契約その169 超豪華!火殿グループのXmas party!
クリスマスから遡る事一週間前の事である。
「ヘェ……火殿グループ主催のクリスマスパーティか」
どれみから直接招待状となるクリスマスカードを貰ったユニが言う。
クリスマスカードには、可愛くデフォルメされたサンタクロースとトナカイが描かれていた。
「そうなのですわ!毎年火殿グループのお偉様方やスポンサーの皆々様を招待して行うクリスマスパーティなのですが」
そう言いながら、どれみはみんなに写真を見せた。
そこには火殿家の広大な庭の中央に巨大なクリスマスツリーが建てられており、その周りで楽しむ人々の姿が映っていた。
写真を見るに、どうやら立食パーティらしい。
「へー楽しそうだ」
写真を見たルーシーが言う。
「今年はお友達も連れて来ていいと言われたので、皆さんをご招待したのですが……」
「成程……」
勿論、ユニ達の心は一つだった。
「わかった。その招待受けるよ。ね、みんな」
みんなは大きく縦に首を振るのだった。
「ありがとうございます!」
どれみは、改めてみんなにお礼を言うのだった。
―――そして当日。
「何か窮屈ですね」
みすかがぼやく。
彼女を含め、全員が煌びやかなドレスに身を包んでいた。
「それは……こんな豪華なパーティに普段着で行くわけにもいかないでしょ」
ヒナがたしなめる。
「申し訳ありませんわ。火殿家にも一応『見栄』というものがありまして……」
どれみが謝罪する。
慣れないドレスに身を包み、ユニ達は火殿家を訪れるのだった。
午後六時半。
ユニ達は火殿家に着いた。
「やっぱり大きな家だな」
ユニが呟く。
ユニ達は貰った招待状を受付に見せ、会場となる火殿家の庭に足を踏み入れた。
パーティは午後七時開始の予定なので、早く来すぎたと思ったユニ達だが、すでに多くの人達が庭を訪れていた。
「結構盛り上がってるもんなんだな」
ユニは辺りを見渡しながら、素直な感想を漏らす。
「ええ、それだけならいいのですが……」
どれみが言葉を濁す。
よく見てみれば、様々な場所で名刺交換が行われている様だ。
様々な火殿グループの関係者が参加するこのパーティにおいて、新たなコネクションを得ようと躍起になっているのだ。
「今日ぐらい仕事とか忘れられないのかな」
ユニがぼやく。
「むしろ仕事仕事言ってるから、ここまでのし上がって来たって言えるのかも知れないな」
メイが言う。
どれみも挨拶回りに忙しいらしく、どこかに行ってしまった。
令嬢も色々大変である。
それでも午後七時の乾杯の時までにはユニ達の元へ戻って来てくれた。
午後七時になり、現火殿グループ総帥でどれみの父、「火殿其太郎」が乾杯の音頭を取った。
参加者は一様にグラスを持ち上げる。
丁井先生を除くユニ達は、当たり前だがジュースである。
「それでは、乾杯」
「乾杯!」
其太郎の音頭に合わせて、参加者はグラスを高く持ち上げるのだった。
と言っても、飲食物が解禁されただけで、周りの人がやっている事はあまり変わらない。
ほとんど全員が自社を売り込もうと躍起になっている様だ。
ユニ達はと言うと、純粋に飲み食いを楽しんでいた。
誰かお偉いさんに話しかけられる事もない。こんな子供達と話してもメリットなしと見なされているのだろう。
「全員未来あるダイヤの原石なのに、勿体ねェな……」
ユニはチキンを頬張りながらぼやいた。
「何だよ、おれ達がアイツらに取られたいとでも思ってんのか?」
ルーシーが話しかけて来た。右手にグラス、左手にフォークを持っている。
「別にそんなわけじゃないけどさ、何か軽んじられているみたいでイヤだ。みんな魅力的なのに」
ユニはオレンジジュースでチキンを無理やり流し込みながら言う。
「お前の価値とアイツらの価値じゃ違うんだろ。それに見てみろよ。アゲハや紫音は積極的に大人と話してる」
アゲハは自分のファッションを売り込む為、紫音は資金の調達の為、それぞれ動いている様だ。
「ここでコネクションを獲得すればいいって判断したんだろうな」
「そうなのか……」
ユニは静かに呟く。
「だがおれ達は……」
ルーシーが何か言おうとしたその時である。
「よー教え子共よー!」
丁井先生がユニとルーシーの背後から肩を組んできた。
「先生!?」
やはりというか何というか、めちゃくちゃ飲んでいる様だ。
「いやーいい飲みっぷりだってホメられちゃってさー。あっち行ったりこっち行ったりで!もー大変よ」
「キミらも飲むか?」と丁井先生はユニ達にグラスを近づけて来た。
「いやいやいや!未成年!飲みませんよ!?」
ユニ達は慌てて否定した。
「えーつまんないのっ!」
丁井先生はぶーっと頬を膨らませるが、また飲みに誘われたのか、どこかに行ってしまった。
「たまには食べるだけっていうのもいいかも」
由理もしきりに料理に舌鼓を打っていた。
「こんなんだっけ。クリスマスって」
ユニが言う。
「まあ、たまにはいいだろ。こういうのも。ほら!」
ルーシーが指を指す。
指差した先には降ってくる白いもの。雪である。
「へーいいな。ホワイトクリスマスか」
雪が降ると言っても、この降り方だと積もる程は降らないだろう。
「おーい!ユニー!ルーシー!ここにもっとうまいものが……」
みんなの声が聞こえる。
「行こうか。みんな呼んでる」
ルーシーはそう言うと、ユニの手を掴む。
二人は走りながら、みんなの元へ行くのだった。
悪魔との契約条項 第百六十九条
未来は、みんなの手の中にある。
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