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契約その114 脅威のdrinking teacher!

「何でこの店にお前が!?」


 丁井先生が焦燥した様子で聞く。とうに酔いは覚めてしまった様である。


「何でって……私ここでバイトしてるんですよ。それで店を任されて……」


 ユニは、自分の状況と丁井先生が入店するまでの経緯を説明した。


 それを聞いた丁井先生は、残っていたビールを一気飲みした。


 ちなみにビール含めた酒の一気飲みは、急性アルコール中毒を起こす可能性があるのでやめておいた方がいい。


 飲み干した後で、丁井先生は言う。


「よし、忘れよう。それに、たまたま教え子のバイト先に飲みに来たのが一体何だってんだ。酒飲んで有耶無耶にするんだ」


 だが、その判断は間違っていた。


「ウェハハハハ!らからアラスィはァ!このしころ向いてないってェ!言ってんのにさァ!うるせェのよ母が!」


 要約すると、自分は自分で教師の仕事に向いてないって言うのに母親がやれとうるさいという事らしい。


 そういえば、丁井先生は学校の理事長の娘だった。


 だから教師になれとうるさかったわけである。


「それにさ、どーりょーのセクハラももーヒドくってヒドくって!好きで巨乳してるんじゃねェっての!わかるだろ!?」


「チラチラチラチラ見やがってェ!ムッツリがよ!胸ってのはァ!揉むもんだろうがよ!ほら!こんな風に!」


 丁井先生は、背後からユニの胸を揉みしだいた。モミのそれより乱暴だった。


「ひゃあっ!ちょ何やってんですか!?」


 絡み上戸である。酒の勢いも手伝ってかかなり大胆になっている。酔いが覚めたら一体どうなるんだろうか。


「おかわりィ〜!今度は焼酎ね。それとカクテル」


 ユニは、言われるまま焼酎を注いで席までまで持って来た。


 丁井先生は、それらをものの数秒で飲み干してしまった。


「ぐぅ……一度飲みに行った人と何でか二度と飲めないし、そのせいでやる事と言えば週末一人の晩酌だし……」


 今度はいきなり泣き出した丁井先生。今度は泣き上戸らしい。


「う〜!今度は腹が立って来たァ!ボコボコにしてやる!格闘技好きの力見せちゃる!」


 泣き出したかと思ったら、今度は怒り出した丁井先生。どうやら飲むと情緒が不安定になるらしい。


「あの……丁井先生……そろそろ閉店時間なんですけど……」


 力試しにビールグラスを叩き割ろうとした丁井先生をどうにか止めつつ、ユニが言う。


「えぇ〜!マジで〜!もっと飲みた〜い!ヤダヤダヤダ〜!」


 丁井先生は、両手両足をジタバタさせて抗議した。まるで駄々っ子である。


「わ〜!ちょっと!暴れないで!」


 二度と同じ人と飲めないのこの酒グセの悪さからじゃないだろうか。ユニはそう考えたが、あえて口外しなかった。


 暴れる丁井先生をどうにか抑えながら、ユニは言う。


「家で飲めばいいじゃないですか!土日あるんだから!それに土日も空いてる居酒屋ありますよ!」


 それを聞いた丁井先生は、それもそうだと急に暴れるのをやめた。


 かくしてユニは、丁井先生から料金を受け取り、店を閉め、家路につく事ができた。


 店を閉めた後、ユニは丁井先生に聞く。


「その状況で帰れますか?送りますよ。肩ぐらいなら貸せます」


「えぇ〜悪いねェ〜。いや〜偉い偉い!」


 今度はホメ上戸である。コロコロ性格が変わるからややこしい。


「どっちの方向ですか?」


 肩を貸す形になったユニは、丁井先生に聞く。


「ん〜あっち?」


 店から出て右の方向を指差す丁井先生。


 そして分かれ道の度に方向を聞いて行った結果……。


「着きました〜!」


「いや、戻って来ましたよ!?」


 何と元の店に戻って来てしまった。


「ウェヘヘ……今日からここがアタシのお家〜!」


「何言ってんですか!」


 このままではらちが明かない。仕方がないので、ユニは110番をした。


 しばらくして警察がやってくる。


「すみません。この人お店のお客さんで……」


 警察に事情を伝えるユニ。ここまで来ると、給料の値上げを頼んでもいいんじゃないかという感情に駆られた。


「やーだー!一緒にいーるー!」


 なぜだかまた駄々をこねる丁井先生。もはや、ユニはこの人をただの担任とは思えなくなっていた。


「わかりましたから!私も着いて行きますよ!」


 その結果、ユニは丁井先生と一緒にパトカーに乗って帰宅する羽目になった。


「まさか逮捕される以外でパトカーに乗る機会があるとはな……」


 ユニはぼやいた。


 丁井先生の住所は、本人の運転免許証で判明した。そこまでパトカーで送って貰っているのである。


 その丁井先生はユニの膝枕でスースー寝息を立てていたのだった。


「しかし、どこまでも見覚えのある場所が続くな……」

 とユニは思った。


 まさか結構近所に丁井先生は住んでいるのであろうか。


 パトカーは、あるアパートの前で止まった。


「まさかこことは……」


 ちょうど目の前にユニの自宅が見えている。まさか丁井先生が向かい側のアパートに住んでいるとは思わなかった。


「ここの108号室です」


 警察官が言う。


 手伝いましょうか?と警察官は言ってくれたが、これ以上手を煩わせるわけには行かないと、ユニはそれを断った。


「ほら着きましたよ。起きて下さい」


 中々起きなかった丁井先生だが、何度か軽く頬を叩くと、うーんと唸りながら起きた。


「あれ?朝か?」


「朝じゃありません。家です」


 何とかパトカーから丁井先生を引っ張り出すユニ。


 出発し、見えなくなっていくパトカーを見送り、ユニは丁井先生のポケットから部屋の鍵を取り出すと、丁井先生を連れて部屋に入る。


「うわっ!何だこりゃ」


 部屋はまさに汚部屋と言うべき状況になっていた。周囲にはカップ麺のゴミと割り箸が散乱している。


 酒の空き缶もテーブルに積み上げられている様だ。


 だが、片付けているヒマはない。


 ユニは、ゴミの中からどうにか布団を探し出すと、その上に丁井先生を何とか寝かせた。


 もうすでに寝てしまっている様だ。


「ウェヘヘ……大好きだ……瀬楠……」


 それを聞いたユニは驚く。寝言か、それとも本心か。それを聞く心の余裕は、今のユニにはなかった。


 ユニは彼女を起こさぬ様に、ゆっくりと部屋を出ていった。オートロックになっていて、自動で鍵がかかるから安心である。



 翌日。二日酔いですごい顔をした丁井先生が、菓子折りを持って瀬楠家を訪れた。


 住所については七海に聞いたのだろう。


「本当に面目ない……アタシ、何か変な事しなかったか?」


 むしろ変な事しかしていなかったが、そんな事言えるはずもなく、ユニはただ曖昧に笑うしかできなかった。


「うえ……本当に申し訳ない……教え子にあんな痴態を……」


「いえいえ!気にしないで下さい!大丈夫ですから!誰だって悩む事はありますよ!」


 必死にフォローするユニ。


「お詫びに勉強とか教えるから!それで……な?」


 丁井先生は、そう言うと去って行った。


 その、一部始終を見ていたルーシーに、ユニは気になる事を聞いた。


「へえ。お前の事を好きだと」


「そうなんだ。契約に年齢制限ってたぶん含まれてないよな。だって千年生きてるキミにホレられてるんだから」


「その通り。愛に年齢は関係ない。でもな……先生と生徒だろ?世間体がどうなるかだな」


 自身の考えを伝えるルーシー。ユニはそれもそうだと納得した。


 こうしてまた、ユニの悩みのタネが増えてしまったのだった。


 悪魔との契約条項 第百十四条

愛に年齢は関係ない。

読んで下さりありがとうございます。

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