表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/299

契約その162 おれ達のfuture!

 義屋楽人の王国は消滅した。


 アキは再び生徒会長に復帰し、義屋も再び副会長になった。


 アキが「やりすぎない自分の正義の貫き方」を教えるらしい。


 ユニ達と義屋以外から義屋の王国についての全ての記憶も消滅し、物的な被害も火殿グループが修復した。


 なので王国、そして悪魔に関する全ての証拠はなくなったと言える。


 かくして学校は元に戻り、ユニ達にも日常が戻って来たのだった。


 そんなある日、ユニ達はホームルームであるプリントを配られた。


 担任の丁井先生がクラスに言う。


「これは進路表といって、現時点での進路を書くものだ。進学か就職、進学ならどういった学校に行くのか書いてくれ」


 と言っても、晴夢学園は県内一の進学校である。だいたいの生徒は進学を選ぶ。


 それはユニも例外ではなく、暫定として第一希望に「進学」と書いた。


 その後も、いつも通り授業をし、帰路に着くのだった。


 ユニが帰ってくると、どれみだけが出迎えてくれた。


「お帰りなさいですわ」


「あれ?今日はキミだけか」


 普段は、特に予定のない娘は出迎えてくれるのだが、どれみ一人だけというのは珍しい。


「予定が合わないって言っても、普段は誰か二人以上は出迎えてくれるんだけどな」


 荷物を下ろしながらユニが呟く。


「それは申し訳ありませんわ。とは言えわたくしもそこまでヒマというわけではありませんが……」


 よく見てみると、どれみは手にシャーペンを持っていた。


「そうか。そうだったな」


 それを見たユニは全てを察した。


 どれみは高校三年生、受験勉強も大詰めである。


「学力的に無理のない所を選んだ」とどれみは言うが、邪魔するのも悪い。


 ユニは、どれみに頑張ってくれ、応援してるとエールを送ると、自室へと戻っていった。


「将来か……」


 ユニは自室のイスに座ると、机に突っ伏して考える。


 あと三ヶ月程で二年になるが、ユニは契約の代償で女体化した。


 その時は瞬間瞬間が大変で、とても自分の将来に目を向ける余裕などなかったのだが、今こうして落ち着いて考えてみると……。


 どうするのが正しいのだろう。ユニは決意している。彼女達全員を幸せにすると。


 では幸せにするにはどうすればいいのか?自分はどんな道を選ぶのが正解なのか?


 どれみに聞こうとしたが、勉強の邪魔はできない。第一、この問題は自分で考えるべきだとユニは思った。


 夕食時。瀬楠家ではある噂で持ちきりだった。


「『刀大』を受験するって本当!?」


 七海がどれみに聞く。


「ええ。担任の先生にも合格できると太鼓判を押されましたから」


 どれみが笑顔で答える。


「刀大」とは、「刀凶大学」の略である。


 名前こそかなり物騒だが、この国で一番頭がいいと言われる大学である。


「もう願書も提出しまして、いよいよ大詰めといった感じですわ」


 どれみは、願書のコピーを持って来てみんなに見せた。


 そこには「刀凶大学 商学部」と書かれており、正真正銘本物の願書らしい。


「仕事もしながらの勉強なので、どうなるかわかりませんが……」


 どれみが一抹の不安を口にする。


 しかしその不安をも、ユニは受け止めた。


「大丈夫。きっと受かるよ」


 ユニはそう確信を持って答えるのだった。


「それで、みんなはどうするんだ?進路」


 アキが聞く。


「それは……」


 高校生達は言い淀む。


 中学生は、余程の事がない限りはそのままこっちの高校へ進学するだろう。


 だが高校生はそうはいかない。晴夢学園系列に大学はないからである。


 いよいよ本当に自分の進路を決めなければいけなくなる。


「私は、大学でも陸上を続けるつもりだよ。何を隠そうある体育大学からスカウトが来ててね」


 言い出しっぺの七海が言う。


「まあでも、大学が遠いから寮生活にはなるけど……」


 七海は少し声のトーンを落として言った。やはり離れたくはない様である。


「それでも、挑戦したいんだ。たとえ離れる事になっても……」


「心は一つだから」


 七海は胸の辺りをドンドンと叩きながら言った。


「そうか……」


 ユニはゆっくりと呟く。


「ウチはね、ファッション系の芸術学校を目指してるの。いつか自分のブランドを作るんだ!」


 七海のお陰でハードルが下がったのか、アゲハが笑顔で語った。


「僕は、まずは『初恋エターナル』の完結。大学は漫画系かな。アゲハが目指す大学に科があるらしい」


「ぼくはゲーム……まあ、Vライバーを大学でも続けるつもり。そんな動画系の学校も最近はあるから……」


 藤香とメイはそれぞれ言った。


「みんな、それぞれあるんだな。目標が」


 ユニが呟く。


 みんなはすごい。もうすでにそれぞれの将来の目標を決めて努力しているのだ。


 そんな中、ユニはどうだろうか。勉強はできて、メモ魔で、腕っぷしもあるが、それ以外に取り柄はない。


「おれは一体、どうすればいいんだろう。何をして、何になればいいのか……」


 ユニのやる事は最初から決まっている。「全ての彼女を幸せにする」事である。


 では、その為には具体的に何をすればいいのだろうか。


 考えてもわからなかった。やはり、この先考えていくしかないだろう。


 時期は二年生の十二月。冬の寒さが身に染みる。


 悪魔との契約条項 第百六十二条

自分の未来は、自分の手で選び取る事ができる。

読んで下さりありがとうございます。

いいね、感想などをよろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ