契約その176 Rafaelと戦え!
「何でここに……」
声の主に、ルーシーは驚愕した。
「あら……あなたの出る幕ですか?『セラフィム』」
この土壇場でやって来たのは、ルーシーの母「セラフィム」だった。
「お母さん!?一体どうして……」
「そりゃ来るわよ。だって娘のピンチだもの」
「ラファエル」に立ち塞がる様にして、「セラフィム」は言った。
「親子の愛……よくわかりませんが美しいですね」
「ラファエル」は無味乾燥に言った。
「別にあなたの感想なんて求めてないわ」
「セラフィム」はそう吐き捨てると、いきなりキックを仕掛けた。
「まさに悪魔。不意打ちなんて……」
そうは言いつつも、「ラファエル」はしっかり腕で受け止めた。
「"元"『最強の悪魔』ナメんじゃないわよ……」
「ラファエル」と「セラフィム」が激突する中、ルーシー達の元にユニ達がやって来た。
「ルーシー!」
「ユニ!?みんな!?何で逃げなかったの!?」
これでは自分が殿を務めた意味がないとルーシーは怒った。
「意味なくなんかない!みんな全員で生きて帰れば、おれ達の勝ちだ!」
ユニは叫ぶ。
その言葉にルーシーは、ブワッと涙を流した。
「これを見て、あなたはまた美しいとでもぬかすのかしら?」
「ラファエル」に皮肉をぶつける「セラフィム」。
「そうですね……今度は少し感動したので、遊んであげましょうか……何、殺しませんよ。遊ぶだけです」
「ラファエル」はそう言うと、地面に降り立つ。
その隙を見逃さない「セラフィム」。首元に手刀を浴びせた。
「あら」
「あなたがあの子達に手を出さないっていう保証はどこにもないでしょう?」
「うーん……確かにそうですね」
そう言いながら、首筋をポリポリとかく「ラファエル」。どうやらこれも大して効いていない様である。
「では、あなたには少し動かないでいただきましょうか」
「ラファエル」は、「セラフィム」に手のひらをかざす。
すると、まるで金縛りにでもかかったかの様に、「セラフィム」の体は動かなくなった。
「何だこれ……?」
「これで一定時間は動けませんよ。さて、逃げるなり攻撃するなりしてみて下さい」
攻撃しないつもりだろうか。それならと、ユニは魔導書を開く。
さっさと魔界に退避するつもりなのだ。
「付き合わなくていい。自分から隙作ってくれるなら、それが一番好都合だ」
ユニが言う。
「おっと……それはさすがに許しませんよ。魔界に行かれると厄介なので」
「ラファエル」はユニを蹴飛ばすと、魔導書を遠くまで吹っ飛ばす。
「先にあなたから」
そのままユニを踏みにじろうとする「ラファエル」。
その時、「ラファエル」に一閃が襲いかかる。
"電化の宝刀"を使った風月の攻撃だった。
その一撃を、難なく受け止める「ラファエル」。
「誰かはまだわかりませんけど、その足をどけてくれませんか?」
お願いする風月。
「成程……悪魔の力を……天使も悪魔も力の根源は同じ……悪魔の力を武器に付与すれば私にもダメージを与えられると?」
「前例があるからな。その分危険でもあるが」
素直に感心する「ラファエル」に、紫音が言う。
「少し遊びましょうか」
そう言いながら、虚空から光の剣を創り出す「ラファエル」。
どうやら同じ土俵で戦ってくれるらしい。
「風月!臆するな!"電化の宝刀"は使用者の敵意と闘争心を感知する事でより力を与える!」
紫音のアドバイスが飛ぶ。
「ピピッ……」
"電化の宝刀"も風月の敵意と闘争心を感知した様だ。
「ラファエル」は光の剣を大きく振り下ろす。
それを風月は何とか受け止めるのだった。
「くぅ……何て強い力……近所にいた士族の方の……いやそれ以上!」
大正時代は大政奉還の五、六十年後である。本当に幕末を生きていた人がまだいた。
風月はそんな人達から剣術を学んでいたのだが、「ラファエル」の強さはそれ以上という事である。
「お前の相手は風月だけじゃない!」
メイが"スタンガン"を向ける。当たれば人間なら一撃で気絶する電撃銃である。
メイは見事なエイム力で「ラファエル」に攻撃を当てる。
「ゲーマーナメんなよ……」
メイは毒づいた。
「成程、中々の……」
そんな中、由理、アキ、ルア、丁井先生の四人が今度は肉弾戦を挑んで来た。
「へぇ……中々の強さ……。人間相手ならまず負けないでしょうね」
そこは素直に褒める「ラファエル」だった。
「ですが……」
「ラファエル」は、少し右腕を軽く振る。
すると、辺りに衝撃波が発生し、ユニ達を大きく吹き飛ばすのだった。
「楽しめるものではありませんか……やはりあなた達人間が我々を楽しませるのは己の破滅……」
つまらなくなった「ラファエル」は、ユニ達にとどめを刺そうとする。
その時である。
「みんな!ルーシーの元に集まれェ!」
力の限り叫ぶユニ。
言われるがままに、みんなはルーシーの方に集まる。
ユニの手には魔導書がある。みんなが注意を惹きつけている間に取ってこれたのである。
「このまま魔界に逃げるつもりですか!それはさすがに……」
阻止しようとする「ラファエル」を、ようやく動ける様になった「セラフィム」が手刀で制する。
「娘の里帰りよ。邪魔しないで」
「お母さん!」
ルーシーの叫びに、「セラフィム」は笑顔で答えた。
ユニ達は、そのまま光に包まれていったのだった。
悪魔との契約条項 第百七十六条
悪魔と天使の力の根源は、同一である。
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