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契約その160 本物のhero!

 ユニの叫びに、洗脳されていた彼女達は愛と命令の狭間で苦しんでいた。


 その姿を見ていたルーシーが言う。


「悪魔の力は人間の思いと結びつく事で大きな力を得られる……!つまり、裏を返せば悪魔の力と人間の思いが相反する事で!その力は弱まるんだ!」


「本当か!?」


 ユニはルーシーの方を振り返って聞く。


「ああ!みんな戦ってるんだ!」


 ―――みんな……頑張れ……!


 ユニは祈る様に見ていた。


 しかし、それを黙って見ている義屋ではなかった。


「お前ら……!お前らの主人はこのおれだぞ!裏切るのは許さん!」


 その言葉に、彼女達は負けそうになる。


「負けるな!みんな!」


 叫ぶユニ。


 しかしここで、義屋はある事に気づいた。


 ()()()()()洗脳してしまえばいいのである。


 その事に気づいたユニは、ルーシーに頼む。


「ルーシー!契約だ!あいつおれを洗脳させようとしてる!」


 ルーシーもその事に気づき、慌ててユニと契約する。


 契約の内容はいつもの様に「悪魔の力を分け与える事」。


 タッチの差で契約の方が早く完了し、洗脳を跳ね除けた。


「何……?」


 動揺する義屋。


「力を得れば負けねェよ……」


 ユニは呟いた。


 それからユニはみんなの方に向き直って言った。


「頼むみんな!目を覚ましてくれェ〜!」


「う……うわァ〜!」


 その時、義屋の持つ「晴夢学園法度」が浮かび上がり、ページを開く。


 開かれたページには「生徒会メンバーは『瀬楠由仁の彼女達とする。生徒会長に逆らう事はできない』という文言が書かれていた。


 その一節は、炎を上げて燃える様に消滅し、跡形もなくなった。


 洗脳を打ち破ったのである。


「あ……あれ?一体何を?」


 ユニの彼女達はようやく正気に戻ったのだった。


「よかった……よかった……本当に……よかっ……た……」


 ユニはそのまま大きな音を立てながら倒れた。


 そこで限界だったのだ。


「ユニ!」


 彼女達が駆け寄った。


「とりあえず、悪魔の力で応急処置だ」


 ルーシーが処置を施し、ユニは何とか復活した。



「ユニ!」


 彼女達はユニを気遣う。


「一応言うが応急処置だからな。なるべく早くに医師の診断を受ける事を提案する」


 ルーシーが言った。


 それを、彼女達は安堵した様な様子で見るのだった。


 そんな中、当然激怒している者がいる。


 義屋である。


「許さん……おれの支配を抜け出すなど……!」


 だんだんと情緒が不安定になっていく義屋。


 それを見たユニは、ルーシーに聞く。


「今のおれなら、『悪魔の力』は使えるか?」


「ああ。使える!」


 ルーシーは力強く答えた。


 そう言い切った後で、ルーシーはユニに聞く。


「倒すのか。あの男を」


「ああ。落とし前もあるしな」


 ユニもまた力強く答えた。


 それからユニは、拳を握りしめながら、義屋の前に立って言う。


「義屋楽人、お前の罪は色々ある。自分勝手に学校を支配した事、そして彼女達に言い表せない程の心の傷を負わせた事だ……!」


 ユニを前にした義屋は言う。


「だから何なんだ。お前もまた『おれは悪くない、悪いのは義屋楽人の方だ』って言うのかよ……!」


 それは勢いも威厳もない、今にも消え入りそうな細い声だった。


 義屋楽人。彼は本当は、過去の自分に謝って欲しかったのだった。


 社交辞令ではない、みんなからの心からの謝罪を。


 その事に気づいたユニは、拳を振り解くと、義屋にゆっくりと頭を下げる。


「ごめんなさい。そんなキミの思いに気づかなくて。キミの過去全てを代表して、謝ります。ごめんなさい」


 それは、暴力ではない「優しさ」という力で敵を倒す、本物のヒーローの姿だった。


 それを聞いた義屋は動揺する。


「そんな……今更そんな……」


 その時である。


「そうはさせねェよ……」


 突然現れた「サタン」が、義屋の体に入り込んだ。


 ズキン!


 悪魔に体を乗っ取られた義屋を、謎の頭痛が襲う。


「うわ……何なんだこれ……うわ……うわァァァァ!」


 突如、義屋の体は生徒会室を突き破り、どこかへと飛んでいってしまった。


 空いた穴から、校庭に落ちた事が確認できた。


 急いで校庭を訪れるユニ達。


「フザケルナ……ココハオレノ王国(オウコク)……ココハオレノ楽園(ラクエン)……邪魔(ジャマ)ヲ……スルナァァァ!」


 義屋はそう叫ぶと、その体は何やら謎の黒いオーラに包まれ、異形へと変化していった。


 体は二十メートル程に巨大化し、手足には鋭い爪、口からは牙が覗いている。


 おおよそヒーローとは程遠い姿だった。


「これは一体……」


 その姿を見上げながら、ユニ達は驚く。


「悪魔の力の暴走だ……下級悪魔だと大した事はないが、上級悪魔と契約して体を貸せば、こんな異形にもなる……」


 ユニとルアは、自分達がかつて対峙したルアを攫った厄介ファンを思い出していた。


 アレも今思えば暴走していたのかも知れない。


「ハアハア……オ前達は処刑ダ……ココハオレノ王国ダカラダ……」


 義屋が、その巨体を利用して拳を地面に叩きつける。


 ズドォン!という重い音が辺りに響き、地面にはクレーターとヒビが入った。


 これはどうにか避けたユニ達だが、その威力に戦慄する。


「どうする……?あんなの食らったらひとたまりもないぞ……」


 果たしてユニ達は、義屋楽人をも救い、学校に真の平和をもたらす事はできるのだろうか。


 悪魔との契約条項 第百六十条

悪魔の力が暴走すると、契約者の体は異形の姿に堕ちる。

読んで下さりありがとうございます。

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