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契約その145 開幕!生徒会general election!

 長かった夏休みも終わり、晴夢学園は二学期に突入した。


 風月は転校生として学校に通う事になったわけだが、その礼儀正しさからクラスに受け入れて貰えた様である。


 その姿を見て、ユニはひとまず安心するのであった。


「そういえばさ、近頃生徒会総選挙があるだろう」


 昼食の時間、不意にアキが話を振ってきた。


「そうだけど、それがどうかしたの?」


 ハチミツをビタビタに垂らしたカレーを食べながら、ユニが聞いた。


「私、それに立候補しようと思うんだ」


「へーいいな。何か手伝える事があれば手伝うけど……」


 アキはそんなユニの肩を掴んで懇願する。


「頼むっ!選挙活動の手伝いをしてくれ!」


 その勢いのせいで、危うくカレーを喉に詰まらせかけたユニだったが、どうにか飲み込んで言った。


「ゼェゼェ……わかったよ」


 晴夢学園の生徒会総選挙に参加するには、立候補制と推薦制の二つの方法がある。


 今回アキが選んだ立候補制の場合、自分の選挙の手伝いをする「後援会」を作らないといけず、手間がかかる。


 選挙活動は9月中旬から10月上旬となっており、その時までに、如何に支持者を増やすかが焦点となる。


 こうして、ユニの手によって「緑山アキ後援会」が発足したのだった。


 人員は、中学生組と丁井先生を除いた百合ハーレムのメンバーとなった。


 本人曰く、さすがに立場上一人の学生に肩入れする事は教師としてはアウトだそうだ。


 先生から配られる書類に、立候補者の名前と後援会のメンバーの名前を書き、学校に提出する。


 こうしてアキの立候補が受諾されたのだった。


 その放課後、教室にて第一回後援会会議が開かれる事になった。


 この時集まったメンバーは、ユニ、アキ、ルーシー、萌絵、風月の五人であった。


「まずは選挙活動のルールをおさらいしようか」


 ユニは立候補受諾時に渡された書類を読み上げる。


 箇条書きで記すと、こうである。


 ・選挙活動は、ポスターの掲示と校門前演説の二つとする。


 ・選挙ポスターの掲示は一人百枚まで。学内掲示板などの所定の位置にしか貼る事はできない。


 ・校門前で演説をする際は事前(遅くとも前日)に届け出る事。過剰な演説は禁止である。


 ・他候補者の妨害等の不正行為は行ってはならない。不正が認められた場合、立候補は取消となる。


「まあ、こんな感じかな」


 読み終えたユニが言う。


「選挙ポスターの掲示は明日からできるらしいし、作っちゃおうか」


 まず、ユニ達はポスターに使う写真を撮る事にした。


 果たしてどんな感じにするのか。少し議論が白熱した。


「どういうのがいいんだろう。やっぱり真面目そうな感じに……」


「いや逆に扇状的な感じにして男子票を集めるという手もありますよ!」


「そんなポスター受理されないと思うけど」


 とにかく色々なポーズを取り、いいものを採用しようという話になった。


「カメラは私に任せて下さい!一度写真が新聞に掲載された事があるので……」


 風月が名乗りを上げたので、任せる事にした。


「デジカメわかるか?このボタンを押せばシャッターが切られて写真を撮る事ができる」


 ユニの説明で、風月はある程度にはデジカメを使える様になった。


「じゃあまずは真面目そうなやつから……」


 ユニはアキをイスに座らせて写真を撮った。


 撮った写真を見て、ユニは率直な感想を言う。


「表情が硬すぎて証明写真みたいになったな……」


 さすがにこれはボツである。


「じゃあ今度は床に寝っ転がって貰って……制服を着崩して、()()()()()()()かのギリギリを攻めてみましょう!」


 萌絵が言う。


「えっと……寝っ転がって……こうして……こうか?」


 アキは両腕を大きく伸ばすセクシーポーズを披露した。


「いいじゃないですか!」


「ダメだろ!ポスターはポスターでも()()()()()()やつだろ完全に!」


 ルーシーが突っ込む。


 結局セクシー路線はなしになった。


「まあ選挙ポスターだしね。じゃあイスに座り直して、制服も正して、とびきりの笑顔で……」


 ユニの指示通りにしたアキの姿をフレームに収め、風月はシャッターを切った。


「……中々いいんじゃないですか?」


「うん、すごくいい!」


 出来上がった写真を見て、ユニは会心の笑みを見せる。


「うん。真面目さと可愛さが混在してて、アキらしい」


 ルーシーも言う。


 写真が決まった後は、そのデータを使い、パソコンでポスターを作成する。


 ユニ達は学校のパソコン室を訪れた。


 パソコンの操作は萌絵が担当する事になった。本人曰く、こういう操作には慣れているらしい。


「データが保存されてるメモリをパソコンに挿入して、それをワードで……」


 そうこうしている内に、ポスター全体の構図は決まった。


「名前の表記はどうしますか?」


 萌絵が聞く。


「漢字は使わず『みどりやまアキ』表記だな」


 パソコンの画面を指差しつつユニが言う。


「どうしてだ?」


 アキ本人が不思議そうに聞いた。


「名前を間違えて書かれると無効票になるからだよ。道端にある政治家の選挙ポスターも、よくひらがなで名前が書いてあるだろう」


 ユニが説明してくれた。


「成程、少しでも票を集める工夫か……」


「あとはキャッチコピーを……」


「それは考えてきたんだ。『正義のロードを突き進む!』がいい」


 アキはポーズを加えながら言った。


「確かに勢いがあっていいな。じゃあそれを……」


 こうして選挙ポスターは完成した。


 ユニ達はそれを百枚コピーすると、学内の掲示板や体育館に続く通路など、指定された場所に貼り出した。


 ポスターを貼り出す中で、ユニとアキは二人きりになった。


 ユニは、アキを勇気づける為にあるうんちくを披露する。


「これは噂だが、実際の選挙でも顔がいい政治家が当選する事があるらしい。アキなら()()()の得票もきっと狙えるよ」


 ユニが太鼓判を押す。


 それでもアキは心配な様だ。


「でも、ライバルもいるんだよな。勝てるかな」


 アキの正義は、時に人を、自分をも傷つける事がある。


 そんな自分が立候補してもよかったのか、アキは未だに悩んでいた。


「少なくともおれ達がいる。きっと大丈夫さ」


「ユニ……」


 人知れずお互いに口づけを交わす二人。


 その姿を誰かがデジカメで撮影していた事を、二人は知らなかった。


 悪魔との契約条項 第百四十五条

写真に写っているものが、真実とは限らない。

読んで下さりありがとうございます。

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