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契約その102 Shrine Maidenは大変だ!

 ユニ達は、ミズキから巫女さんになって欲しいと頼まれた。


「いやーでもウチ達?何のしゅぎょーもやってないし……」


 アゲハが慌てながら言う。


「いや、あなた達にやって欲しいのはバイトなの」


 違う違うと手を振りながらミズキが言う。


「バイト?」


 ユニ達は口を揃えて言った。


「そう。何の修行もいらない。業務としては境内の掃除だったり、参拝客の案内や接客……普通のバイトとそんなに変わらないでしょ」


 ミズキが続けた。


 ユニもあまり巫女バイトに詳しいわけではないのだが、確かに素人の人も意外と多いと聞いた事がある。


 普通のバイトとそんなに変わらないならやってみてもいいかも知れない。


「わかった。おれやるよ」


 ユニが答えた。


「ユニがやるならおれもやる」


「ウチも」


「私も」


「僕も」


「ぼくも」


「モミもです」


 全員が口々に参加の意を示した。


「よし、ありがとう」


 一気に十二人もの人手を手に入れたミズキは、嬉しそうに言った。


「じゃあこれがみんなの巫女服ね。すでにサイズは全員分合わせてるから」


 しかし、巫女服の着方は一応わかりはするものの、ユニの不器用さでは着る事は不可能だった。


「これどうすりゃいいの?」


 ユニは、隣のアゲハに助け舟を出す。


 とうに着替え終わっていたアゲハの助けを借り、何とか着替えられた。


「質問!髪型はどうするんだ?」


 アキが手を上げて質問した。


「それは、頭の下の方で一本結びにすれば大丈夫。金髪とかでも、地毛なら大丈夫だから」


 そうミズキが言ってくれたので、ユニは自分の後ろ髪をしっかり結んだ。


「よしっ完成!」


 かくして全員の巫女服姿が完成した。


「わー。みんなかわいい!」


 巫女服姿のみんなを見て、アゲハはそう感想をもらす。


「何だかみんな新鮮だな」


 ユニも感想をもらした。


 着替えも終わったユニ達は、早速境内にやって来た。


 境内は、ユニ達が参拝した時と変わらず多くの人でごった返していた。


 ミズキが人手を欲しがる理由がわかる。


「おみくじやお守りを買う人が多いから、みんなにはその接客をして欲しいんだけど……」


 ミズキがそう言ったので、ユニ達は各自バラけてその手伝いをする事にした。


 当然だが、ユニ達以外にも先輩に当たるバイトの巫女さんはいる。


 ユニ達は、彼女達の指示も聞いて仕事をし始めるのだった。


 バイトの内容自体はさして難しい事はなかった。


 しかし三ヶ日、特に元日は特に忙しいらしい。この時期は参拝客が増える上に巫女さんも帰省する事が多いからである。


「恋愛成就のお守りください!」


 カップルの参拝客である。


「ハハ、()()()買うと特にご利益があるかも知れませんよ」


 ユニはそう言いながらも、お守りを女性の方に持たせてやった。


 しばらくすると、参拝客が不自然に少なくなってきた。


 いや、少なくなっているのではない。どこか一ヶ所に集中しているのだ。


 では一体どこに……ユニが訝しんでいると、ユニの前を男二人組が話しながら通っていった。


「なあオイ!この神社、『ルア』が巫女さんやってるってよ!」


「マジかよ!見に行こうぜ!」


 ユニはまさかとは思っていたが、とりあえずこの場は先輩達に任せてその様子を見に行く事にした。


 遠目から見ても、ルア目当てに人だかりができているのは明らかだった。


「サインして!」


「写真撮って!」


「歌って!」


「踊って!」


 様々な要望が飛ぶ中、ファンサービスの権化であるトップアイドル「ルア」はできる限り全てに応えようとしていた。


「何であんな事になってんだ?また『オーラ無リング』が壊れたのか?」


 ユニが疑問を呈する。


「いや、壊れたわけじゃない。れっきとした仕様じゃよ」


「あっ紫音」


 疑問を呈したユニに、紫音が話しかけてきた。


 巫女服にいつもの白衣という謎の格好をしている。


「仕様って?」


 ユニが聞く。


「そうじゃ。そもそも『オーラ無リング』はルアの持つ芸能人のオーラをなくす代物。正体をバレなくするというわけじゃない」


 紫音は、群衆を指差しながら続けた。


「当然この様に、ここまでたくさんの人の目につけば、正体がバレるリスクも増えるというわけじゃ」


「何だと!?じゃあ助けないと!」


 それを聞いたユニは群衆に突っ込んでいこうとする。


 それを止めた紫音は、どこからともなくいつも背負っているリュックサックを取り出すと、伸びている紐を引っ張る。


「彼女を群衆から救え!『キタセンジュアーム』!」


 紫音がそう叫ぶと、リュックサックから巨大な一本のアームが伸びる。普通の人間の手の形をしているデザインである。


 紫音曰く、ものを掴む、複雑な作業をするといった行為を両立できるのは、人間の腕しかないという。


 元々「キタセンジュアーム」は、それを生かせる災害救助用に開発された発明品らしい。


 その「キタセンジュアーム」は、ルアの胴体を掴み、群衆から引っこ抜く様な形で救出した。


「ちょっと待ってよ。私まだ半分のファンサもできてないんだけど」


「お前まさか全員にファンサをするつもりだったのか?そんな事していたら日が暮れてしまうぞ」


 紫音が言うので、ルアは渋々ながら従った。


「しかし、ここまでの騒ぎになるとは……ルアを他の人の目につく場所に置いておくのは危険じゃな」


 頷に手をやりながら紫音が言う。


「だったらこれをつければいい」


 ユニは、ルアにキツネのお面を被せる。このお面は神社で売っているものだが、売れ行きが悪い。


 同じものをミズキもしているのをユニは見ていた。


「お面の宣伝になるし、正体も隠せるしでちょうどいいだろ」


 キツネの目の部分に穴が空いていて、そこが覗き穴になっている。視界も問題なさそうだ。


「これなら……ありがとうユニ!早速ファンサしてくる!」


ルアは、今もなお自分を探している参拝客の元へ走っていくのだった。


「ちょっと待って!?お面した意味は!?」


 ユニは慌ててルアを止めようと駆け出すのだった。


 それを、物陰から見ている者がいた。


 その人物は、電話で誰かに連絡を取る。


「標的は、ええ。()()()()()()()つけていて……はい。必ず()()()()()


()()()()()()!」


 その人物は、そう言うと電話を切るのだった。


 悪魔との契約条項 第百二条

悪魔でも、巫女にはなれる。

読んで下さりありがとうございます。

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