表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/299

契約その175 Angel、やって来る……!

「お母さん!」


 ミズキは外に出て、母親の元に駆け寄った。


 瀬楠家の前で倒れているミズキの母は、ミズキの腕を掴んで言う。


「ミズキ、早く逃げなさい!ここは危険よ……!」


「危険?それって一体……」


 ミズキが言いかけたその時である。


 ドカァン!


 再び周囲に衝撃が走る。


「ミズキ!早く家の中に入るんだ!その人も一緒に!」


 ユニは玄関から顔を出し、必死に呼びかけた。


「―――そうか!わかった!お母さん!早く一緒に……」


 ミズキは、慌てて母を引っ張って立たせようとする。


「いや、もう遅いわ……」


 ミズキの母は、絶望したかの様な表情をする。


「遅いって……?」


 ミズキが言う。


 その様子を見ていられなくなったユニは家から飛び出して、無理やりにでも連れ帰ろうとする。


「ミズキ!早く!明らかにここは危険だ!だから早く家の中に……」


「その必要はないです」


 頭上から声がする。


 その声の主は、まるで降臨するかの様に空から地面に降り立つのだった。


「!?お前はまさか……」


 その姿に、ユニは衝撃を受けた。


 白いゆったりとした服を着た金髪の少女。ユニはその少女の事を覚えていた。


「覚えていましたか。たった一度会っただけなのですが……」


「おれは記憶力はいいんだ」


 ユニは言い捨てる。明らかな「敵」としてその少女認識しているのである。


「知り合いなの……?」


 ミズキが聞く。


「ああ。会ったのは一回だけだけどな。名前は……」


「『ラファエル』です。お見知り置きを」


「ラファエル」は丁寧にお辞儀をして自己紹介した。


「理由はわからないが……。ウチの恋人の母をボコボコにするとは……一体どんな落とし前を……」


「ラファエル」に向かうユニ。


 しかし、「ラファエル」はまったく動ぜずに言い放つ。


「『落とし前』……?それは人間の考え……。『天使』である私が通す事はないですね」


「何だと……!?」


 一触即発の雰囲気になる現場。その時である。


「ユニ!」


 ルーシーがユニの名前を叫びながら慌てて介入してきた。そんなルーシーも「ルシフェル」の姿を見て驚愕する。


「そんな……ウソだろ……」


「あら。『ルシファー』ですか。久しぶりですね」


 まるで古くからの友達かの様にルーシーに話しかける「ラファエル」。


「たった一年ちょっと……おれ達にとっちゃ久しぶりって感じでもねェだろ」


 ルーシーが吐き捨てる。


「……悪魔が、『天使』に勝てるとでも思いますか?」


「天使」が堕ちる所まで堕ちたのが「悪魔」である。つまり「悪魔」より「天使」の方が格上という事だ。


 それはルーシーにもわかっていた。だがその上で、ルーシーは「ラファエル」に啖呵を切る。


「……おれは、人間の身でありながら次々と悪魔に勝ってきた奴を知ってる。それに比べりゃ大した差じゃないさ」


 ルーシーはそう言い、ファイティングポーズを取ると、叫ぶ。


「行け!みんな!」


 ルーシーの意図を汲み取ったユニは、ミズキとその母を連れて家へと退避した。


 しかし、それでは逃げた内には入らないと悟った。


「姉さん!?一体何がどうなって……」


 由理が聞く。


 ユニはそんな由理に叫ぶ。


「話は後だ!みんな荷物をまとめるんだ!」


「荷物を!?いきなりどうしてそんな……」


 七海が言う。


「後で必ずわけは話すから……」


 ユニは本棚から魔導書を取り出す。


「ルーシー抜きでも行けるのか?『魔界』!」


 魔界に行けば「ラファエル」でもそう簡単には手出しはできない。ユニはそう判断したのである。


「でも……」


 ユニは悩んだ末、魔導書をミズキの母に渡す。


「おれの彼女達を、『魔界』まで連れて行って下さい」


「え!?」


 彼女達は一様に驚いた。


 もっとも、ミズキとそれ以外の彼女でその理由は違ったが。


「じゃあ、この人がミズキのお母さんって事か?勝手にミズキを引越させようとした組織の……言わば手先の!」


 アキがミズキの母を指差しつつ言う。


「それについては私から後で説明します」


 ミズキの母はそう言い、そしてユニの方へ向かって言う。


「それと、あなたがユニさんね。『魔界』に行くっていう判断は最善だと思うけど、あなたは行かないのかしら?」


 それを聞いたユニは、背を向けて言う。


「恋人が戦ってるんです。彼女を見捨てては行けない。みんなを逃がせればそれでいい」


「そんな……」


 彼女達は絶句するが、その直後にユニに向かって叫ぶ。


「……ナメんな!」


「え?」


 意外な返答に、ユニは面食らってしまった。


「僕達も、戦うに決まってるだろ!」


「そうやって、何度も困難を乗り越えて来たんじゃないか!」


「この期に及んで『守られる立場』だと認識されていたとは……心外じゃな」


「何ができるかわかんないけど!」


「私達も戦う!」


「みんな……。そうか、そうだよな!」


 ユニは、強く頷いた。


「絶対に、『ラファエル』を倒そう。おれ達の手で!」


 ここで一致団結するユニ達。


「武器ならあるぞ。"スタンガン"に"トリモチバズーカ"、"電化の宝刀"……」


 紫音はたくさんの武器をリュックから取り出した。


「よし、これなら……」


 ユニ達は武器を取ってルーシーの元へ向かうのだった。



 その頃、ルーシーはと言うと、その力の差に苦しんでいた。


「ハアハア……くっ……」


「確かに、『最強の悪魔』と言われるだけの力はありますね。もっとも、受肉した状況では本来の力は出せないでしょうが」


「ルシフェル」は冷たく言い放つ。


「ハアハア……いいんだよ……おれは『時間稼ぎ』なんだから……。みんなを逃して、おれも逃げればそれで勝ちだ」


「逃すならまだしも、あなたにはもう逃げる程の余力は残っていない様に見えますが?」


「ルシフェル」の言う通りだった。ルーシーに逃げる余力はすでに残っていない。


「まあ、もしあなたが死ねば、()()()()()だと思いますけどね……」


「ルシフェル」がルーシーにとどめを刺そうとしたその時である。


「お待ちなさいな!天界の者!」


 またルーシーの頭上から声が聞こえる。


「ま……まさか……!」


 その声の主の姿を見て、ルーシーは衝撃を受けるのだった。


 悪魔との契約条項 第百七十五条

「天使」の強さは、「悪魔」を凌駕する。

読んで下さりありがとうございます。

いいね、感想などをよろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ