契約その148 彼女達はdrunkです!
※この作品は、未成年飲酒を推奨するものではありません。
今日は土曜日、いつの間にか瀬楠家にいた丁井先生は、朝っぱらから飲んでいた。
「うひひ……やっぱり朝から酒飲めるって最高!」
ソファーに座りながら酒を飲み、テレビのチャンネル(格闘技)を独占する様は、さながら休日のオヤジの様であった。
「あまり飲み過ぎないで下さいよ!その……体が一番大事ですから」
ユニが注意する。
それを煩わしく思ったのか、丁井先生はユニの腕を引っ張ってソファーに座らせて拘束すると、言った。
「お前〜この楽しさまだ知らねェんだろ〜♡もっと来てみな♡お姉さんが教えてやるからさ」
「ダメですよ!?おれ未成年なんですから!」
全力で丁井先生の拘束を解きながらユニが言う。
「え〜つまんないの!じゃあ冷蔵庫のピーナッツ持ってきてよ!」
相当酔ってるな……。ユニは呆れながらピーナッツ、要はおつまみをを皿に移して持ってきたのだった。
その様子を、たまたま目撃していた紫音が言う。
「アルコールを摂取せずに、酔う方法ならあるぞ」
「え〜本当ォ!?紫音ちゃんやるゥ〜♡」
丁井先生は紫音のおでこにキスをした。
「と……とりあえず全員を呼ぼうか。今日明日は全員いる日じゃろ」
紫音は丁井先生のキス攻撃を振り払いながら言うのだった。
数十分後、ユニ達全員は紫音に呼ばれてリビングに集合した。
「それで、また実験って事ですか?」
「ようやく最近ここと神社の地下がつながったかと思ったら……」
みすかやミズキが呆れながら言った。
紫音は、自室から何やら謎の物体を持ってきた。
彼女が両手で抱える程度の大きさのお香の様なものである。
「今回は……これ"オールドリンカー"の実験に付き合って欲しくてな」
「何か超獣みたいな名前だな」
アキが言った。
「まあ、偶然じゃよ偶然。これはつまりその人が『酒に強いか否か』をシミュレートする発明品でな」
使い方は簡単で、まず上蓋を外して水を入れ、元に戻す。それからスイッチを入れればいいのだという。
「これは要するに『場酔い』を誘発させる発明品じゃから、未成年飲酒の危険はない」
ユニ達は、これまでの経験から本当に大丈夫かと心配した。
しかし紫音からスイッチを切ればすぐ効果が切れるし、安全装置もあると言われたので、とりあえず信じてみる事にした。
「ムードを出す為にジュースも飲もうか」
紫音はそう言うと、人数分のコップと冷蔵庫からぶどう、オレンジ、リンゴジュースを取り出した。
「じゃあ早速やるぞ」
紫音は"オールドリンカー"の上蓋を外して水を入れ、元に戻した後、スイッチを入れる。
ブォーンという妙な音がしたかと思うと、ピンク色のオーラの様なものが当たりに充満した。
「ウゥ……何か結構強い感じだな……」
ユニは少しクラクラしながらも、何とか自我を保っていた。
だがこの程度なら心配ではない。みんなもそうだろうと、ユニはみんなに問いかける。
「なあみんな、大丈夫……」
ではなかった。丁井先生以外、みんな前後不覚になっているのである。
ユニは近くにいたルーシーの両肩を掴んで言った。
「オイルーシー!しっかりしろ!気をしっかり持ってくれ!」
「は〜あ?うっせェな……。飲まなきゃやってられるかっての!」
ルーシーはリンゴジュース(2L)をラッパ飲みしながら言う。
「オイお前も飲めよ〜♡言う事聞けねェのか〜♡千歳ぐらい年上だぞおれァ〜!」
ルーシーはユニの肩を掴み返し、肩を組もうとする。絡み酒である。
酔って判断力が低下している為か、すぐに逃げ出す事ができた。
脱出したユニの胸を、何者かが甘噛みする。モミである。
「ひゃあ!?」
ユニはビクビクと体を悶えさせた。
「ちょっと!?何やってんの!?」
モミは慣れた手つきでユニの服と下着を脱がし、上半身を裸にした。
「わあ♡大胆♡なんてやってる場合じゃないよ!」
他の彼女達よりマシとはいえ、ユニもだいぶ判断力が低下している様である。
モミはユニの生乳をむしゃぶり尽くすと、不満そうに言った。
「なーんだ、出ないんですね。母乳」
「出ないよ!?」
ユニは何とかそこからも脱出に成功した。
「これみんなどうなってるんだ……」
「あっはっは!あーっはっはっは!」
藤香がめちゃくちゃ笑ってきた。彼女は笑い上戸らしい。
「あ、ユニぃ?飲もうよ〜♡今日は締切もないしさ〜♡ま、こんな状況じゃあ書きたくても書けないか!あっはっは!」
いつもとキャラが違う藤香。
「気をしっかり持ってくれ!そんな事言う奴じゃないだろキミは!」
藤香の肩を掴んで呼びかけるユニ。藤香はなおも笑い続けていた。
この騒動の発端があの機械にある事がわかっているユニは、それを探す事にした。
「これはだいぶとんでもない状況だ……早く"オールドリンカー"のスイッチを切らないと……」
その時である。
「うぇへへ投げるよー!」
「バッチコーイ!」
ピッチャーミズキ、バッター七海で野球が始まっていた。
そしてボールは……。
「"オールドリンカー"!」
それを見たユニは驚愕した。
(まさか……それを使って野球するつもりか!?)
「やめろォ!」
それが壊れるといよいよ本当に収拾がつかなくなってしまう。
そう思ったユニは、慌てて止めに入ろうとする。
が、間に合わなかった。
「ピッチャー第一球……投げました!」
ミズキが大ぶりでぶん投げたそれを、七海はどこからか持ってきたバットで思い切りジャストミートする。
「ガチャン!」と強い音がして、"オールドリンカー"はひしゃげる形で壊れてしまった。
「イエーイホームラーン!」
「しっかりアウトだよ!?」
ダブルピースして喜ぶ七海に、ユニは言った。
しかし、これを直さない事にはみんなを元に戻す事はできないだろう。
「おーい紫音、これを……」
ユニは恐る恐る壊れた"オールドリンカー"を紫音の前に持ってくる。
「びええ〜ん!ごめんなさい、ごめんなさ〜い!紫音が、紫音が、また余計な事をしたばかりに〜!」
人目も憚らず泣き出す紫音。泣き上戸だった。心なしか彼女もキャラが変わっている。
「わかった、わかったから!思いっきり泣いて発散しよ?でも頼む、キミが頼みの綱なんだよ!」
なおも酔った(様な)勢いで暴走を続ける彼女達。果たしてユニは、この状況に収拾をつける事ができるのだろうか。
悪魔との契約条項 第百四十八条
悪魔であろうと、未成年での飲酒は違法である。それは必ず守らなくてはならない。
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