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契約その159 ユニ vs heroineの決闘!

「生徒会として最初の仕事だ。そいつを叩きのめせ」


「仰せの通りに……」


 義屋の言葉に、ユニの彼女達はそうとだけ呟くと、ユニに襲いかかって来た。


 風月が鞘から刀を抜き、迫って来る。


 刀と言ってもただの刀ではない。


使用者の「闘争心」に反応し、敵を倒すサポートをする紫音の発明品、"(でん)()(ほう)(とう)"である。


 数日前、紫音がそのテストを行っていたのを、ユニは覚えていた。


 曰く、剣術の才能がなければ扱い切れない様で、使用者として以前から剣道をやっていた風月が選ばれたわけである。


「これで、皆さんを守れますね!」


 使用者に選ばれた風月は笑顔でそう答えていた。


 その風月は、今はただ無口無表情のまま刀を振るう存在になっていた。


「ピピ……」


 "電化の宝刀"からセンサーの音が鳴る。ユニを「敵」として認識したのである。


 風月は前傾姿勢でユニへと突っ込んでくる。


 ユニは咄嗟にガードしたはずなのだが、ガードごとぶち破られて床に倒された。


「ぐ……」


 使用者の「闘争心」に反応する仕様上、洗脳されている状態では"電化の宝刀"はほとんど意味をなしていないはずである。


 それなのにユニを床に倒す程の威力を誇るという事は、それだけ風月に剣の才能があるという事なのだ。


「く……ハアハア……」


 どうにか立ち上がるユニに、今度は由理とルアが襲いかかる。


 二人は軽やかなフットワークで、ユニを追い詰めてゆく。


 それらは何とか捌き切ったユニだが、そこに丁井先生の蹴りがユニの腹にヒットする。


「ぐ……!?」


 うずくまるユニに、彼女達の容赦ない攻撃が襲いかかった。


 その様子を、ルーシーは見ている事しかできなかった。


「キミは何もするな。戦いに来たわけじゃないから」


 直前までユニからそう言い聞かされていたからである。


 しかし、見るに耐えられなくなったルーシーは、その約束を破り、彼女達へ向かっていく。


「いい加減にしろよ!いくら洗脳されてるからって……お前らは辛くないのかよ!」


「ムダだ。こいつらにお前達の言葉は届かない」


 何とか止めようとするルーシーに、義屋は嘲る様に言う。


「ルーシー!」


 攻撃を受けながらも、ユニはルーシーの名を叫び、じっと見る。


「―――!そうか!」


 全てを察したルーシーは、彼女達ではなく義屋の方へと向かっていった。


 この悲劇を引き起こしているのは、義屋が使う悪魔の力である。


 悪魔と、その力を使う「契約者」は、同じ悪魔の力でしか倒せない。


 しかしそれは、裏を返せば()()()()()()()、義屋を倒せるという事である。


 ルーシーは義屋に向かって拳を振り上げる。


「お前を倒せば!万事解決だろ!」


 義屋はそれに狼狽える事なく、また指を鳴らす。


 その瞬間、ルーシーの拳は止まった。


 操られているアゲハ、藤香、どれみ、モミ、萌絵、みすか、ヒナが、義屋を大の字になって守ったのである。


 義屋は、彼女達の中で戦えない者達を自分を守る盾に使ったのである。


 ルーシーも彼女達を殴る事はできなかった。


 その時である。みんなを殴れず悩むルーシーの顔を、何者かが蹴り飛ばす。


「おっと(わり)ィな」


「サタン」である。


 その蹴りで吹っ飛ばされたルーシーだが、空中で体勢を整えて着地した。


「お前が仕掛け人か!『サタン』!」


「おっと……えれェ奴怒らせちまったか……」


「サタン」はそう言いつつも、飄々とした雰囲気を崩さなかった。


「お前はユニに因縁はないはずだぞ!」


 ルーシーは「サタン」を指差して言う。


「因縁はなくてもよ……依頼受けたんだわ……。天使の奴らに」


 それを聞いたルーシーは驚く。


「天使だと!?益々わけが……」


「こっちばっか気にしてる場合かよ。もうボロボロだぞ。お前の思い人」


 ルーシーの言葉を遮る様に、「サタン」が言う。


 その瞬間、ユニがルーシーの足元まで吹っ飛ばされて来た。


「ユニ!」


 ユニは全身血まみれで、生きてるのが不思議な程だった。


「ごめんルーシー……やっぱり攻撃できないや……」


 ユニは息も絶え絶えの状態でルーシーに言う。


 ルーシーも彼女達を攻撃できなかったのである。


 ユニが攻撃できなかったのは当然だ。


 それを理解していたルーシーは、ユニに無理やりにでも笑顔を作って言った。


「そうだよな。それがお前だ。仮にお前が邪魔だからって自分の彼女達をブチのめす様な奴なら、おれもホレたりしなかったよ」


 その言葉に少し安心したのか、ユニは少し笑顔を見せた。


「だから……みんなの心に訴えかける。できるかどうかは……わからないけど……」


 ユニはヨロ……と立ち上がりながら言った。


「できるさ。お前なら」


 ルーシーは断言した。


 義屋も見ているだけではなかった。


「お前達、そいつを羽交締めにし、ブチのめせ」


「仰せの通りに」


 彼女達はそう言うと、七海とミズキがユニを捕まえ、羽交締めにする。


 それに、メイが銃を構えた。彼女が引き金を引くと、銃口からグローブが飛び出し、ユニを殴り飛ばしたのであった。


「ぐっ……ハアハア……」


 殴られたユニはその場で膝をついた。


 しかし間髪入れずに、七海とミズキがユニをまた立たせる。


「ユニ!」


 ルーシーは叫んだが、次の瞬間、自分がなすべき事を瞬間的に理解した。


「サタン」に向かっていくルーシー。


「おれは『最強悪魔』……。何で天使がユニを狙うのか……それはわからないけど、お前はおれには勝てない」


 ルーシーの言う通りである。「サタン」では「最強悪魔」たるルーシーに勝つ事はできない。


「このままイヤと言う程ボコボコにしてもいいんだぞ。お前はそれだけの事をしたんだ」


 そうルーシーに詰められては、「サタン」も撤退するしかない。


「わかったよ。お前にゃ敵わねェ!帰るわ!」


 あっさり降参する「サタン」。それから義屋に声をかけた。


「義屋楽人。あとは適当にやりな」


 そう言い残し、「サタン」は去って行った。



「ハアハア……目を覚ましてくれみんな……」


「サタン」が撤退した後も、ユニはみんなに語りかけていた。


「ムダだ。言ったはずだぞ。そいつらにお前の言葉は届かない」


「サタン」が去っても、まだ戦力がいる義屋は、その余裕を崩さなかった。


「そいつを殺せ!」


 彼女達に指示を出す義屋。


「仰せの……通りに……」


 羽交締めにされたユニに、アキが蹴りを叩き込んだ。


「ぐ……ハアハア……痛くないな……。おれを攻撃しないといけないみんなの痛みに比べれば……こんなの屁でもない……」


「痛みだと!?そんなものこいつらにはない!洗脳されてんだから!言ってやれお前ら!」


 青筋を立てながら義屋が叫ぶ。初めて取り乱した様である。


「我々は生徒会として義屋様に仕える身……痛みなんかない」


 みんなは口を揃えて言った。


「そうか……じゃあよ……」


 ユニはボロボロになりながらも叫ぶ。


「何でみんな……そんなに泣いてんだよ……!」


「!?」


 みんなは、一人残らず泣いていた。


「みんなこんなに優しいのに……こんな事されて無事でいられるわけがない……。だからさ……もう……」


 そしてユニは手を伸ばして言う。


「もう……我慢しなくていいんだよ……?」


 それを聞いたみんなは、突然苦しみ出す。


「う……うわ……アアアアア!」


 愛と使命の間で苦しんでいるのである。


 果たして、みんなは洗脳を克服する事ができるのだろうか。


 悪魔との契約条項 第百五十九条

人間の思いが強まれば、悪魔の契約をも無効化できる事がある。

読んで下さりありがとうございます。

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