表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/299

契約その128 完成!初恋eternal!

 監督にスカウトされたユニは、監督に頭を下げながら言う。


「謹んで、お断りします。あなたは、私の恋人を悲しませてるから」


 それを聞いた監督は、なおもユニに縋りつく。


「そ……そこを何とか〜!」


「見苦しいですよ、監督」


 しつこいな……とユニが思っていた所、そんな監督の痴態に口を出してきたのは、原作者たる藤香だった。


「原作者が何の用で?」


 藤香は、にこりともせずに毅然と言い放つ。


「これ以上僕の……いや僕(たち)の作品を汚さないで欲しい」


 監督は、その物言いが気に入らなかった様で、ユニより藤香の方に矛先を向けた。


「映画には映画の掟がある!素人が口出ししていい所じゃあないんですよ!ましてやたかだか漫画家気取りの高校生が!」


 ユニは藤香を侮辱するその言葉に激怒し、危うく手が出そうになったが、どうにか精神で抑えた。


 藤香はゆっくりと、威圧する様に言う。


「スタッフも役者も楽しめない現場に、掟もクソもないでしょう」


「ぐっ……」


 痛い所を突かれたのか、監督は黙ってしまった。


「これはマズイな……」


 焦ってきたのはユニである。


 監督と原作者の対立に、現場の雰囲気も最悪になってしまった。


 何より、金を出している火殿グループのどれみと、この主演のルアは、友情と仕事の板挟みになった。


 友情を尊重するなら主演や出資を降りるのだろうが、そう上手くはないのがこの世界である。


「あとでフォローしなくちゃな……」


 ユニはそう思った。


「帰ります。ここにいて得るものは何もない」


 藤香は監督に背を向けると、とっとと教室から出て行った。


 慌ててユニ達も教室を出ていく。


「あっちょっと!お待ち下さいまし!私が謝りますから……」


 どれみも慌てて出て行った。


 ルアはそれを追えなかった。友達を傷つけてまで仕事をやりたくなかったのだが、これは事務所が取ってきた仕事である。


 自分の都合で勝手に降板するわけにはいかなかったのだ。


「せめて私が、この作品をよりいいものにしなくちゃ」


 ルアはそう決意したのだった。



 それから数週間の超スピードで、実写版は完成、公開された。


 結局ルア達の出演シーンは、本来の役者で撮り直されたらしい。


 一応試写会の案内は届いたが、藤香は何のアクションも起こさなかった。


 映画自体の評価は、まあお察しの通りだった。


 主演(あの勘違い野郎)の演技が稚拙、脚本が微妙、再現度も微妙、劇伴も微妙と散々だった。


 ただ一つ、ルアの演技はよかったという評価を貰った。


 藤香は、映画とは関係なく連載を続けていた。


 良くも悪くも実写化で話題になった作品なので、カラーを貰う事が多くなり、それに伴い仕事量も増えた。


 よって、ユニ達すら学校以外で姿を見ない日が続いたのである。


 そんなある日、ルアとどれみは、藤香の部屋の前を訪れた。


 勿論謝罪の為である。


 二人は藤香の部屋のドアの前に立って、コンコンと二回ノックする。


「イヤなら、出なくてもいい。ただ私達はあなたに謝りたくて……」


「藤香さん、ごめんなさい。出資したのはわたくしではなくわたくしの家でして……わたくし個人の希望は通らなかったのですわ」


 どれみは深く深く頭を下げた。


「私も……事務所には逆らえなかった。降板したら私だけじゃなく事務所の信頼にも関わるから……今思えば無理にでも降板すればよかったと……」


 ルアがそう言いかけた時、ドアがゆっくりと開き、藤香が顔を見せた。


「いいんだ。二人共事情がある。謝らなくていい。何より元々、この作品は漫画なんだから。僕が読者を楽しませられればそれでいい」


 そう言う藤香の顔は、どこか諦めている様だった。


「藤香……」


 二人はこれ以上かける言葉が見つからなかった。


「じゃあ僕忙しいから……」


 藤香はそう言うと、ゆっくりドアを閉めようとした。


「ちょっと待って!」


 その閉まるドアを止めようとする者がいた。


 ユニである。


「本当に、それでいいのか?今回の映画の出来は、キミの作品やキミ自身の評価まで落とす事になってる……おれはイヤだ」


 藤香は少し驚いた様な顔をしたが、またすぐに暗い顔に戻って言った。


「いいわけがない。でも、もう映画は完成してて、公開されてる。今更評価は覆らない」


 ユニは、なおも藤香にくらいつく。


「確かに評価は覆らないかも知れない……でも!キミと……『ハル』の気持ちの為に……何とかできるかも知れないんだ」


「そんな……何とかって……」


 藤香は、ユニから目を逸らしながら呟いた。


 ユニは、そんな藤香に大きく叫んだ。


「おれ達で、映画を作るんだ!」


 それを聞いた藤香は驚きつつもこう言う。


「自作映画って事か。でもそんな事……お金もかかるし……」


「お金ならわたくしが出しますわ!いくらでも!第一、火殿グループの名を使っておいてあの程度の映画では、火殿グループのブランドに傷がつきますし!」


どれみが名乗りを上げた。


「じゃあ私は、俳優を用意するよ。伝手ならあるから」


 ルアが言った。


「じゃあ、CGだったり撮影機材はわしの担当じゃな」


「衣装の準備はウチがやるよー!」


 いつの間にかそばにいた紫音とアゲハも名乗りを上げた。


「それに、近頃コミケっていう一大イベントがありまして、それに間に合わせれば、多数の人数に行き届かせる事はできます」


 萌絵が言う。


「藤香、キミにはこんなに仲間がいるんだ。おれ達の手で、()()を見返そう!」


 ユニは、藤香の肩を強く叩いて言った。


「うん、わかった!」


 藤香も笑顔で応えるのだった。


 悪魔との契約条項 第百二十八条

契約によって集まった仲間でも、契約者やその周辺の人物にとっては、強い味方となる。

読んで下さりありがとうございます。

いいね、感想などをよろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ