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契約その118 変身!top idol!

 お昼寝から起き、「変身カメラ」に興味を持ったユニは、紫音達の目を盗んでそれを弄り出した。


 だいたい四、五歳ぐらいだがカメラの使い方ぐらいはわかる様だ。


 今、紫音達は「変身カメラ」の力でルアになったメイを見送る為に玄関にいる。


 弄る時間はたっぷりあるのである。


 同じ様に起き出したルア(三歳)も、それに興味津々な様だった。


「とるよ、しゃしん」


 ユニが言う。


 ルアはゆっくりと頷いた。


「じゃあとるよ。せーの……」


 ユニがシャッターに手をかけた次の瞬間である。


「あ!ヤバっ!」


 いち早く異変に気づいたみすかが慌てて駆け寄る。


「ダメです!それ勝手に弄っちゃ!」


 騒ぎに気づいた他の子も次々とやってくる。


「ダメですって!あ!」


 何とかカメラを奪い取ろうとしたみすかだが、その拍子にシャッターを自分で押してしまったのだった。


 そこにはちょうどルアがいて、何と元のルアの姿に変身してしまったのだった。


「あ。あーあ……」


 いきなり変わった自分の体に、キョトンとしているルア。


 見た目だけは元に戻ったという事になる。


「もしかしたら、これで解決なのでは?」


 みすかが言う。


「いやダメじゃ。『変身カメラ』はあくまでガワだけを変えるのみ。つまり中身は三歳のままじゃ」


 ルアはハイハイをしながら室内をウロウロし始めた。見た目は元のルアなので違和感がものすごい。


「歩けるはずなのにハイハイしてるのは、おそらく重心の変化が影響しているのじゃろうな」


 紫音が推測した。


 騒ぎを聞きつけてか、他の子供も起き始めた。


 起き上がった丁井先生が、みすかの服を引っ張りながらこう言う。


「こうえんにいきたい」


「こ……公園?」


 思わずみすかは聞き返す。


「おれも」


「わたしも」


 みんな口々に言い出す。


「どうします?」


 みすかは紫音に助け舟を出す。


「あまりこの子達を外に出したくないんじゃが……」


 紫音はあまり乗り気じゃない様だ。


「別にいいと思うけど?」


 由理が言う。


「だって定期的に体動かさないとストレスが溜まるし、そのストレスが元の体に戻った時どうなるかわからないでしょ」


 確かに由理の言う通りである。


 それを聞いた紫音は渋々ながらOKを出した。


「迷子になるといけないから、お手手繋いでいきましょうか」


 由理が言った。



 一方、ルアとしてアイドルのステージに立つ事になったメイ。


 一応「踊ってみた」「歌ってみた」の動画も出してるので、歌やダンスに問題はない。


 しかし、リアルでステージに立つ事自体は初めての事なので、動画で振り付けや歌詞の確認は外せなかった。


「適当なパフォーマンスをするとルアが怒るからな……」


 ミスのない様に一つ一つ丁寧に確認していった。


「ずいぶんと勉強熱心だね」


「まあ、妥協はしないタイプだからね。ルアは」


 グループのメンバーが口々に言い合う。


「ルアー。何か飲む?」


 グループメンバーの一人が冷蔵庫を開けて確認してきた。


「ルア?ああ、ぼくの事か。じゃあエナドリで」


「ないけどエナドリ」


「じゃあ適当でいいよ」


 そう言いつつも、振り付けの練習を続けていった。


「あなたいつの間にボクっ娘になったの?」


 グループメンバーの一人が聞く。


「え?ゲーム買ってくれてた兄さんの影響さ。親から矯正させられそうになったけど結局このままになった」


 メイはうっかり自分の事として話してしまった。


「いたんだお兄さん……」


「いやその割にはずっと『私』だったと思うけど」


「この前(入れ替わり時)はなぜか『わし』だった事もあったと思うけど……」


 それぞれ感想を漏らすグループメンバー達。気にせずメイは振り付けの練習をしているのだった。


 そんな努力もあってか、ライブは成功を収め、何とかメイは身代わりを成し遂げた。



 時間は少し遡り、子供達が公園公園とうるさいので中央公園へとやって来た紫音達。


 大型連休なだけあってか、やはり子供連れが多い。


「わーいブランコ!」


「シーソー!」


「すなば!」


「すべりだい!」


 各々好きな遊具へ向かうユニ達。


 しかし、ルアだけは別だった。


「なんでわたしだけあそんじゃいけないの?」


 念の為つばの広い帽子にサングラスで変装させられたルアは不満たらたらな様だ。


「その姿で一緒になって遊ぶのは……何というか今後のキミのキャリアに悪影響を及ぼすというか……」


 しどろもどろになりながら紫音が言った。


 ただでさえトップアイドルなルアが、子供達の輪に入って遊んでいるとなると、やはりそういう週刊誌にスッパ抜かれる可能性はある。


「せめて元の子供の姿に戻ってからじゃな」


 紫音が言う。


「じゃーどれくらいで戻るの?」


 アゲハが聞く。


「効果時間のダイヤルを弄った形跡があるから、だいたい二時間前後だと思う」


 紫音が答えた。


「二時間……じゃあそろそろじゃないか?」


「え?あ!そうじゃ!」


 そうとわかればボヤボヤしている暇はない。紫音はルアをトイレに連れて行き、戻ったのを確認すると、ルアに子供服を着せた状態で帰ってきた。


「危なかった……危うく裸を晒す所じゃった……」


 冷や汗をかきながら紫音は言った。


「じゃあさ!あそびにいってもいい?」


 元の姿に戻ったルアが言う。


「ああ。行ってくるといい」


 五人は遊具へ走り出していくルアを見送って行った。


 まだ五月も上旬、春の陽気が暖かかった。


 悪魔との契約条項 第百十八条

悪魔の身体能力は、子供時代に限れば人間の子供とあまり変わらない。



読んで下さりありがとうございます。

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