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契約その131 Teacher's roomの大掃除!

 夏休みのある日、ユニにはある気になる事があったので、その場にいたルーシー、由理、アゲハ、モミ、ヒナに言う事にした。


「そういえばさ、最近丁井先生見なくないか?」


「それって、こっちの家に姿を見せないって事?それとも作品的な意味で見せないって事?」


 ヒナが聞く。


「いや、作品的な……まあそれもそうだけど!前までは結構毎日こっちに来てたじゃん。でも夏休みになってからは……」


 確かに映画撮影の時も、夏休みを境にほとんど顔を見せなくなった。それはおかしいかも知れない。


「じゃあ行ってみるか。先生の部屋に」


 ルーシーが立ち上がりながら言うのだった。


 瀬楠家と丁井先生のアパートの部屋は地下で繋がっている。ユニ達は空き部屋の階段室に行った。


 そこの階段を降りると、フローリングの長い廊下に出る。そこをまっすぐ行けば、丁井先生の部屋へ辿り着くのである。


 廊下をまっすぐ行くと、また階段に突き当たる。ユニ達はその階段を上り、その後すぐ近くにあるインターホンを押す。


「ピンポーン♪」という一般的なチャイム音が流れるが、返事がない様だ。


 ルーシーが試しにドアノブに手をかけると、いつもはかけているはずの鍵がかかってなかった。


「あれ。開いてる」


「本当だ。不用心だなあ」


 ユニは呆れながらも、今度はドアを叩いて丁井先生に呼びかけるのだった。


「もしもーし!瀬楠ですけど!最近姿見せないからおれ達が来ました!返事をして下さい!」


 しかし応答はない。


「仕方ないな……」


 ユニはそう呟くと、一応部屋に入る事を伝え、ゆっくりとドアを開ける。


「!?……!??」


 言葉にならない言葉を出しながら、ユニは勢いよくドアを閉めた。


「どうしたのですか?」


 モミが聞く。


 ユニは、まるで見てはいけないものでも見たかの様な表情をしながら言う。


「その何というか……臭いがヤバい。準備なしで入っちゃいけない気がする」


 ユニ達は一旦瀬楠家に戻り、紫音の部屋から「環境防護服」なるものを人数分拝借した。


 まるで放射線防護服の様に、全身を覆う服である。


 これは、着ればどんな環境でも生きられるという発明品らしい。以前本人が言っていたのを、ユニは聞いていた。


 その後丁井先生の部屋の前に戻り、意を決して丁井先生の部屋へ突入するのだった。


「うわあ……」


 部屋の惨状を見たユニは絶句した。


 カーテンは閉め切られており、日は当たらない。それだけならまだしも、辺り一面にゴミが散乱している。


 ゴミの中には腐ったコンビニ弁当まであった。それが見た所五個程。おそらくさっきの悪臭はこれのせいだろう。


「うぷっ」


 その惨状を見て気分が悪くなったのか、由理とアゲハは慌てて瀬楠家へ駆けて行くのだった。無理もないだろう。


「先生はどこかな」


 ヒナが辺りを見回していると、ゴミの中から人間の腕が出ている事を確認した。腕と言っても手首が埋もれて見えないが。


「おそらく……」


 ユニ達はゴミを掻き分け、丁井先生を引っ張り出す形でゴミの山から救出するのだった。


 丁井先生は、一升瓶を抱き枕に眠っていた。Tシャツに下着姿というあられもない格好である。


「まさか……死んでるのか?」


「いやさすがにそんなわけ……」


 ユニとルーシーがそんなやり取りをしていると、「うーん……」と唸りながら丁井先生が目を覚ました。


「先生!」


 ヒナが呼ぶ。


「何でみんなここに……それに何か臭いぞ?一体何が……」


「それはこっちのセリフですよ!」


 ユニは、これまでの経緯を丁井先生に話した。


 丁井先生は悪い事をしたと謝罪しつつ、部屋がどうしてここまで悲惨な事になったのかを話す。


「先生の仕事は激務でな、掃除するヒマも、ゴミ出しする時間もないんだ。そんな中やっと休みが取れて……」


「スタミナ回復の為にずっと寝ていたって事ですか」


 ユニは呆れながら言った。


「丸三日ぐらいな。じゃあおやすみ」


「待て待て待て!」


 再び布団に入ろうとする丁井先生を、ユニ達は慌てて引き止めた。


「何だよ。こっちはまだ眠いんだ……」


「三日眠り続けた人の言うセリフじゃないですよ!」


 ルーシーが言う。


「まずはお風呂に入って下さい!」


 ユニは丁井先生を風呂場まで押していった。


 丁井先生が渋々シャワーを浴びている間、ユニ達はある目的で一致していた。


「やるしかないな。大掃除!」


 その後、ダウンしていた由理とアゲハが掃除道具を持って戻って来た。


 ユニ達は、それ一式を身につけて丁井先生を待つ。


 程なくして、先生がシャワーから戻って来た。


「えっと……何だそれ」


 驚く丁井先生に、みんなは声を揃えて言う。


「大掃除しましょう!丁井先生!」


 その後、嫌がる丁井先生の尻を叩き、みんなは部屋の大掃除に取りかかるのだった。


 その最中、ユニが容赦なく捨てたものを、丁井先生が慌てて止める。


「いやそれはやめてくれ!」


「これって……ただの腐ったみかんですよね?何の役に立つんですか?」


 怪訝そうに聞くユニ。


「それは匂いを嗅ぐ為のもので……」


「こんなの嗅いでたら死にますよ!ゴミです!」


 丁井先生の制止も聞かずにポイポイ捨てていくユニ。散乱した割り箸などもゴミ袋に詰めていった。


 粗方ゴミの分別が終わったら、今度は掃除機をかける。


「ホコリが多いですね。どれくらい掃除してないんですか?」


 由理が聞く。


「去年引っ越して来てから、一度も掃除してない」


 丁井先生の発言に、ユニ達は軽く引いた。


「あとは洗濯機をかけて……」


 アゲハが大量の服をまとめて洗濯機に入れ、タイマーをセット。洗い終わった服を外に干すのだった。



 全て終わった頃には、もう夕方になっていた。


「何というか……色々すまなかった」


 丁井先生は謝罪すると、冷たいジュースを出してくれた。


「まさかお酒だったりしませんか?」


 ユニは訝しんだが、さすがにアタシもそんな事はしないよと否定された。


 丁井先生が言うには、久しぶりに床が見えたらしい。


 定期的に掃除はするべきだと、由理はアドバイスするのだった。


 そんな中、丁井先生は何か思い出した様に言った。


「お礼としては何だけど、夏休みの宿題でも見ようか」


 その提案は、ユニ達にとって願ってもない事だった。


 映画の撮影が忙しくて、いつもは七月中には宿題を終わらせるユニも、まだ宿題が終わってなかったのである。


「お願いします!」


 みんなの返答を聞いた丁井先生は、宿題を持ってくる様に言う。


「じゃあ今夜は勉強会だな!」


 家庭教師として丁井先生を加えた勉強会は、夜通し続いたのだった。


 悪魔との契約条項 第百三十一条

悪魔の五感は、人間のそれとあまり変わらない。

読んで下さりありがとうございます。

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