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契約その110 ユニ達、promotionする!

 春の陽気が心地よい四月。何とか全員が進級でき、ユニ達は意気揚々と登校した。


 学校に着くと、昇降口に何やら人だかりができているのが確認できた。


 組分けが貼り出されているのである。人だかりはその為だろう。


 ユニもまた、自分のクラスを確認する。


「二年A組か」


 A組と書かれている紙に、自分の名前を確認した。


「お、同じクラスじゃん。また一年、よろしくな」


 一緒に登校したルーシーが言った。


「それだけじゃないな。七海、アキ、アゲハ、藤香、ルア、メイ、モミ、萌絵、ミズキ……学年が同じ子はみんなクラスメイトだ」


 ユニは張り出された紙を確認しながら言うのだった。


 その後、ユニ達は自分の新しい教室へと足を踏み入れる。二年目ともなると、見知った顔も出てくるものである。


 二人は、再びクラスメイトになった者に軽く会釈しながら席についた。


 一年生の時にそこそこ付き合いのあった者達である。


 しばらくするとユニの彼女達も続々とやって来た。


 みんなもまた、ユニとクラスメイトになれた事を喜ぶのだった。


 基本的にユニ達は別々に登校する事にしている。


 ほとんど同棲みたいなものなので、周囲の心証がよくないと判断したからである。


 特にアイドルであるルアの場合、外で一緒にいるのにも細心の注意を払っていた。


 これは、ルアの事務所と最初に交わした契約となっている。


 もっとも隠し切れずに、ユニ達はもはや学校中で「同棲している」とにわかに噂になる程の存在ではあるのだが、噂程度ではまだ大丈夫である。


 学校ではそんな関係性のユニ達だが、教室で仲良くするのは別である。


 みんなで喜びを分かち合っていると、今年の担任の先生が教室内に入ってくる。


「みんな、今年このクラスを担当する事になった『(てい)()()()だ。よろしく頼む」


 先生は、黒板に自分の名前を書きながら自己紹介した。


 ジャージ姿だが、黒髪ショートカットのウルフカットが似合う美人な先生である。


 そういえば、新しい「女子総合陸上部」の顧問の先生だと七海が言っていたと思う。


 担当科目も「日本史」だと言ってたし、おそらく「アイツ」の後釜だろう。


 ユニはそんな事を思っていた。


 先生の自己紹介が終わると、今度は学生達の自己紹介タイムになる。


 みんなそれぞれ趣味は何だの誕生日がどうだの、そして最後は「一年間よろしくお願いします」だの当たり障りのない事を言う。


 当然二年目なのでもう見知った者の自己紹介もあった。


 しかし、一番盛り上がったのはルアの自己紹介である。


「『飯戸留愛』です。あまり作中じゃこの名前出ないから覚えられないと思うけど。アイドルやってます。よろしくね」


 うおおお!と盛り上がるクラス。自己紹介しただけでこの盛り上がりである。さすがトップアイドルだ。


 ルア達も自己紹介していくが、当たり障りのないものばかりだった。


 高校生活も二年目に入り、すでに友人は固定化されているので、この自己紹介タイムはあまり意味のないものである。


 そんな自己紹介タイムと、教科書配布と、さらに始業式で今日は終わる。さすがに初日から授業はなかった。


 そんな始業式も、校長の話や校歌斉唱などの当たり障りのないもので終わる。


 晴夢学園は、実は割と普通の高校なのである。


 ユニ達は、午前中には帰る事ができた。



「みんな同じクラスだったのですか!?」


 どれみが驚く。学年が上であるどれみは、留年でもしない限りはクラスメイトになる事はない。


 しかし、とても羨ましそうである。


「わたくしは、クラスメイトの皆さんに気を遣われているのか、あまりクラス内に友人がいなくて……仲良くしたいのに」


 どれみが肩を落としながら言う。確かに可哀想である。


「露骨に避けられてるわしよかマシじゃろう」


 紫音が言った。いい子なのは確かだが、紫音は周囲にはものすごい発明をする人という形で広まっているらしい。


「ものすごい発明をする人」という表現は間違ってはいないのだが。


「私は結構友達多いから大丈夫かな」


 由理が言う。確かにそういう事を以前言っていた様な気がする。


「どれみや紫音の為にも、もっと多学年の彼女も作っていきたいな」


 ユニはこっそりと思った。


 とにかく、みんな思い思いの新たな学生生活をスタートさせた様だった。


「まあ学年が変わったからって、そんなにやる事は変わんないと思うけど……」


 ルーシーが言う。


「これからもよろしくお願いします!」


 彼女達はユニにそう言うのであった。


「ああ。こっちこそよろしくお願いします」


 ユニもそう返した。



「先輩に彼女を取っ替え引っ替えしている人がいる」


 その事は、ユニ達の学年以外でもにわかに噂になっていた。


「まさかそんな事……あるわけないっしょ!」


 今年中学校に入学したばかりの「(まえ)()みすか」もそう思っていた。


 余程ヒマなのか、わざわざ確認しに高校の教室へ行くみすか。


 そこで彼女が目にしたのは、彼女と思しき女の子達を引き連れる (少なくともみすかにはそう見えていた)ユニの姿だった。


「え!?女の子が女の子を!?そんな……噂は本当だったんだ!」


「け……ケダモノ〜!!」


 みすかは驚愕し、慌ててその場を去っていった。


 そんな事はつゆ知らず、ユニ達は新たな学生生活をスタートさせていくのだった。


 悪魔との契約条項 第百十条

 契約内容によって第三者が不利益を被る場合があるので、それを避けるには細心の注意を払わなければならない。

読んで下さりありがとうございます。

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