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契約その105 望まぬmeeting again!

 ミズキ救出組のメンバーは、ユニ、由理、アキ、ルア、紫音の五人となった。


 その中の一人、紫音が言う。


「みんなの了承の元で、全員のスマホに位置情報送信システムを入れとるからな。それを辿ればミズキの場所を知れるはずじゃ」


 しかし、スマホなんかどこかに捨ててる可能性が高いから意味あるのかどうかわからないと、紫音は続けた。


 とはいえ、これ以上有力な手がかりがないので、辿ってみる価値はありそうだ。


 ユニ達は、紫音のスマホに注目する。


 スマホの画面は、ミズキ(正確にはそのスマホ)の場所を映し出す。


 そこは、徐氏堂市の繁華街にあるビルだった。


「結構近いな」


 ユニが呟く。


 繁華街のアンダーグラウンドな雰囲気には不釣り合いなビルがある事は、ユニは噂として聞いていた。


 まさかそこが「ルア非公式ファンクラブ(仮称)」の本拠地の一つの可能性があるとは、ユニもさすがに知らなかったが。


「とにかく急ごう。攫ってきたのがルアじゃなくてミズキだって事が知れたら、彼女が何されるかわからないから」


 アキが言う。


 五人は、急いでスマホが示す場所に急ぐのだった。




「でも……これで本当にいいのかな」


 アキが呟く。


 元日という事もあり、いつもは客で賑わう繁華街の飲食店も、その多くがシャッターを閉めている。


 なので今日は、繁華街全体が活気がない。


 つつがなくビルの前にやってきたユニ達は、黒いローブを用意し、巫女服の上から着た。


 ローブで大部分が隠れるとはいえ、かなり珍妙な格好だ。


「仕方ないだろ。巫女服で突撃するわけにもいかないし」


 ユニがたしなめる。


「そうじゃ。相手は何人いるかわからん。対してこっちは五人。ムダな戦いは避けるべきじゃ」


 そう言う紫音は、巫女服にいつもの白衣、さらにその上に黒いローブを着る、みんなに輪をかけた珍妙な姿になっていた。


「何だかすぐにバレそうな気がする……」


 紫音の姿を見た由理がぼやいた。


 五人は少ない通行人の邪魔にならない所で着替え、改めてビルの前まで来た。


 どうやらビルにはオートロックが敷かれている様で、解除するには専用のカードキーが必要になるらしい。


 当然そんなもの持ってないユニ達。ここで立ち往生かと思いきや、紫音がスマホ片手にすぐにロックを解除した。


「カードキーのロック解除と同じシステムを使ったから、相手側の情報では普通にカードキーを使ったと認識されるはずじゃ」


 得意げに言う紫音。


「頼りになるな。さすがだ」


 ユニはその紫音を賞賛した。


 五人は解除されたドアを開け、ビルの中に入った。


 中は普通のオフィスビルの様な感じである。それだけにその辺をたむろしている黒ローブ姿が、些かシュールに見える。


「ビクビクしてちゃダメだよ。『自分はあなた達の味方です』っていう様に堂々としとかないと」


 ルアが言う。まさにその通りである。


 一度紛れてしまえば、ユニ達もそれ程違和感はないはずである。


「それで、ミズキはどこにいるんだ?」


 ユニが紫音に聞く。


「さすがにそこまではわからないのう……」


 マップは確かに、ミズキ(のスマホ)の位置をここだと示していた。しかしビルのどこにいるのかは、さすがにわからない様である。


「じゃあしらみ潰しに探すしかないって事か?いやあまり動き回ると正体がバレるリスクが増えるな。果たしてどうするか……」


「どうやらその心配はないみたい」


 由理は玄関に備えつけられている大きなモニターを指差す。


 そこには、縄で縛られているミズキが映し出されていた。


 それと同時に、マイクを携えた妙齢の女性が映し出される。


「トップアイドル『ルア』を信仰する皆さん。私は『ルア教』の代表の……」


「お母さん……」


 ルアが思わず呟く。


 その呟きを、ユニは聞き逃さなかった。


「お母さんだって?」


 そう聞き返されたルアは、もう言い逃れはできないと思い、自分の身の上話を始めた。


 その話を、四人は黙って聞いていた。


「だからこれは、ミズキを助けるだけじゃなくて、私の過去を清算する為の戦いでもあるの」


 ルアが語る。


「そうか。わかった。教えてくれてありがとう」


 ユニが言う。


 ルアの母は、引き続き話を進める。


「トップアイドル『ルア』とその仲間達。おそらくこのビルのどこかにいるでしょう。地下の総合会議場に来なさい」


 そこで全ての決着をつけると言い残し、通信は切れた。


「どうする?罠かも知れないけど」


 由理が指摘した。


「それでも行くよ。私の過去を清算する為に」


「ミズキを助ける為にな」


 それを聞いた三人は顔を見合わせ、自分達も付き合うと言った。


 こうして五人は、地下にある「総合会議場」を訪れたのだった。


「総合会議場」を訪れた五人は、こいつはもう必要ないと、黒ローブを脱ぎ捨てる。


「総合会議場」は、学校の体育館の様な、ステージに当たる場所があった。


 ルアの母とミズキは、そこにいた。


「ミズキ!」


「みんな!」


 ミズキが叫ぶ。


 一方では、望まぬ母娘の再会が実現していた。


「十年ぶりぐらいかしら?」


 ルアの母が聞く。


「さあ、まだ小さかったから覚えていません」


 正確には、ルアは萌絵の体で一回再会しているのだが、それを訂正する程度の愛もないと教えなかった。


「何で私の所から逃げたのかしら?」


 母が聞く。


「それは!あなたの暴力がひどかったから……」


 ルアは反論する。


「私はあなたを愛していたのに!」


 母のいきなりの剣幕に、ルアはビクッとする。


「裏切り者!裏切り者!裏切り者!裏切り者!裏切り者!裏切者!裏切り者!裏切り者!裏切り者!……もういいわ」


 母はいきなり落ち着き払うと、何かを呼ぶ。


「行きなさい。私と契約した上級悪魔。『名無し』!」


 母に呼ばれ、現れる悪魔。


 それを、ユニが必死に止める。


「おれの彼女の……邪魔をするな!」


 一方、ルアは自分の母と対峙する。


「お母さん……私は昔の私じゃない!それを今から証明してみせる!」


「それは宣戦布告と取っていいのかしら?」


 自分の母親を、じっと見据えるルア。


 いよいよ、母と娘の最終決戦が始まるのだった。


 悪魔との契約条項 第百五条

悪魔には、自分の名前を契約者に教える義務はない。

読んで下さりありがとうございます。

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