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契約その132 Heatを超えろ!

 暑さもいよいよ本格的になって来た八月中旬、ユニはその暑さにうなだれるしかなかった。


「ア〜暑ゥ〜……」


 髪は暑くて邪魔だとアップに結い、薄いTシャツにハーフパンツというラフな格好で、リビングのソファーに陣取っていた。


 何本目かもわからない棒アイスをペロペロと口に含め、何とか暑さを耐え忍んでいる状況である。


 丁井先生のお陰で夏休みの宿題も終わり、二学期開始までこのまま過ごすつもりだった。


 だったのだが……。


「ハアハア……暑っつ……」


 ヒナが汗だくで帰宅してきた。


「おかえり。バイトだったのか」


 ソファーに寝っ転がったまま、ユニが言う。


「うん。カフェのね。カフェはクーラー効いてて涼しいんだけど、そこからここに帰ってくるまでの道中でもう汗だくよ」


 ヒナは着ているTシャツの首をパタパタと扇ぎながら言った。


「大変だな。シャワー浴びて来るといい。着替えはおれが用意しとくから」


 ユニはソファーから起き上がりながら言う。


「そんな悪いって……それぐらいは自分でやるから……」


 ヒナはキッチンの冷蔵庫からユニと同じアイスを取り出し、封を開けながら言った。


「それと、何か変じゃない?」


 不意にヒナが言った。


「変?そういえば……」


 ヒナの言う通り、部屋の気温がどんどん上がっている気がする。


 まさかと思い、ユニはクーラーの様子を確認した。


「やっぱりだ!壊れてやがる!何年か前に買ったやつだから寿命なのかな」


 一縷の望みをかけて、リモコンで電源をオンにしても効かなかった。


 室温はすでに三十度を超えている。冗談抜きで命に関わる気温である。


 ユニはとりあえず紫音に電話してみた。仮に寿命でないのなら、直してくれる可能性は高い。


 確か今日はどれみと一緒に火殿グループの会合に参加していた筈である。ユニは祈る様にして紫音に電話をかけた。


 何回かコールが鳴った後、「もしもし」と聞き慣れた声が電話越しに聞こえた。


「もしもし紫音か?よかった。今大丈夫かな?」


 今は休憩中だから大丈夫だと紫音が言ったので、ユニはリビングのクーラーが壊れた旨を伝える。


「そのクーラーはわしが毎日点検してたやつじゃぞ。そろそろ寿命かと思っていたが、まさかこのタイミングだとは思わなんだ」


 寿命が来る前に買い替えるべきじゃったと、紫音は二人に謝罪した。


 ユニは、ヒナと二人で示し合わせると、紫音にこう伝えた。


「じゃあおれ達が買いに行くよ。ちょうどヒマしてたし……」


「おお本当か!すまん!今日は遅くなるから帰りに買いに行く事もできんし、困っていた所じゃったんじゃ」


 じゃあまた後でと、ユニは紫音との電話を切った。


「さてと……」


 ユニはヒナの方に向き直ると、こう言った。


「とりあえず、二人でシャワー浴びようか」


 ユニもすでに汗だくになっていた。



 その後シャワーを浴び、服も着替えた二人は、近所にある大型家電量販店を訪れたのだった。


「涼しい〜!」


 店内に入った第一声がこれである。


 一通り涼んだ後、二人は早速エアコン売り場へ行くのだった。


 真夏のシーズンなだけあってか、エアコンのスペースは大きく取られていた。


「とりあえずさ、元々使ってたエアコンの最新機種でいいと思うんだけどどうかな」


 ヒナが聞く。


「それでいいと思う。わざわざ変えるのも色々面倒な事になりそうだし……」


 ユニもそれに納得した様である。


 二人は多くのエアコンの中から、その最新機種を見つけ出し、購入した。


 どうやら色々準備が必要らしく、二時間程時間ができた。


 暑さに負けたユニ達は、近くにあるアイス専門店に行き、アイスに舌鼓を打つのだった。


「あ〜!冷たくておいしい〜!」


 叫ぶヒナ。彼女が選んだのはチョコアイスである。


「一体今日でどれぐらいのアイス食ってるんだろうな。おれ」


 そう言いつつも、ユニはイチゴアイスにバニラアイスにさらにクリームを乗せた欲張りサイズを選んでいた。


 勿論砂糖やハチミツを使ったユニ好みの甘いアイスである。


「やっぱり甘いもの好きでしょ。ユニ」


「そうだな。三度のメシ(由理の手料理除く)より好きだ」


 ユニは正直に答えた。


「私も好きなんだ。甘いもの。だからさ、ほら!」


 ヒナは自分のアイスを掬ってユニに見せる。


「交換しよ!」


「乗った!」


 お互いのアイスを交換し合い、幸せな気持ちになる二人なのだった。


 交換も終わり、ヒナは再び自分のアイスを掬って口に運ぶ。


 しかし、その前に、ある事に気づいてしまった。


「いやこれってまさか……間接キスになるんじゃ!?」


 言葉に出してしまったので、ヒナの気づきに、ユニもまた気づいてしまった様である。


「確かにそうだ……でも、別にいいんじゃないかな」


「別にいい?」


 ヒナは照れた顔を手で隠しながら聞く。


「だって、おれ達恋人同士だろ。これもデートって言えるのかも知れないし……」


 それを聞いたヒナは、思い切りノックアウトされてしまった。


(た……確かにそうだ〜!)


 ずっと握っていたヒナのアイスは、彼女の興奮したその熱で溶けてしまった。


 その後、どうにか家まで戻って来たユニ達は、エアコンの設置業者を出迎え、新しいエアコンをつけて貰う事に成功した。


 瀬楠家のリビングに、数時間ぶりに冷たい風が吹く。


「あ〜涼しい〜……恵みだ〜……」


 そのまま、()()()が来るまでは、ずっと涼んでいた。


「ん?」


 涼んでいると、ユニは自分の体のどこかに違和感を感じた。


「どうしたの?」


 ヒナが聞く。


「あーいや、えっと……これは……」


 どこか、いや正確には自分のお腹に違和感……もとい痛みを感じたユニ。生理とも違う。


 その痛みは、どんどん大きいものになっていく。


「うわー!これはマズイ!ちょっとトイレ!」


 そのままジェット噴射でもしたかの様な勢いでトイレに駆け込むユニ。


 アイスの大食いに、代償がないわけがなかった。


「こういう代償にも気をつけなくちゃいけないのか……」


 トイレの中で、ユニはひどく後悔するのだった。


 悪魔との契約条項 第百三十二条

男と女では、体の作りが違う。男の体のつもりで過ごしていれば、いずれ痛い目に遭う。

読んで下さりありがとうございます。

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