契約その144 ドキドキ!?風月のfuture生活!
今回風月の買い物メンバーとして呼び出されたのは、ユニ、ルーシー、アゲハ、どれみ、モミの五人だった。
提案者であるアゲハ曰く、「さすがに和服だけだと何かと不便だから……」との事である。
今回のメンバーも、たまたま予定が合った人達を集めたらしい。
このメンバーに風月本人を加えた六人は、例によって「リオン東徐氏堂店」を訪れるのだった。
何の変哲もないショッピングモールだが、風月にはかなり新鮮に感じる様だ。
「こ……ここは一体……」
動揺する風月。無理もない。そもそもこんなに高い建物も、大正時代にはないからである。
「つまり百貨店みたいなものだよ。正確には違うけど。ほら銀座にあっただろ?」
ユニが説明する。
そこまで言って、ようやく風月は納得した様である。
「それで……まずは何を買おうか?」
「勿論!下着なのですっ!」
モミが興奮気味に言う。
確かに、まともな現代の下着がないのは何かと不便である。ユニ達は下着専門店を訪れる事にした。
下着専門店を訪れるなり、モミは風月の周りを反復横跳びしながらまじまじと見つめる。
「うーむ成程成程、百年前とは思えぬプロポーション……現代にも通用し得ると思いますね」
そんなモミの奇行に、風月はただ困惑していた。
「あの……何ですかこの人」
ユニに質問する風月だったが、答えたのはモミ本人であった。
「モミはまだ何者でもありません。今はただのおっぱい好きの女子高生です。ちょっと失礼」
モミは一応本人確認をすると、背後からぐわしと風月の胸を揉みしだいた。
「はわっ!?一体何を!?」
一瞬の出来事に、風月は赤面しつつ動揺した。
「下着を買うにはまず大きさを確認しなければ……」
モミはそう言うが、どう見ても楽しんでいる様にしか見えない。
その光景を、周囲の通行人達がジロジロ見ながら通り過ぎて行く。
「大きさだけでなく形もいい……大正時代でこれとは……まさに生きた化石シーラカンス……」
モミはその感触を一通り堪能した後、結論を出す。
「出ました!スリーサイズは上から……」
「ストップ!」
ほんなモミの暴走に待ったをかけたのはルーシーである。
「そういうのは大声で言うもんじゃないだろ!ごめん風月、久しぶりの出番だからたぶん必死なんだこの子」
そう言うルーシーは、モミを無抵抗のままどこかへ連行していった。
数分経って二人は戻ってきた。
割としっかり怒られたのか、モミはしおらしくなっていた。
「サイズから考えて、この辺りが妥当かと」
モミの案内で、ユニ達は専門店の一角を訪れた。
専門店は、サイズごとにブースが分かれている様であり、様々な色、デザインの下着が並べられていた。
「へーかわいー!ウチも新しいの買おーかな」
「こういうのはどうでしょう?」
「へへっいいねー」
アゲハとどれみは個人的に買うらしい。
当の風月はというと、何を買えばいいのか悩んでいた。
百年前のそれとは形も何もかもが違うのである。
「あの、由仁さんどうすれば……」
ユニに助け舟を出す風月。
「気に入った色とかはない?自分が好きなのを買えばいいんだよ」
ユニがアドバイスをする。
それを聞いた風月は、悩み抜いた末にある下着を手に取る。
「わっ!結構大胆!」
アゲハが驚くのも無理はない。風月が選んだのはまさに「真っ赤」と言える色だったからである。
「形はわかりませんが、この色のものが結構多かったので……」
大正時代は、江戸時代からの流れで赤い下着(というか褌)が多かったとされる。
だから風月はそれを選んだのだろう。
「わかった!じゃあ……ウチセレクションで……」
さすがに一枚だけでは心許ないと、アゲハは風月の選択を参考に何枚か選んだ。
お金はどれみが支払ってくれる様だ。
「お金はこういう時の為にありますから!」との事である。
みんなは続けて洋服売り場へと足を運んだ。
「じゃあここもウチセレクトで……」
風月は洋服を着慣れていない。なのでアゲハのセンスに任せる事にした。
「外行きだけじゃなくて普段着も……」
合わせて十着程のお買い上げとなったのであった。
「いやー買ったね。どれみちゃんありがとう」
「構いませんわ!」
結局全てどれみの奢りになってしまったが、本人も嬉しそうである。
「どれみ……さん、ありがとうございます」
風月も少し控えめにお礼を言う。
どこかどれみにイヅを重ねている様だった。
「どうする?このまま帰ろうか」
ユニの提案に、アゲハはチッチッと指を振って見せる。
「甘いよユニち!ショッピングの最後と言えば……」
アゲハに急かされるまま、ユニ達はショッピングモール内のある店に案内される。
「そう!スイーツ食べ放題!」
どうやらどれみと一緒に食べ放題の予約をしていた様である。
店内に入ると、アゲハは受付に行く。
「予約してた芽ヶ森ですけど……」
「芽ヶ森様ですね。こちらのお席へどうぞ」
店員に案内され、ユニ達は奥の席に通された。
「さあ!三時間食べ放題!じゃんじゃん食べてってよ!」
確かに食べないと、せっかく予約してくれた二人に悪い。
そう思ったユニは、ショートケーキを持ってきて、それにハチミツをかけて食べ始めた。
それ。見ているだけの風月。
見かねたユニは、ハチミツがかかっていない所のショートケーキをすくって風月に食べさせた。
「あ……甘〜っ!!♡♡♡♡」
天にも昇る様なリアクションをする風月。
「っと、何ですかこれ!」
驚く風月。
「大正時代と違って、現代は甘いものに溢れてる。堪能しないと勿体ないって、おれは思うな」
ユニはニコッと笑いかけながら言った。
「由仁さん……」
すると突然、風月が立ち上がる。
「少し、表へ出ましょう。由仁さん」
何かを決意した様な顔である。
「表?それって……」
勿論、ユニが想像する様な事をするわけではなかった。
風月に促される形で店外へ出るユニ。
「一体何を……」
するといきなり、風月はユニに抱きついたかと思うと、顔を近づけて……キスをした。
「!!?」
突然の出来事に動揺するユニ。
その近くを、通行人がジロジロ見ながら通り過ぎて行った。
「な……何で……そんな……いや嬉しいけど!」
ずっと動揺しているユニに、風月は優しく語りかける。
「あの時、私を馬車から助けてくれたのが、あなたでよかった。あなたを侍女に選んでよかった。一緒にこの時代に来れてよかった……」
「風月?」
怪訝そうに見つめるユニ。
風月は地面を踏み締め顎を引き、そして叫ぶ。
「由仁さん!私と付き合って下さい!生まれた時代が違くても、私はあなたの事が好きなんです!」
言い切った風月は、少し息切れしていた。
余程この告白に全霊をかけたのだろう。
それを理解したユニは、風月を優しく抱きしめる。
「当たり……前だ……!おれは必ず、キミを幸せにする……!」
風月もまたユニを抱きしめ返した。
こうして、ユニにまた新たな彼女ができたのだった。
悪魔との契約条項 第百四十四条
本物の愛は、時代をも超える。
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