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契約その122 地雷wordを考慮しよう!

 ヒナと別れた後、ユニは一人で帰宅した。


 帰ってきたユニを、みんなが総出で出迎えてくれた。


「おかえり!どうだった?」


 ルーシーが聞く。


 ユニは務めて明るくこう言った。


「ああ。最高だった!」


 そして、風呂は後でいいと言い残し、ユニは自室へと戻って行った。


「よかったですね。楽しそうで」


 みすかが言う。


「いや、そうとは思えない」


 由理と七海が口を揃えて言った。


「理由はわからないけど、無理して笑ってるよ。たぶん」


 二人の推測通りだった。ユニは自室に戻ると、しっかり戸締りをする。


 そして周りに人がいない事を確認した後、声を殺して、泣いた。



 翌日。ユニは何も変わらない様子でリビングに降りて来た。


 その様子を見て、由理は少し安心した。


「姉さん、今日はご飯と味噌汁と焼き魚の和朝食だよ」



 由理が、慣れた手つきでユニの目の前で食器を用意していく。


「甘い物好きな姉さんの為に、色々甘いもの入れてみたんだ。()()とか」


「ぐふっ!」


 由理が言った「砂糖」という言葉で、なぜかユニはダメージを受けた。


「え!何?どうしたの?」


 動揺する由理。


 その横で、アゲハとみすかがスマホを見ながら話していた。


「へーかわいいね」


「そうなんです。通学路にあるツバメの巣で生まれたらしいですよ。ツバメの()()が」


「ガハッ!」


 みすかの「ヒナ」という言葉に、ユニはまたしてもダメージを受けた。


「え?ユニちどうしたの?」


「お腹の調子でも悪いんですか?」


 心配する二人。


 その横で、萌絵とメイが話している。


「一番合計種族値低いくさタイプのポケモンって何でしたっけ?」


「全体で見れば、今はヨワシ(たんどくのすがた)だが、くさタイプに絞ればたぶん()()()()()だと思う」


「……」


 だがこれに関しては特に反応はなかった。


 さらにその横で、いつの間にかいた丁井先生が言う。地下で自宅と瀬楠家がつながったので、入り浸っているのである。


「お前達、今日は学校の()()訓練だ。忘れてないか?」


「ぐはっ!」


 今度は丁井先生の「避難」という言葉に反応した。


「は?どうしたんだ瀬楠!」


 慌ててユニの元に駆け寄る丁井先生。


「いや……何でもないです……他のみんなも……心配しないで欲しい……」


 そういうユニの顔からは、血が流れていた。


「心配するよ!誰でも!」


 声を揃える彼女達。


 ユニは、今日は早めに登校すると言って、家を出て行った。


 バタンとドアが閉じるのを確認した後、由理達は顔を並べて集まった。


「やっぱり姉さんは昨日ヒナさんと何かあったんだと思う。『砂糖』、『ヒナ』、『避難』に反応している事から考えて」


「『ヒマナッツ』には反応してなかった事を見ると、同音異義語もしくは名前をそのまま含んだ言葉に反応してるらしいのう……」


 紫音が言った。


「だから、ほとぼりが覚めるか事態が解決するまでは、そういう『地雷ワード』を考慮していこうって話だな」


 ルーシーが言う。


 由理はそれに対して「その通り」だと人差し指を立てて言った。


「無理やり原因を聞く事もできるけど、少なくとも姉さん自身には聞かない様に。言いたくない事もあるだろうから」


 由理は付け加えた。


「しかし、それだと大変だな」


 丁井先生が言う。


「何がですか?」


「だって、今日は避難訓練だろ?今日で何回『避難』って言うかわからないぞ」


 丁井先生の発言に、由理達は青ざめたのだった。



 今日はやけに風が強かった。


 登校して早々、ルーシー達はヒナを問い詰めた。ユニはトイレに行った事をすでに確認済みである。


「昨日からユニの様子がおかしい。一体何をしたんだ?」


 ルーシーが聞く。


「何というか……『燃え尽き症候群』というか……私、恋に恋してたって感じだったんですよね」


「つまり、『飽きた』とでも言いてェのか?それでユニをフッたと」


「いや、決してそういうわけではなく!今もユニの事は好きです」


「フッておいてか!このっこのっ!」


 暴れるルーシーを、七海やアキが何とか抑えた。


「つっつまり!『ユニに告白する事』自体が目的になって、それが成就されたから、一気に冷めたって事か?」


 ルーシーを抑えながらもアキが聞いた。


「そういう事です。何というか、すごくつまらないんですよ。恋愛って。思い焦がれている方が幸せっていうか……」


「そんな事ない!むしろここからが本番だよ!ウチ達の彼氏を、『つまらない』なんて言わせないから!」


 アゲハが珍しく声を荒げた。


「せめて……ユニに謝れ」


 藤香が言う。


 それでヒナの中で何かが変わったのか、ハッキリと言う。


「……わかりました。ユニに……ちゃんと謝ります」


 それを聞いたみんなは嬉しそうな顔を見せるのであった。



 一方、学校近くの道を、ある男が歩いていた。


 大きなリュックサックと白のTシャツと黒のジーンズとスニーカーを履いた、痩せ型の背の小さな男である。


「ハアハア……つまらねェ……こんな世界……だったらおれが面白くしてやる……」


 爛々と輝く目で、リュックサックから取り出したのは、自動発火装置であった。


「これでおれは……ヒーローになれる……!こんなつまらない世界ともおさらばだ!」


 学校に侵入した男は、持ち込んだ新聞紙に発火装置で火をつけた。


 火は、風に揺られてどんどん大きくなるのだった。


 悪魔との契約条項 第百二十ニ条

誰かを傷つける幸せが、叶えられてはならない。

読んで下さりありがとうございます。

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