表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/299

契約その174 ミズキのmotherを追え!

「まずは状況を整理しようか」


 ひとしきり抱き合った後、ユニが言う。


「うん」


 ミズキも大きく頷いた。


「まず一月二日、キミは別の神社に飛ばされる事になった事を自分の母から聞かされた。ここまではいい?」


「うん」


 ミズキはまた大きく頷く。


「よし。それで、その理由を聞いた際、『上の判断だ』の一点張りだったと……うーん……それって変じゃないか?」


 ユニが言う。


「変って?」


 小首を傾げながらミズキが聞く。


「だって、特に()()()()()()()()()()、普通に理由を言えばいい話だろ。それを言わないってのは……」


「その()()()()()()があるって事?」


「そうとしか考えられないな」


 ユニは湯飲みを流しに持っていきながら言う。


「少なくとも、何かしら後ろめたい事があるのは事実だ。付け入る隙があるのだとしたら、そこだと思う」


 湯飲みを洗剤で洗いながらユニは言った。


「後ろめたい事……」


 ユニの言った事を復唱するミズキ。


「仮にもしそういう事実があった場合、そんな事の為におれ達と離れたくないだろ?それはおれも同じだ」


 ユニは、泡だらけの顔でミズキの方に振り返りながら言う。


「だからさ、噂程度でも、何か知ってる事はないか?いや、そもそも『上』っていうのは何なんだ?」


 湯飲みを洗い終わったユニは、手とついでに顔を洗いながら聞いた。


 ユニに聞かれたミズキは、自分が所属している組織について話した。


「まず神社……いや神道には色々な種類があって、その中で神社が所属しているのは『神社神道』っていうものなんだけど」


 ミズキが言うには、全国の神社を総括する「神社本庁」、そしてその下で人事を行う組織があるらしい。


「そしてそれが、"日本神社協会"通称"日神協"って言うんだけどね」


 つまりそれが、ミズキの言う「上」に当たる組織だという事だ。


「疑うわけじゃないけど、本当にあるんだそんな組織が」


 ユニにはにわかには信じがたかった。


 というのも、「神社本庁」なる組織がある事はユニも知識として知っていた。


 だがしかし、"日神協"なんて組織があるなんて知らなかったのである。


「うん。だって関係者しか知らない組織だもん。私も名前しか知らないし」


 もはや秘密結社の様相である。あまりに怪し過ぎる。


「つまりその組織が……」


 ミズキは大きく頷くのだった。


「成程……」


 するとミズキは、思い直した様に言う。


「私ね、やっぱりみんなに話してみる。そしてみんなに協力して貰うんだ。みんなとこのままお別れなんてイヤだから」


 それを聞いたユニは笑顔で言う。


「そうか。それはよかった」



 そして翌日。


「そんな……ミズキが引っ越すって本当!?」


 みんな一様にショックを受けていた。


「いや、おれが絶対()()はさせない」


 ユニが強い覚悟で言う。


「でも、具体的にどうするんだ?その理由を聞くには、最低でもその関係者と接触しないといけないわけだろ」


 ルーシーがもっともな事を言う。


 何か心当たりはないかとユニはミズキに聞いた。


「いや私は母から間接的に聞かされてるだけで……」


「やっぱり()()がおかしいんだよ」


 ユニが言う。


「何で当事者のミズキに直接言ってこないんだ?いくら全国に神社が八万社あると言っても、道理に反してるだろ」


 確かにその通りである。なぜわざわざミズキの母を経由するのだろうか。


「となると、取るべき方法は一つしかないな」


 藤香が言う。


「ああ。ミズキの母に何としても会って話をするんだ。そうしないと道は開かれない」


 ユニが言う。


「ちょっと待って。電話するから……」


 ミズキがそう言って自分の携帯に手をかけたその時である。


「ちょっと待った」


 その手を紫音が止めた。


「念の為逆探知装置を取り付けよう。疑うわけではないが、せめてかけてる場所がわかる様に」


 紫音は、ミズキの携帯と謎の機械をコードで繋げる。その謎の機械は、手のひらサイズの丸っこい物体だった。


「何だか『たま◯っち』みたいな形ですね」


 萌絵が評する。


 その状態で、スピーカーにした携帯で電話をかけるミズキ。


 プルルルル……プルルルル……ガチャ。


「もしもし?お母さん?」


 声をかけるミズキ。一応ユニ達は声を出さない様にシーッというジェスチャーをし合っていた。


「ミズキ……あなた最悪な状況にかけてきたわね……。もっと早く、あなたを避難させるべきだった……」


 女の人の声がする。この声の主がミズキの母なのだろう。


「どういう事?避難って……」


 その時である。


 ドカァン!という音がすぐ近くから聞こえてきた。


「紫音!逆探知の結果は?」


 ユニが聞くが、紫音は首を縦に振って言う。


「いや、その必要ないな。なぜなら……」


 紫音が言い終わる前に、ユニは慌てて窓の外を見る。


「そんな……家の前が……」


 ユニの家の前が、まるで絨毯爆撃にさらされた後の様になっていた。


 その一瞬で、ユニはあらゆる可能性を考え、一つの結論に達する。


「悪魔か!なあそうだろ!?」


 ユニはルーシーに聞く。


 そんなルーシーは青ざめながら言う。


「アイツは……ヤバい……強さなら、今のおれをも上回るかも……」


「ルーシーより強いかも知れないっていうのか……」


「最強悪魔」をも上回るとは一体何なのか……。


 ユニ達は、いきなり暗くなった空を見上げるしかなかった。


 悪魔との契約条項 第百七十四条

悪魔は人間の肉体を得ると、悪魔の力のあらゆる面で制限を受ける。

読んで下さりありがとうございます。

いいね、感想などをよろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ