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契約その129 再撮影!初恋eternal!

 改めて「初恋エターナル」の実写映画を作る事にしたユニ達は、リビングに集まって会議を始めた。


 議長はユニである。


「まず、コミケは八月中旬だ。つまりそれまでに撮影や編集などを全て終わらせなければいけなくなる」


「編集はぼくに任せて欲しい。いつも動画編集とかやってるから」


 メイが名乗りを上げる。


「よし。後は……」


「はい質問です!」


 みすかが手を挙げる。


「うん。どうしたみすか」


 ユニがみすかの方に向き直って聞く。


「主演はどうするんですか?」


「あー……そこなんだよな……」


 それを聞いたユニは頭を抱えながら答える。


「それはルアに……って言いたい所だけど、さすがに本家に出てる役者がこっちに出るのはマズイよな……」


「うん。だから私は、今回は裏方に回りたいと思う。俳優集めなら任せてよ」


 ルアが胸を叩いた。


「じゃあ主演は……」


 実はもう決めている。


 ユニは藤香の元へ行き、言った。


「キミに任せたい。一番悔しいはずだから」


 しかし藤香は、顔を逸らしながら言う。


「そりゃ確かに悔しいけど……いやダメだ。主演という事は、長時間拘束される。原稿と両立できない」


 藤香はため息をつく。


「皮肉な事だが、()()実写化のお陰で仕事が増えてるんだ」


「本心ではどうなんだ?」


 ユニは藤香の顔をじっと見ながら聞いてきた。


「それは……当然……参加したいけど……」


 藤香は少し黙っていた。そして、しばらくして自分の胸の内を語り出すのだった。


「漫画も、映画も、妥協したくない。それが僕の本心だ……だから、主演をやりたい」


「よしわかった」


 ユニはそう言うと、考えていた案を提示する。


「映画にはピークがある。今は忙しいが、夏休み辺りならほとぼりも冷めているはず。つまり原作の方も落ち着くはずだ」


「じゃあ主演の撮影は後に回すのか」


 ルーシーが言う。


「ああ。でもこれだとかなりのハードスケジュールになる。藤香には悪いけど……」


「大丈夫だ。ハードスケジュールには慣れてる」


 藤香がハッキリと承諾した。


「男の、福井竜一の方はどうするんですか?」


 萌絵が聞く。


「それは男の俳優を連れてくるしか……」


「ユニがやって欲しい」


 希望を出したのは藤香である。


「いやでも()()おれは女だぞ!それもだいぶガーリーな」


 ユニは自分の体を見せつけながら言った。


 その刺激の強さに、彼女達が一斉に顔を逸らしたのは、また別の話である。


 そんなユニに対して、待ったをかけたの紫音である。


「それについては問題いらん。この性転換薬、『TSティー』があるからな」


 紫音がペットボトルに入った紅茶を取り出す。


 見た目は普通の紅茶だが、ラベルには「性転換薬用茶 TSティー」と書かれ、しっかり使用上の注意も書かれている。


「ローリケーキ」の時の失敗を活かした様だ。


「性転換時の容姿は、性転換前の方に依存するが、まあユニなら悪い様にはなるまい」


 まさか元に戻るんじゃないだろうか。


 ユニとルーシーは思った。


 その後も、それぞれの役割が決まっていき、いよいよ撮影が始まった。


 ヒロインの登場シーンがたまにしか撮れないので、それまではそれ以外のシーンの撮影になる。


 無論脚本は藤香本人である。


「私の伝手で某有名脚本家の人に添削して貰ったんだけど、『よくできてる』って太鼓判貰っちゃった」


 ルアが人差し指と親指で丸を作りながら言った。


 つまり、脚本の出来については問題ないという事である。


「これも使おう。『万能撮影カメラ』!」


 紫音が大きなテレビカメラの様なものを持ってきた。


「白トビや逆光などの撮影上の問題をカメラが判断して自動で解決してくれる」


 ユニの一人のシーンから撮影はスタートする。


 舞台は路上、竜一が独り言を言いながら歩くシーンである。


 撮影初日という事もあり、藤香もやってきた。


 ユニにはコップに注がれた「TSティー」が渡された。


「だいたいこの量で三時間は持つ。三時間後には元に戻るが、一度戻れば十二時間のインターバルが必要になるから、ユニの撮影も急がなくてはな」


 なるべく時間を目一杯使う為、撮影開始直前に飲む事になる。


「じゃあ飲むぞ」


 ユニは意を決して「TSティー」を一息で飲み切った。


 お茶が喉を通った直後から、ユニは全身が熱くなるのを感じだ。


「うおっ!これは……何か経験あるな」


「ローリケーキ」を食べた時と似た感触である。


「う……うおぉぉぉ!」


 ユニの男の姿を見たルーシーは驚き、他の彼女達は微妙そうな顔をした。


 男に()()()ユニは、渡された手鏡を見て驚く。


「これは元の姿じゃ……」


 それはまさに一年振りの再会であった。


 髪が短くなり、体が筋肉質になり、線が若干太くなった事を除いては、女の時と変わらない。


「むー……これは予想外じゃ……普通に女子でも通じる容姿……薬の分量を間違えたか?原作者としてはどうじゃ?」


 紫音は藤香に聞いた。


「うん……少し前髪を伸ばせばいけると思う」


 藤香がそう言うので、ユニ、もとい由仁はアゲハの手によって前髪をいじられ、かなり原作に近い感じになった。


「これでよし。結構原作に寄せられたかな?」


 これでよしと藤香は太鼓判を押した。


 そのまま一人のシーン、藤香がいるのでヒロインも混ぜたシーンなどを撮っていく。


 由仁は中々演技が上手い様だ。皮肉にもあの監督に認められただけの事はあった。


 そのまま映画撮影は続けられていった。


 映画の助っ人として、干人と優夜がやって来た。


「契約上この映画には出れないが」


「何かお手伝いができないかと思って」


 何だかんだで、二人は映画の出来に不満を持っていたらしい。


「忙しいのによく来てくれたな。お前達」


「あんな映画に出たとなっちゃ、おれ達の品位が下がるからな」


「お茶汲みでも何でもやるよ」


 早速ユニは、二人に指示を飛ばす。


「じゃあ干人、お前アイドルだろ?ルアと一緒に劇伴の作曲をやって欲しい。プロフィールに特技は作曲って書いてただろ」


「優夜は演技指導。素人でしかないおれ達を指導して欲しい」


 二人とも快く引き受けてくれた。


「あいつら、意外といい奴らなんだな」


 ユニは認識を改めるのだった。


 そして季節はいつの間にか過ぎ、夏になった。


 多くの人が集まった同人映画「初恋エターナル」は、八月の上旬に完成したのだった。


 萌絵は大きめのダンボールを大量に抱えてきた。


「これが全てDVDです!これをコミケで販売し、せめてアンダーグラウンドな所で名誉回復を狙うのが目的です」


「これがか……」


 ユニは感慨深そうにDVDの一つを手に取る、パッケージだけでも本気度が伝わる作品である。


 勝負は八月の中旬、いよいよユニ達の作戦は、最終段階を迎えるのだった。


 悪魔との契約条項 第百二十九条

契約の代償によって性転換した者がある方法で再び性転換すると、元の姿に似た容姿になる。




読んで下さりありがとうございます。

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