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契約その171 ニューイヤーagain!

 年越しそばを食べている最中の事である。


「巫女のバイト?またか」


「そうなの。三が日は人が増えるから、どうしてもやって欲しくて」


 曰く、こうしてミズキがみんなと一緒にいれるのは、神社が敷いたシフト制によるものらしい。


 そうでもしないと、あまりに多忙で、神社につきっきりになってしまう。


 なので三が日を交代で見て欲しいとの事だった。


 どうにかやって欲しい、だができない人がいるならやらなくても構わないと、ミズキが手のひらを合わせてお願いする。


「突然でごめんなさい。去年はあんな事があったから、今年はやめようかと思って……」


 去年はミズキの誘拐事件が起きている。なので今年も頼もうとは思わなかったが、神社の圧力に負けたらしい。


 ユニ達が参加した去年の客入りがすごくよかったからである。


 ユニは謝るミズキをなだめるのだった。


「力になりたいのは山々なんだけど……」


 ルアは三が日にも仕事があり、アキやアゲハは別のバイト、どれみは火殿グループ関係者との新年の挨拶回りがある為時間が取れないとの事である。


 加えて丁井先生も、教師はアルバイトは禁止だという事らしい。


 なのでその他のみんなで神社で働く事になった。


 参加できない者達は含めずに言えば、ユニ達は十三人。


 三日間、三つのシフトを四人で回し、ミズキは全てのシフトに参加する事になった。


「分け方はどうするの?」


 由理が聞く。


「それは当然……」


 ユニは拳を出しながら言う。


「最初はグー、じゃんけん……」



 そしていよいよ訪れた元旦。


 元旦は一番忙しくなるので、その分給料も高めだった。


 そしてメンバーは由理、藤香、萌絵、風月である。


「ここが把羅神社……大正時代とそんなに変わらないなあ……」


 風月が呟く。


「少なくとも明治時代から建物は変わらないみたいだからな」


 藤香が言った。


 すでに神社は多くの参拝客で賑わっていた。


 四人はその人混みを避ける様に、ミズキに言われた通り社務所へ向かう。


 社務所の中では巫女服を着たミズキが待っていた。


「時間ピッタリ。来てくれてありがとう」


 それからミズキは四人に自分と同じ巫女服を渡して言う。


「やり方自体は去年と変わらないからね。掃除をしたり、参拝の案内をしたり、接客だったり……」


 四人はミズキに箒を持たされた。これで落ち葉を掃いて欲しいという事である。


 当然、五人以外にも従業員はいる。大半はユニ達の様なアルバイトである。


 巫女服を着れるのもあってか、案外人気のアルバイトらしい。


 四人は渡された箒を手に、境内の掃き掃除を始めた。


 真冬だが、だからこそか落ち葉は多い。


 掃いた落ち葉は一箇所に集めてゴミ袋に入れる。それをずっと繰り返す事になる。


「去年もこんな感じだったんですか?」


 そんな流れ作業の中。風月がこっそりと由理に聞いた。


「いや……去年は正直それどころじゃなかったというか……」


 あの時はルアの身代わりとしてミズキが攫われた。


 アジトに乗り込んだユニ達は、ルアの母が率いる宗教団体と戦ったのである。


「変わらずすごい事してたんですね」


 風月はため息をつきながら言った。


 四人は、そのまま黙々と掃き掃除をするのであった。


 時刻はいつの間にかお昼になっていた。


「お腹空きましたね〜」


 萌絵がお腹を抑えながら言う。


「お昼どうするんだ?」


 藤香が言う。


「大丈夫。今すぐにでもやって来ると思うから……」


「やって来るって、何がですか?」


 風月が聞く。


 その時である。


「おーい!みんなお待たせだ!」


 ユニがホバーボードに乗ってやって来た。やって来るとは彼女の事だったのである。


 ユニは風呂敷に包まれた重箱を持っている。


「みんなお昼だぞ。どれみが取り寄せてくれた高級モチ米を使ったお餅だ」


 ユニは風呂敷を外し、みんなに見せる。


「これがあんこで、こっちがきな粉。下の段のこれが醤油で、こっちはみたらしだな。これでいいのかな、由理」


 ユニは由理に聞いた。どうやら彼女が準備していたらしい。


「うん。OK。ありがとう姉さん」


 由理がお礼を言う。


 早速社務所に行き、重箱を広げた。


 ミズキも含めて箸を用意するユニ。


 そしてみんなは大きな声で言う。


「いただきます!」


 高級のモチに舌鼓を打つ六人。


「はふっ……熱っ……!しかし、この寒空の中持っていってよく冷めなかったな」


 藤香(猫舌)が暑がりながらもアンコモチをかじりながら聞いた。


「紫音に頼まれたんだ。実験も兼ねてこの保温用の重箱で持っていけってさ。実験は成功だったって後で伝えておくよ」


 醤油が染み込んだモチを一口で食べながらユニが言う。


 すると、萌絵がある事に気づく。


「あ、そういえばここにテレビありますね。ちょっとつけてみていいですか?」


 確かに、だいぶ型落ちしたものだがテレビがあった。


「別に構わないよ。リモコンはそこにあるから」


 ミズキがテレビのそばを指差す。


「じゃあ、スイッチオン!」


 萌絵がスイッチを押してしばらくしてからテレビはついた。画質は悪いが視聴に影響はない様だ。


「あ、ルアが出てる」


 由理が指差す。


 どうやらルアはお正月のトーク番組に出演している様だ。低画質でも、赤い着物が眩しい。


「頑張ってるな。月並みだけど」


 藤香が呟いた。


「あ、そうだ」


 ユニが思い出したかの様に言う。


「六人で食べた重箱の下にもう一段あるだろ?それ、他のバイトの人達に分けてあげてよ。おれ達だけが食べるのも勿体ない」


 ユニが最下段の重箱をミズキに渡しながら言う。


「そろそろお参りして帰らなくちゃ」


 ユニはいそいそと準備をし始める。


「何てお参りするの?」


 ミズキが聞く。


「おれの彼女達みんなが幸せになります様に」


 ユニは即答する。


「やっぱり」


 由理が少し呆れ、そして嬉しそうに言う。


「じゃあまた後でね」


 ユニは社務所のドアをゆっくりと開けて出ていくのだった。


 その後ろ姿を見届けて、ミズキは静かに言う。


「今年もいい年になりそう」


 悪魔との契約状況 第百七十一条

一年の計は、元日にある。

読んで下さりありがとうございます。

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