契約その153 Trick or treat!ハロウィンパーティ!
今日は十月三十一日。ハロウィンである。
「いやー大変だな、渋谷も」
ユニは、夕方のニュースでハロウィンの渋谷の盛況、もとい混乱ぶりを見ながら言った。
そしてその隣でテレビを見ていたアゲハに聞く。
「アゲハはハロウィンの渋谷に行った事あるの?」
アゲハは首を大きく横に振ってから言う。
「ウチは騒ぎたいんじゃなくてみんなで楽しみたいタイプだから。だいたい誰かの家に集まったりしたかな」
「成程……」
「だから、今日のハロウィンはみんなで楽しみたいと思って、ほら全員分の仮装、用意したんだ」
アゲハは紙袋を人数分持って来て、そのうちの一つをユニに渡した。
「もしかしてこれって……」
「そう。ウチの手作り」
「人数分!?全部手作り!?」
ユニは驚くと同時にさすがだと思った。
「夜になればみんな揃うから、そこでハロウィンパーティをしようか」
ユニはそう提案し、早速メッセージ機能で全員にそう連絡するのだった。
そしてその日の夜。
アゲハにそれぞれ紙袋を渡され、彼女達はそれぞれの衣装に着替えた。
「みんなかわいい〜!三日ぐらい夜鍋して作った甲斐あったよ!」
アゲハはスマホで写真を撮りまくっている。
そんなアゲハは猫耳のカチューシャにつけ尻尾、黒いワンピースを着ていた。
曰く、黒猫のイメージらしい。
「この……私は一体何のイメージなんだ?」
ふさふさの獣耳と尻尾姿のアキが聞く。
「何って、狼男……いや女?だよ」
「狼か……へへっいいな……牙吠!」
アキはポーズを取ってみせた。
「おれのは……これ鬼か?」
ルーシーが言う。鬼の角つきのカチューシャをつけさせられている。
「おれは悪魔であって鬼じゃないんだけど」
「まあ、どっちも英語で言えば『devil』だから、いいんじゃないか?」
ユニが言うが、ルーシーはどこか釈然としない様子であった。
「わしのは……」
紫音は白衣にボサボサ髪のカツラに瓶底メガネという姿だった。
「紫音ちゃんはマッドサイエンティストね」
「それってただの事実でしょ」
ヒナが言う。彼女はよくあるお化けの被り物をしていた。
「だいたいわかりますが……わたくしの仮装は……」
どれみは、とんがり帽子に黒いローブにホウキを持たされていた。
「それはもう……ほとんど……」
ナース姿のみすかがどれみの姿を見ながら呟く。
「何って、魔女だけど」
(絶対名前で決めただろ……)
そんな空気がみんなの中で流れた。
そんな空気を察したのか、どれみが言う。
「それはその……名前はたまたま被っただけですわ!」
ともかく、全員分の仮装は出揃った。
「はいこれ。近所に配って来てよ」
由理がみんなにバスケットを一つずつ渡す。
「何だいきなり……これは……」
バスケットの中には、大量のアメやチョコ、ビスケットが入っていた。
「町内会でね、近所の子供達にお菓子渡そうって話になったの。それで人数が多い私達に話が来て……」
そんな近所のおばさん達の圧力に屈したらしい。
「勿論私もやるし、何なら私が一番多いし」
ユニ達のバスケットは一人一つなのだが、由理は三つ持っていた。
「この辺そんなに子供多かったっけ……」
ユニがぼやく。
「余った分はこっちで貰っていいって」
由理が補足した。
ユニは、ため息をつきながらもこう言った。
「しょうがないな……頑張るか!」
それを聞いた彼女達も、「ユニが言うなら……」とやる気になるのだった。
ユニ達は方々に散って、近所にお菓子を配りに行く。
カボチャの被り物をしたユニは、由理から渡されたメモに従ってある家のチャイムを鳴らす。
その家の子供が出てくると、ユニはバスケットを差し出しながら笑顔で言う。
「ハッピーハロウィン!好きなお菓子を取ってね」
ユニ達は十八人もいるので、お菓子配りはすぐに終わった。
「みんなお疲れ様」
由理が労う。
「本当に大変だったよ」
ルアがぼやく。
ルアのコンセプトはゾンビメイドなのだが、途中でやんちゃな子供にもみくちゃにされたらしい。
髪もぐちゃぐちゃで服も所々破れていて、本当のゾンビみたいになっていた。
「そのせいで次の家に行ったらめちゃくちゃ怖がられたんだ。怖がられるなんて初めての経験!」
ルアがぼやいた。
そんなルアに、みんなは同情するのだった。
「とにかく、みんなお疲れ様ね。ハロウィン料理用意してるから」
「ハロウィン料理?」
あまり聞き慣れない単語に、ユニ達は訝しむ。
その後、リビングに戻ってきたユニ達は、「ハロウィン料理」の意味をしっかり理解するのだった。
「成程……いや何となく予想してたけど……」
食卓に並べられていたのは、かかぼちゃの煮物にカボチャご飯、パンプキンパイもカボチャ尽くしの料理だった。
「やっぱりそういう事か」
「そう。中々おしゃれでしょ」
由理が胸を張って言う。
「よーし!酒だ酒だ!」
鬼の格好をした丁井先生は、冷蔵庫からビールを取り出す。
そしてソファーにどっかりと座ると、煮物に舌鼓を打つのだった。
アゲハ曰く、妖怪の「酒呑童子」のイメージらしい。ぴったりである。
「とにかく、お仕事お疲れ様というわけめ……乾杯!」
ユニの音頭で、丁井先生以外の人はジュースで乾杯した。
みんなにとって、一生の思い出になるパーティだった。
悪魔との契約条項 第百五十三条
古代日本において、悪魔は鬼と同一視されている。
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