び激突するのだった。
一方の魔界。
ユニ達全員は何とか全員魔界へと避難した。
みんなが現れたのは、ユニとルーシーが一回目に現れた公園であった。
「ここが魔界?」
「人間界とそんなに変わらなくない?」
口々に言い合う彼女達。
「まさかこんな形になるなんてな……」
ユニがそう呟く。
前に来た時は、今度は彼女達も連れて来いと「セラフィム」に言われたものだが、まさかこんな形での再訪になるとは、ユニは夢にも思わなかった。
「それでどうするの?」
由理が聞く。
「とりあえずおれの実家に行こう。そこで匿える。ここだって完全に安全ってわけじゃないんだからさ」
ルーシーが提案する。
とりあえずその案が採用される事になった。
「でも移動手段はどうするのですか?ここから歩ける距離にあるのならいいのですが」
みすかが聞く。
「この前はバスで行ったからな……」
だがこんな大人数、バスで移動するにしても貸し切らなければならない。
「魔界でも普通に日本円が使えるから、マイクロバスをレンタルして……」
「アタシに運転させるのか」
丁井先生がぼやく。
「普通免許じゃ運転できないから、持ってないなら仕方ないですが」
ユニが言う。
「持ってるよ。免許フルビットだからな」
地味にすごい事を言う丁井先生である。
「教師になる前に色々バイトしてたんだ」
ともかく、これで運転手はできた。
レンタル料はどれみが支払ってくれ、数時間後には、みんなはルーシーの実家に来ていた。
「ここか……。大きいな」
アキが感想を漏らす。
「なるべくリビングに固まった方がいいな。その方がいざという時に早く動ける」
さっきルーシーが言った様に、ここも絶対に安全というわけではない。
みんなでリビングに集まって過ごす事にした。
「さてと……ようやく腰を落ち着ける事ができたわけだけど、これからどうしようか」
ルーシーが聞く。
「どうするも何も、あいつ倒さなくちゃ家にも帰れないだろ。何とかその方法を考えないと」
メイが言う。
「いや、その前に……」
ユニが、ミズキの母の方を見て言う。
「そろそろ、教えてくれませんかね。ミズキが引っ越す件についての真実を」
ミズキの母は、しばらく黙った後、意を決したのか口を開いた。
「こうなった以上、もはや引っ越す意味もないけど……」
ミズキの母はそして真実を語り出した。
「元々、"日神協"は魔界や天界の状況を監視していたの。悪魔から提供された魔力を使ってね」
それを静かに耳を傾けて聞くユニ達。
「そしてある時、『ラファエル』が『瀬楠由仁』の抹殺を企てている事がわかった」
それを聞いたみんなは驚く。
「何でただの人間のユニが天使に殺されなくちゃならないんだ!」
ルーシーが憤る。
「その理由については私にもわからない。でもわかる事は、瀬楠由仁と関わるのある人物、つまり私の娘にも危害が及ぶという事」
「それでおれと引き離す為に引っ越しを……」
ユニが聞くと、ミズキの母は首を大きく縦に振った。
理由をミズキに教えなかったのは、教えたらミズキもここに残ると言い出すと踏んだからだと言う。
「たとえ実の娘から恨まれても、自分の娘は守りたい。それが親の心よ。結局相手の行動が速くて無視されたけど」
つまり、「上からの指示」というのもまったくのデタラメ、結局"日神協"は直接は関係なかったという事である。
だがユニ達は彼女を責める事はできなかった。
「自分の子供とか何とか、今の私達にはわからないけど……」
「いつか私達にわかる日がくるのかな」
みんな口々に言い合った。
「とにかく、作戦を……時にルーシー、『セラフィム』は勝てると思う?」
ユニはルーシーに聞いた。
「それはその……自分の母の事はそりゃ信用したいけど……たぶん無理だ」
ルーシーは俯きながら答えた。
「そうか。答えてくれてありがとう」
お礼を言うユニ。
「じゃあそれを踏まえた上でおれの対策案を示すけど、つまり……」
ユニが自分の案を話そうとした、まさにその時である。
ドガァン!ゴロゴロ……ピシャ!
今まで晴天だったはずだが、急に天気が悪くなる。ユニは、慌てて窓から空を確認する。
それを見たユニは「マジかよ……」と呟いた。
それは、家から空を覗いた時の空色に非常によく似ていた。
「くそ……思ったより早かったな……」
ユニは呟く。
人間界とは違い、多くの住民にも見られている様だ。
みんなが見ている中、それは静かに降臨するのであった。
悪魔との契約条項 第百七十七条
子供の為ならば、母親は何だってできる。
読んで下さりありがとうございます。
いいね、感想などをよろしくお願い致します。