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契約その158 誕生!new生徒会!

 ルーシーは、生徒会室に乗り込んだユニを何とか家まで撤退させた。


 家に戻ってきたユニは、ルーシーに頭を下げて謝罪する。


「ごめん。一人で突っ走って。そうだよな。悪魔が相手になるなら、力じゃ敵わないよな」


「いいんだ。気にするな。飛び出したい気持ちはおれにはよくわかる」


 ルーシーはそう言って、ユニの謝罪を受け入れた。



「状況を整理しようか」


 リビングのダイニングテーブルに座った後でそう言った。


 それに続いてルーシーも座る。


「まず最初に、アキの生徒会長の座があの義屋楽人に奪われた。義屋楽人は悪魔と契約し、その力で学校を支配した」


 ここまではOKかとユニが聞き、ルーシーは首を縦に振って答えた。


「そして奴は『晴夢学園法度』なるものを作り、みんなを含めた生徒教職員全員を自分の意のままに洗脳したんだ」


「そしてそれを止めるには、奴か、もしくは奴と契約した悪魔か、そのどちらかを倒さなければならない」


「つまりどの道、また学校には乗り込まないといけないわけか……」


 ルーシーがうーむと唸りながら言った。


「乗り込むも何も、登校は絶対と『晴夢学園法度』には書いてある。おれとキミには『法度』の力が通用してないが……」


 行かなきゃ怪しまれるだろうと、ユニは言うのだった。



 翌日の朝五時。ユニの朝は早い。彼女のほとんどがいなくなっても、それは変わらなかった。早速リビングへ降りるユニ。


 リビングには、すでに由理が朝食の準備をしていた。


「おはよう姉さん」


「ああ、おはよう」


 そんな会話をしながら、ルーシーと風月がリビングに降りてくる。


 しっかり手を合わせていただきますと言った後、朝食を食べる。


 人数が減った食卓は、寂しいものだった。四人は何かを話すわけでもなく、淡々と朝食を口に運んでいく。


「味気ないな……」


 ユニが呟く。


「いつもならここでみんなと騒いで、それをアキが注意して……なのに今は……」


「安心しろユニ。それら全部取り戻す為にケリをつけるんだろう」


 ルーシーが慰める様に言った。


 その光景を、由理と風月は怪訝そうに見つめるのだった。


 彼女達も洗脳されているのである。


 そしてついに登校の時間になった。


「そうだユニ。やらなくちゃいけない事がある」


 ルーシーはそう言うと、指をパチンと鳴らした。


 するとユニの茶髪が黒く染まる。


「何をしたんだ?」


 自分の髪を手鏡で見ながら、ユニが聞く。


「『晴夢学園法度』に書かれてるだろ。黒髪以外禁止って。そのままだと目立つ可能性がある」


 確かにその通りである。


 ルーシーは自分の髪も黒く染めた。


 その後、四人は家を出て学校へと向かうのだった。


 由理と風月の二人は、無口無表情のまま歩いている。これも「法度」の「登下校中は私語禁止」によるものだろう。


 学校も変わった。校舎には、義屋の顔写真がデカデカと飾られている。まるで独裁国家だ。


 登校すると、すぐに全校集会が始まる。「晴夢学園法度」によれば、これは毎日やる様だ。


 そして全校集会にて「晴夢学園法度」の暗唱をした後、普通に授業をするのである。


 という事が、「晴夢学園法度」には明記されているのだが、今日はそんな穏やかには終わらなかった。


 壇上に上がった義屋が、マイク片手に言う。


「みんなに重大な話がある。新たな生徒会の設立についての話だ。おれ自らが選んだ、精鋭達だ。壇上に上がってきてくれ」


 義屋に呼ばれて上がってきたのは、十数人の女子生徒達。


 その姿を見たユニは、驚愕の表情を見せるのであった。


 壇上に上がったのは、何とユニの彼女達だった。


「彼女達が新しい『生徒会』だ。よろしく頼む。なあ。みんな」


「はい。義屋様の仰せの通りに」


 まるで生気のない、ロボットの様に彼女達は返した。


 その様子を見て、体育館はユニとルーシーを除いて大盛況となったのであった。


 全校集会が終わった後は当然普通に授業をするのだが、ユニとルーシーはいてもたってもいられなかった。


 二人は、授業をサボってまで生徒会室に乗り込んでいく。


 昨日ユニが蹴破った生徒会室のドアは、完璧に直されていた。


 こんな完璧な直し方ができる人間を、ユニは一人しか知らない。


「紫音か……」


 ユニは、昨日よりもは激しく、再びドアを力の限り蹴り飛ばした。


 義屋は昨日と同じ様に生徒会長の席に両肘をついて座っていた。


「てめェ……一体何のマネだ!」


 ユニは義屋を怒鳴りつける。


「何のマネかだと?彼女達は()()()()()()おれに忠誠を誓った。ただそれだけだ」


「そんなわけあるか!あの娘達がおれを差し置いて……そんな事を……!」


 飄々と語る義屋に、ユニは怒り狂った。


「そうだ。キミ達に新しい『晴夢学園法度』を渡さないとな」


 そう言いながら、義屋は二つの手帳を二人に投げ渡した。


 ほとんどの文言は変わっていない。しかし、一つ追加された文言があった。


 それは、ユニの彼女達は自らの意思という形で生徒会に参加する事という旨が書かれていた。


「これでわかったか」


 義屋は冷酷に言い放った。


「納得できるかよそんな事……一体何でこんな事を……!」


 ユニは搾り取る様にゆっくりと言った。


「簡単な話だ。おれは、お前が憎いんだ。お前が策を弄したから、おれは生徒会長になれなかった」


 義屋はおもむろに立ち上がると、ユニの方へ歩いていってこう言った。


「お前に復讐する事をずっと考えた。そこで思いついたんだ。()()()()()()()()()()、それが復讐だと」


 義屋は再びイスに座ると、パチンと指を鳴らす。


 すると、部屋の外から十数人の女子生徒が行進してやって来た。


 ユニの彼女達である。


「み……みんな……」


 ユニは青ざめながら呟いた。


 義屋がみんなに命令する。


「この学校で、一番大事な法がある。『生徒会長に逆らわない事』だ。お前達はすでに反逆者。そいつらを排除しろ」


「仰せの通りに」


 彼女達は口を揃えて了解すると、ユニとルーシーに襲いかかってくるのだった。


「何でだよ……何でみんな……こんな事に……」


 弱々しく呟くユニ。


 一方、彼女達の目は爛々と輝いており、それはまるで生物兵器の様である。


 そこには、もはやかつての彼女達の姿はどこにもなかった。


 悪魔との契約条項 第百五十八条

契約次第で、ありとあらゆる人間を、操る事が可能である。

読んで下さりありがとうございます。

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