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契約その117 混沌のLolita!?

「できたよー!五人分の子供服!」


 由理とアゲハが、両腕で抱える程大きな紙袋を五袋持って戻ってきた。


 中身は全てこの数十分で手作りした子供服である。


「マニキュア」もひと段落したので、五人をモデルとした何回目かわからないファッションショーが切って落とされたのだった。


 色とりどりのフリフリのスカートやスパッツ、シャツなどを次々着せていく由理達。


「ふへへ……かわいい……かわいいよ……」


 由理はカメラのシャッターが止まらなくなった。


「由理さん、あんな性格でしたっけ」


 その光景を見ていたみすかが呟く。


「そういえば、この前ユニが言ってたな。由理は『大のかわいいもの好き』だって」


 紫音が答えた。


 だが、被写体相手に様々な角度から写真を撮りまくる姿は、やはりそれ以上のものがあった。


「おっと……取り乱した……。そうだ、押入れから昔遊んでたオモチャ持って来たんだった」


 気を取り直し、由理はオモチャ箱を持って来て五人に見せる。


 五人共興味津々な様だ。


「じゃあ、わたしこれ!」


 真っ先にオモチャを手に取ったのは七海である。手に取ったのは古びた人形だ。


「おい!それはおれが目をつけてたやつだぞ!ほかのにしろよ!」


 そして人形の引っ張り合いをし始める七海とルーシー。


「あーダメダメ!取り合いしちゃ!順番こで……ね?」


 慌てて由理が二人に優しく言う。


「うわー!ダメですよ先生!」


 またある所では、丁井先生が飲みかけの酒の缶に興味を示した。この頃から呑兵衛の素質があった様である。


 当然三歳に酒を飲ませるわけにはいかないので、みすかは慌てて酒を取り上げる。


「ポーロ!ポーロ!」


 ユニとルアが何かを言い出した。


 それを見て、紫音は何かを察した。


「ポ……ポーロ?あの『東方見聞録』を書いた……」


「それは『マルコ・ポーロ』ですよ!たぶん『タマゴボーロ』の事だと思います」


 丁井先生から酒を遠ざけながらみすかが言った。


「たぶん今はここにないぞ」


 家の棚を見ながら紫音が言う。


「じゃあ、他の人に買って来て貰おーよ」


 アゲハが言った。


 ユニ達の全体メッセージで、誰かタマゴボーロを買ってきてほしいと伝えるアゲハ。


 真っ先に帰って来たのはアキだった。


「言われた通り買ってきたけど……何この状況……」


 アキが目にしたのは、五人の手のかかる子供を必死に制御しようとする、四人の姿だった。


「あ!アキ!手伝って!」


 猫の手も借りたい由理が、アキを見るなり言うのであった。


 ベビーシッターのアルバイトもした事があるアキによって、五人の子供はスヤスヤと寝息を立ててお昼寝に入った。


「じゃあ五人共三日間あのままなの!?」


 事情を聞かされたアキが驚く。


「そういう事じゃ……本当に面目ない……」


 紫音が謝罪する。


「とにかく、身の振り方を考えないと。ルア、確か今日仕事があるって言ってたと思うけど」


 由理が言う。


 しかし、当のルアはこの状態、とても仕事などできないだろう。


「そこで、役に立つのがコレじゃ」


 紫音はリュックサックからカメラを取り出す。今はまったく見ないインスタントカメラの様である。


「『変身カメラ』!」


 由理達には、紫音の手が丸いダンゴ状に見えた。


「どう使うんですか?」


 みすかが聞く。


 紫音はよくぞ聞いてくれた!という様にフィンガースナップを決めてから説明する。


「カメラに写真をセットし、シャッターを切る事で被写体をその写真のものに変身させる事ができるのじゃ」


 説明するより実際やってみた方が早いと、紫音はさっき丁井先生が飲んでいた酒の空き缶を用意する。


「写真は……これにしようか」


 紫音は新聞から猫の写真を切り取り、カメラの後ろを開けて写真をその中にセットする。


「あとはブレない様にシャッターを押して……」


 パシャ!


 カメラのフラッシュが焚かれたと思うと、空き缶は一瞬で猫の姿に変わるのだった。


「え!?どうなってんの?」


 由理が猫になった空き缶を持ち上げながら驚いた。しかし、見た目は猫だが微動だにしない。


「詳しく話せば長くなるが……とりあえずこれなら周りの目を誤魔化す事はできる。変わるのは見た目だけじゃがな」


 つまり、見た目が変わっているが、中身は空き缶なので微動だにしないというわけである。


 さらにダイヤル調整で効果時間の設定が可能であり、その空き缶猫はものの数分で元に戻るらしい。


「じゃあルアの写真を中に入れて、誰かにシャッターを切れば、その誰かがルアの身代わりができる様になるという事か」


 アキの確認に、紫音は大きく頷いた。


「じゃがその誰かをどうするかじゃな」


 ちょうどその時、メイが自分の買い物を終えて帰宅した。


「ただいま!明日の配信にやるゲームを買ってきて……って何だこの状況」


 メイは事前に全体メッセージで状況を把握していたのだが、やはり直接目にしてみると異様な光景であった。


 五人は、一斉にメイの方を見て言う。


「適任いた!」


 メイは五人にわけもわからず拉致されるのだった。


「それで、ぼくにルアの代わりをしてくれと?」


 状況を説明され、メイはうーむと唸っていた。


「そうなんじゃ。Vライバーとして人前に出る事に慣れてる事、歌とダンスもそこそこできる事から、キミが適任だと考えた」


 紫音が言う。


「まあいいけど……それ、本当に元に戻れるの?」


 メイが聞く。


「これまで元に戻れない事なんてあったか?」


「そうやって被害に遭った事ならあるよ」


 メイが返した。


「とにかく、スケジュール的には六時間程か」


 紫音はルアの写真をカメラの中に入れ、ダイヤルで効果時間の調整を行い、シャッターを切った。


 一瞬でメイの姿がルアになる。


 メイはその姿で軽く体を動かしてみた。


「お!すごいな。自分の体みたいに動く」


「そりゃ自分の体じゃからな」


 紫音が言った。


「もう時間がない。時間になったらマネージャーがやってくるっぽいから、それまで色々準備を……」


 紫音はカメラを床に置くと、メイの出かける準備をし出した。


 その中で、人知れずお昼寝から起きたユニ。それに少し遅れてルアも起きてきた。


 ユニは目の前にある「変身カメラ」に興味を示したらしく、そのカメラに手を伸ばすのだった。


 その好奇心が、みんなを更なるトラブルへと巻き込む事になるのである。


 悪魔との契約条項 第百十七条

危険なものは、子供の手の届かない所に保管しなければならない。

読んで下さりありがとうございます。

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